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木下このみ①
1:人物像
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「では行って参ります、お父様、お継母様(おかあさま)。」
「はい、行ってらっしゃい。」
「しっかり勉強してくるんだぞ。」
このみは挨拶を済ませると食堂を後にして玄関へ向かった。
お手伝いさんが学生鞄を渡すと運転手が
「おはようございます、お嬢様。今日から高校生でございますね。」
「そうね。でも校舎が隣なだけで何の変わりもありませんけどね。」
「そうでございますが、義務教育を卒業されましたので大人と言うことでございますよ。」
「そう言っても、自由になるわけではないしね。」
「又そのような言葉遣いを!」
「友達たちとは堅苦しい言葉は使いませんのよ!」
「分かりますが、旦那さまや奥様の耳に入らないようお気を付けてください。」
「そうね・・・ありがとう。」
「はい、・・・では出発いたしましょう。」
このみは車に乗り込んだ。
学校までの行き帰りはいつも運転手付の自家用車だった。
このみの通う国立私立扇ヶ丘女子高等学校は中学校からの一貫校で、半数以上はお金持ちの家系が通う有名校であった。
そのため、学校敷地内は最新のセキュリティで守られており学校関係者以外が入り込めることはまず無かった。
このみの父親の稼業は国立市で有名な私設の病院であり、開業したのは曾祖父からである。
病院は代々引き継がれている為、現在一人娘であるこのみへの期待はかなり重圧であった。
だが、2年前に父親が11歳年下の女性と再婚したことで、跡取りの誕生を期待する周りの声もあった。
このみを産んだ母親は5歳の頃に乳がんで亡くなった。
それから10年少し、父親はこのみの心情を考え再婚をせずに頑張ってきたが、新しく病院に入ってきた若い女医である継母(はは)に押し切られたのである。
現在、継母は妊娠中でエコーの結果では男の子だと告げられている。
そのおかげで毎朝車に乗るまで父親にあーだこーだと言われることもなくなり内心ホッとしている。
勿論、継母も決して悪い人ではなくこのみに対しても本当の母親の様になろうと頑張っていることは分かっている。
もともとおっとりして気持ちの優しいこのみも継母の体を気遣ったりして、親子関係としては良好であった。
ただ、毎日の生活に変化がなく退屈だった。
高校生になることで何か部活動や何ならアルバイトなどをしてみたい、と思っていたがそれを口に出す事は出来ずにいた。
(今日もまた、いつもの一日が始まるのね)
運転手がドアを開けた後部座席から降り、校舎の塀伝いに見える桜並木を見ながら門をくぐっていくのだった。
「はい、行ってらっしゃい。」
「しっかり勉強してくるんだぞ。」
このみは挨拶を済ませると食堂を後にして玄関へ向かった。
お手伝いさんが学生鞄を渡すと運転手が
「おはようございます、お嬢様。今日から高校生でございますね。」
「そうね。でも校舎が隣なだけで何の変わりもありませんけどね。」
「そうでございますが、義務教育を卒業されましたので大人と言うことでございますよ。」
「そう言っても、自由になるわけではないしね。」
「又そのような言葉遣いを!」
「友達たちとは堅苦しい言葉は使いませんのよ!」
「分かりますが、旦那さまや奥様の耳に入らないようお気を付けてください。」
「そうね・・・ありがとう。」
「はい、・・・では出発いたしましょう。」
このみは車に乗り込んだ。
学校までの行き帰りはいつも運転手付の自家用車だった。
このみの通う国立私立扇ヶ丘女子高等学校は中学校からの一貫校で、半数以上はお金持ちの家系が通う有名校であった。
そのため、学校敷地内は最新のセキュリティで守られており学校関係者以外が入り込めることはまず無かった。
このみの父親の稼業は国立市で有名な私設の病院であり、開業したのは曾祖父からである。
病院は代々引き継がれている為、現在一人娘であるこのみへの期待はかなり重圧であった。
だが、2年前に父親が11歳年下の女性と再婚したことで、跡取りの誕生を期待する周りの声もあった。
このみを産んだ母親は5歳の頃に乳がんで亡くなった。
それから10年少し、父親はこのみの心情を考え再婚をせずに頑張ってきたが、新しく病院に入ってきた若い女医である継母(はは)に押し切られたのである。
現在、継母は妊娠中でエコーの結果では男の子だと告げられている。
そのおかげで毎朝車に乗るまで父親にあーだこーだと言われることもなくなり内心ホッとしている。
勿論、継母も決して悪い人ではなくこのみに対しても本当の母親の様になろうと頑張っていることは分かっている。
もともとおっとりして気持ちの優しいこのみも継母の体を気遣ったりして、親子関係としては良好であった。
ただ、毎日の生活に変化がなく退屈だった。
高校生になることで何か部活動や何ならアルバイトなどをしてみたい、と思っていたがそれを口に出す事は出来ずにいた。
(今日もまた、いつもの一日が始まるのね)
運転手がドアを開けた後部座席から降り、校舎の塀伝いに見える桜並木を見ながら門をくぐっていくのだった。
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