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木下このみ①
3:メガマート前で
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運転手の待つ車は送って来てもらった時に決めた店側真ん中あたりのはずで、その方向へ向かって歩き出した。
メガマート真ん中正面には3人掛けぐらいのベンチが並んでいて喫煙コーナーも設けられていた。
そのベンチの所に、まだ小学生ではなさそうな一人の男の子が泣きそうな顔をしながらキョロキョロと辺りを見回しているのが見えた。
(迷子なのかしら?)
気になって近寄ってはみたもののどうする事も出来ず、このみも1mぐらい距離を置いた所で、
「え~と、・・・あの・・・その・・・」
と何か聞こうとして困ってしまった。
「なんだ~、迷子か~?」
とこのみの背後から一人の若い男性がやってきて、男の子の前にしゃがみこんだ。
「どうした、迷子になったのか?」
男は目線を合わせて優しく男の子に尋ねた。
「うん・・・」
と小さな声で男の子は頷きちょっと涙ぐんだ。
「男の子は泣くんじゃない。お兄ちゃんと一緒に探せばすぐ見つかるから安心しろ!」
静かに優しく男の子に言った。
「お母さんか?」
「うん・・・」
「買い物に来たのか?」
「うん・・・」
「君は名前はなんていうんだ?」
「たかし・・・」
「大丈夫だから、お兄さんに任せろ!」
と言いながら立ち上がって、
「君はもう大丈夫だよ、ありがとう。」
このみに向かって笑顔で言った。
「は、はい・・・」
(大丈夫なら行こうかしら?・・・私には何もできないし・・・)
男は男の子の手を掴むと大きな声で、
「たかし君のお母さんはいませんか~?たかし君のお母さんはいませんか~?」
と駐車場に向かって叫びだした。
3回ほど繰り返したが周りからの反応はなかった。
「まだ店内にいるんじゃないですか?」
「そうだね、店内で店員さんにも言って探してみるよ。ありがとう。」
(これで行っても大丈夫かしら?・・・)
「お母さん、中にいるかもしれないから行ってみようか?」
そう言って二人が中に入ろうとちょっと移動したとき、このみは書店の向こう側から何か声がするのに気が付いた。
(おや??なんだろう?女性の叫んでいるような声?)
「あっちで声がしますね。」
このみが指をさすと、男は立ち止まってそちらの方へ向き耳を澄ませてみた。
「た・・し・・」
確かに何か女性が呼んでいる声が聞こえている。
「私見てきます。」
このみは書店の方へと小走りで行くと書店の陰から若い女性が叫びながら出てきた。
(あれ、何で私走ってるんだろう??)
「たかし~・・・どこなの~?」
このみははっきり聞こえたこの声で安心して、
「たかし君のお母さんですか?」
「はい。え~と?」
「たかし君はあの正面で迷子になっていたんですよ。」
と男の子がいる方を指さした。
「ああ、たかし!!」
と女性は子供の方へ走り出した。
(ハァハァ・・・)
それに気付いた男の子も走り出そうとしたが男が手を離さずに目線を合わせてしゃがんでいた。
そこへ母親が到着すると男は掴んでいた手をそっと母親に渡した。
このみもホッとしてそこに近づいて行った。
「もう~、トイレの前で動かずに待っていなさいって言ったでしょ!」
「だって~怖かったんだもん・・・」
男の子は泣きながら母親に抱きついていた。
(よかった・・)
「済みません、ありがとうございました。」
「いえ、良かったです、見つかって。な?」
男の子の頭にポンと手を置いて、
「でも、お母さんの言うことは守らなくちゃだめだぞ!」
優しい笑顔でそう言いながら立ち上がり、
「君もありがとうね。」
とこのみにも笑顔で言った。
(なんて優しい目なのかしら・・・)
「いえ、あ、はい・・・」
そう言ってるうちに、
「じゃあ!」
男は親子に軽く右手を振り、出口の方へ歩き始めた。
「お嬢様、遅いのでお迎えに上がりました。」
運転手がしびれを切らして車から降りて迎えに来たようだ。
「では参りましょう。」
このみも親子にお辞儀をされながら車へと向かった。
(あの方はどこの方なのかしら?・・・)
この夜は一晩中考えてしまい、参考書どころではなかった。
メガマート真ん中正面には3人掛けぐらいのベンチが並んでいて喫煙コーナーも設けられていた。
そのベンチの所に、まだ小学生ではなさそうな一人の男の子が泣きそうな顔をしながらキョロキョロと辺りを見回しているのが見えた。
(迷子なのかしら?)
気になって近寄ってはみたもののどうする事も出来ず、このみも1mぐらい距離を置いた所で、
「え~と、・・・あの・・・その・・・」
と何か聞こうとして困ってしまった。
「なんだ~、迷子か~?」
とこのみの背後から一人の若い男性がやってきて、男の子の前にしゃがみこんだ。
「どうした、迷子になったのか?」
男は目線を合わせて優しく男の子に尋ねた。
「うん・・・」
と小さな声で男の子は頷きちょっと涙ぐんだ。
「男の子は泣くんじゃない。お兄ちゃんと一緒に探せばすぐ見つかるから安心しろ!」
静かに優しく男の子に言った。
「お母さんか?」
「うん・・・」
「買い物に来たのか?」
「うん・・・」
「君は名前はなんていうんだ?」
「たかし・・・」
「大丈夫だから、お兄さんに任せろ!」
と言いながら立ち上がって、
「君はもう大丈夫だよ、ありがとう。」
このみに向かって笑顔で言った。
「は、はい・・・」
(大丈夫なら行こうかしら?・・・私には何もできないし・・・)
男は男の子の手を掴むと大きな声で、
「たかし君のお母さんはいませんか~?たかし君のお母さんはいませんか~?」
と駐車場に向かって叫びだした。
3回ほど繰り返したが周りからの反応はなかった。
「まだ店内にいるんじゃないですか?」
「そうだね、店内で店員さんにも言って探してみるよ。ありがとう。」
(これで行っても大丈夫かしら?・・・)
「お母さん、中にいるかもしれないから行ってみようか?」
そう言って二人が中に入ろうとちょっと移動したとき、このみは書店の向こう側から何か声がするのに気が付いた。
(おや??なんだろう?女性の叫んでいるような声?)
「あっちで声がしますね。」
このみが指をさすと、男は立ち止まってそちらの方へ向き耳を澄ませてみた。
「た・・し・・」
確かに何か女性が呼んでいる声が聞こえている。
「私見てきます。」
このみは書店の方へと小走りで行くと書店の陰から若い女性が叫びながら出てきた。
(あれ、何で私走ってるんだろう??)
「たかし~・・・どこなの~?」
このみははっきり聞こえたこの声で安心して、
「たかし君のお母さんですか?」
「はい。え~と?」
「たかし君はあの正面で迷子になっていたんですよ。」
と男の子がいる方を指さした。
「ああ、たかし!!」
と女性は子供の方へ走り出した。
(ハァハァ・・・)
それに気付いた男の子も走り出そうとしたが男が手を離さずに目線を合わせてしゃがんでいた。
そこへ母親が到着すると男は掴んでいた手をそっと母親に渡した。
このみもホッとしてそこに近づいて行った。
「もう~、トイレの前で動かずに待っていなさいって言ったでしょ!」
「だって~怖かったんだもん・・・」
男の子は泣きながら母親に抱きついていた。
(よかった・・)
「済みません、ありがとうございました。」
「いえ、良かったです、見つかって。な?」
男の子の頭にポンと手を置いて、
「でも、お母さんの言うことは守らなくちゃだめだぞ!」
優しい笑顔でそう言いながら立ち上がり、
「君もありがとうね。」
とこのみにも笑顔で言った。
(なんて優しい目なのかしら・・・)
「いえ、あ、はい・・・」
そう言ってるうちに、
「じゃあ!」
男は親子に軽く右手を振り、出口の方へ歩き始めた。
「お嬢様、遅いのでお迎えに上がりました。」
運転手がしびれを切らして車から降りて迎えに来たようだ。
「では参りましょう。」
このみも親子にお辞儀をされながら車へと向かった。
(あの方はどこの方なのかしら?・・・)
この夜は一晩中考えてしまい、参考書どころではなかった。
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