39 / 120
矢崎涼②
1:懐中電灯を探して
しおりを挟む
午前9時15分
家を出てからようやくメガマートが見える幹線道路にまで出てきた。
途中で平屋の屋根で雪かきをしているお爺さんを手伝ったため少し時間がかかってしまった。
幹線道路は除雪されていたがまだ所々に凍ったところが見られ、かなり繋がり気味にゆっくりと車が距離を取りながら走っていた。
(去年なんかたいして降らなかったから、本来雪道は苦手なんだろうな)
そう思いながらメガマートの駐車場までやってきた。
出入り口の2か所は雪が掻かれていたが、歩道も駐車場の中もまだまだ1m近く雪が積もっていた。
メガマートの屋根にも4,5人の従業員らしき人たちが雪掻きをしていた。
その中には陽子の姿はないので、とりあえずスタッフ入り口の方へ向かった。
ドアの周りは雪が掻かれており、明らかに中に入った形跡があった。
ドアを開けてみると鍵もかかっていないため、
「陽子さ~ん!中にいますか~?」
と叫んでみた。
中は真っ暗だが、倉庫内はまだ窓があるため多少の光は入っていた。
(いないのかな?)
「陽子さ~ん!!いますか~?!」
もう一度叫んでみると店内の方からかすかに声が聞こえた。
涼はとりあえず入ってみて、店内の方へ向かった。
「陽子さん?いますか?」
真っ暗な店内に叫んでみると、
「ここよ~、レジの方!」
と陽子の声が聞こえてきた。
「真っ暗ですね~!停電ですか~!」
「そうなの~、それで事務所の懐中電灯を持って来て、レジの棚にあった防災グッズを探しているの~!」
「そうですか~!」
涼はチラチラと明りが動いているレジの方へ周りを手探りしながらゆっくりと近づいた。
「ありがとう、来てくれたのね。」
「えぇ、でももっと早く着けるはずだったんですけど、途中で雪かき手伝ってきちゃったんで・・・」
「そう。矢崎君らしいわね。」
「そうですか?」
涼は、陽子の後ろの方へ来て姿が確認できてほっとした。
「代わりましょうか?」
「大丈夫!・・・確かこの辺に・・・・あった・・・・はず・・・きゃ!!」
(きゃ?)
陽子は濡れたままのブーツでしゃがんで体を斜めにして棚に上半身を入れていたため滑ってしまった。
しかもその衝撃で懐中電灯を棚の奥に投げ入れてしまったようだ。
「あぁぁあぁ~!!」
(陽子さん、パニックになってるようだな)
後ろからそっと手を伸ばして背中だろうと思うあたりに手を置き、
「大丈夫ですよ、落ち着いてください。」
そう言った瞬間、ガバッと抱きついてきた。
(えっ?)
「よ、陽子さん?」
「怖いの~!!暗いのダメなのよ~!!」
と抱きつきながら体を揺すっていた。
涼はくすっと笑い、5秒ほどギュッときつく抱きしめると、
「大丈夫ですよ、大丈夫!」
とゆっくり言った。
陽子も落ち着いたらしく、
「ごめんなさいね・・・本当に・・・子供の頃から苦手なのよ。」
「代わりましょう!」
「そう・・・・ありがとう。」
陽子はゆっくり離れ、それでも涼のコートの裾にしっかり掴まった。
(可愛いな~)
涼は棚の奥の少し光っている所に身を入れて手を伸ばし懐中電灯を掴んだ。
戻る途中黒い袋を見つけ一緒に取り出した。
「これじゃないですかね?」
懐中電灯を当てながら裏に返すと『防災グッズ』と書かれていた。
「そうそう、中に同じ懐中電灯が入っていると思うんだけど・・・」
「ありましたよ!」
懐中電灯を出しながら涼が言うと、
「これで別々に行動が出来るわね!」
と陽子も静かに言った。
どうやらもうすっかり落ち着いたらしい。
最初の懐中電灯を陽子に渡した。
「じゃあ、とりあえず店の前の雪を何とかしてシャッターを開けますか?」
「そうね~・・・シャッターは電動だから停電復旧しないと無理なんだけど、雪はどかさないとね。」
「スコップとかあります?」
「裏の倉庫にあったのを借りてドアの周り掻いたからあるはずだけど・・・」
「じゃあ近くの雪に倒れて見えなかったんですね・・・分かりました、探してちょっとやってみます。」
「そう・・・・・ありがとう。」
「いえいえ、どうせ暇ですから。」
「そうじゃなくて・・・・・来てくれて、本当にありがとう!」
二人ともまだしゃがんでいる状態だったのでかなり顔が近くにあって、時間にしてはほんの数秒ほどだったが涼にはかなり長い時間に感じられた。
(告白するには早すぎて軽い男と思われたら嫌だし、さすがに勝手にキスしちゃうのはもっとまずいよな)
なんて葛藤を頭の中で考えていたからだ。
「じゃ、じゃあ、とりあえず頑張りましょう!」
陽子も慌てた様子でそう言いながら立ち上がった。
「は、はい。・・・・行ってきます!」
涼はそう言いながら懐中電灯を照らして倉庫の方へ向かった。
陽子が残念そうな顔でため息をついたことなど気付かなかった・・・
家を出てからようやくメガマートが見える幹線道路にまで出てきた。
途中で平屋の屋根で雪かきをしているお爺さんを手伝ったため少し時間がかかってしまった。
幹線道路は除雪されていたがまだ所々に凍ったところが見られ、かなり繋がり気味にゆっくりと車が距離を取りながら走っていた。
(去年なんかたいして降らなかったから、本来雪道は苦手なんだろうな)
そう思いながらメガマートの駐車場までやってきた。
出入り口の2か所は雪が掻かれていたが、歩道も駐車場の中もまだまだ1m近く雪が積もっていた。
メガマートの屋根にも4,5人の従業員らしき人たちが雪掻きをしていた。
その中には陽子の姿はないので、とりあえずスタッフ入り口の方へ向かった。
ドアの周りは雪が掻かれており、明らかに中に入った形跡があった。
ドアを開けてみると鍵もかかっていないため、
「陽子さ~ん!中にいますか~?」
と叫んでみた。
中は真っ暗だが、倉庫内はまだ窓があるため多少の光は入っていた。
(いないのかな?)
「陽子さ~ん!!いますか~?!」
もう一度叫んでみると店内の方からかすかに声が聞こえた。
涼はとりあえず入ってみて、店内の方へ向かった。
「陽子さん?いますか?」
真っ暗な店内に叫んでみると、
「ここよ~、レジの方!」
と陽子の声が聞こえてきた。
「真っ暗ですね~!停電ですか~!」
「そうなの~、それで事務所の懐中電灯を持って来て、レジの棚にあった防災グッズを探しているの~!」
「そうですか~!」
涼はチラチラと明りが動いているレジの方へ周りを手探りしながらゆっくりと近づいた。
「ありがとう、来てくれたのね。」
「えぇ、でももっと早く着けるはずだったんですけど、途中で雪かき手伝ってきちゃったんで・・・」
「そう。矢崎君らしいわね。」
「そうですか?」
涼は、陽子の後ろの方へ来て姿が確認できてほっとした。
「代わりましょうか?」
「大丈夫!・・・確かこの辺に・・・・あった・・・・はず・・・きゃ!!」
(きゃ?)
陽子は濡れたままのブーツでしゃがんで体を斜めにして棚に上半身を入れていたため滑ってしまった。
しかもその衝撃で懐中電灯を棚の奥に投げ入れてしまったようだ。
「あぁぁあぁ~!!」
(陽子さん、パニックになってるようだな)
後ろからそっと手を伸ばして背中だろうと思うあたりに手を置き、
「大丈夫ですよ、落ち着いてください。」
そう言った瞬間、ガバッと抱きついてきた。
(えっ?)
「よ、陽子さん?」
「怖いの~!!暗いのダメなのよ~!!」
と抱きつきながら体を揺すっていた。
涼はくすっと笑い、5秒ほどギュッときつく抱きしめると、
「大丈夫ですよ、大丈夫!」
とゆっくり言った。
陽子も落ち着いたらしく、
「ごめんなさいね・・・本当に・・・子供の頃から苦手なのよ。」
「代わりましょう!」
「そう・・・・ありがとう。」
陽子はゆっくり離れ、それでも涼のコートの裾にしっかり掴まった。
(可愛いな~)
涼は棚の奥の少し光っている所に身を入れて手を伸ばし懐中電灯を掴んだ。
戻る途中黒い袋を見つけ一緒に取り出した。
「これじゃないですかね?」
懐中電灯を当てながら裏に返すと『防災グッズ』と書かれていた。
「そうそう、中に同じ懐中電灯が入っていると思うんだけど・・・」
「ありましたよ!」
懐中電灯を出しながら涼が言うと、
「これで別々に行動が出来るわね!」
と陽子も静かに言った。
どうやらもうすっかり落ち着いたらしい。
最初の懐中電灯を陽子に渡した。
「じゃあ、とりあえず店の前の雪を何とかしてシャッターを開けますか?」
「そうね~・・・シャッターは電動だから停電復旧しないと無理なんだけど、雪はどかさないとね。」
「スコップとかあります?」
「裏の倉庫にあったのを借りてドアの周り掻いたからあるはずだけど・・・」
「じゃあ近くの雪に倒れて見えなかったんですね・・・分かりました、探してちょっとやってみます。」
「そう・・・・・ありがとう。」
「いえいえ、どうせ暇ですから。」
「そうじゃなくて・・・・・来てくれて、本当にありがとう!」
二人ともまだしゃがんでいる状態だったのでかなり顔が近くにあって、時間にしてはほんの数秒ほどだったが涼にはかなり長い時間に感じられた。
(告白するには早すぎて軽い男と思われたら嫌だし、さすがに勝手にキスしちゃうのはもっとまずいよな)
なんて葛藤を頭の中で考えていたからだ。
「じゃ、じゃあ、とりあえず頑張りましょう!」
陽子も慌てた様子でそう言いながら立ち上がった。
「は、はい。・・・・行ってきます!」
涼はそう言いながら懐中電灯を照らして倉庫の方へ向かった。
陽子が残念そうな顔でため息をついたことなど気付かなかった・・・
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる