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第一章 セイシュの民が翔ける黎明の空
10 狩られる側 プワー プワー プワー
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鼻をすするような、ふごふごする呼吸音をさせながら、周りを100匹以上のイノシシの群れが取り囲んでいた。
しかも視線はシフィル達に明らかに向けられている。
「昨日、イノシシ鍋を食べた恨みか・・・」
誰かが冗談のつもりでつぶやいたが、誰一人笑わない。
前足を地面に擦り付けてガリガリと音を立てては威嚇の様相を示している。
「敵襲だ!構えよ! 傷ついた者を優先的に逃がし、後の者は少しでも食い止め、逃げられる体勢を整えよ!」
ファルス隊長が年老いた体からは想像もできない大声を上げ、イノシシの群れを威嚇する。
その声を聞いて、これが現実だということを実感させられる。
目の前に狩るつもりであった獲物が存在するのに、いつの間にか、自分達が狩られる対象となっていることが現実なのだ。
落石で明らかに戦えない4人が円の中心に来るように陣形を造り、剣を抜いた。
シフィルも、ルタも剣を抜き、けが人をかばう。
「プワ~~プワ~~」
どこからか不思議な人工的な音のする笛の音が鳴り響いた刹那、シフィル達からみて右側に構えていたイノシシの半数、約50匹が砂煙を巻き上げながら、怒号のおたけびを上げ、突撃してきた。
「火の石の使用許可を出す。火の壁を作れ!イノシシの群れを撃退する!」
ファルス隊長も火の石を取り出すと、それで小さく円を描き、赤い色のリングを作った。
するとそのリングから、小さな鳥のような形状の炎が生まれて通過し、ファルス村の方角へ一直線に飛んでいく。
他の者は、ルタも含め、火の石を取り出して念じながら武器を握り、近寄るイノシシを威嚇する。
シフィルは何がなんだか判らず、試験の時もらった石がどこにあるのか探すので手一杯で、身を隠すように両手で自分のからだをポンポンと探った。
焦りと初めて身に付けた皮の服で、どこに何をしまったかわからなくなっていたのだ。
ルタは持っていた剣を振り回してイノシシを弾き飛ばすと、それに追撃するように、すばやく火の石を取り出して赤い光を発して火の塊を飛ばし、さっそく一体丸焼きの状態にしている。
その流れるような一連の攻撃に感心しながらシフィルも、ようやくポケットにしまった火の原石を見つけて取り出すと、一歩下がって昨日の試験を思い出し身構える。
が、しかし。
「おわぁあぁ・・」
構えると同時に足元をバタバタと逃げ回るイノシシに接触して大きくバランスを崩すと、それを避けるのに精一杯になる。
「シフィル!剣を使え!」
ファルス隊長が近づいて、持っていた飾りの杖を勢いよく振り回してイノシシを追い払うと、火の石を前に突き出して炎の渦を吹き出す。
慌ててシフィルが剣を握って勢いよくビュンビュンと振り、ファルス隊長に近づくイノシシを一心不乱に追い払う。
他の者も同じように剣をふるい、狩用に準備した弓矢を引き、罠を仕掛けるためのロープでイノシシの足を払う。
火の石で炎を飛ばし、道を作っては逃げるように先を急ぐ。
だが、さらに数を増すイノシシが勢い任せに体当たりを繰り返すと、複数人、怪我で動けなくなる。
「全員集合、集まれ!炎の円陣を敷く!怪我人を中央に!」
ファルス隊長が叫ぶと同時に、持つ火の石から激しく赤色の光が放射され、それが炎に変化してシフィルの身長の程度の火柱が前方に数本立ち上がると、それが徐々に本数を増やして隙間なく壁となり、イノシシの進行を食い止めた。
勢いのついた数匹のイノシシはその火柱の中に突っ込んでしまい、その熱により火傷して引き返すか、その場に倒れ込む。
他のイノシシはその火柱を前に恐怖し、どうすることも出来ず、からだを硬直させている。
ついでに、シフィルもその火柱に驚いて、イノシシと同じような表情で後ろに下がる。
いつのまにか全員がファルス隊長に近づいて自分たちを囲う様に、その周囲に火の石で炎を呼び出し、その火柱を補完して完全な円を描いた。
イノシシと味方とで炎の壁を隔てて離れたことで、ようやく少し安堵する。
「隙を見て撤退する!」
全方位を炎の壁で守られながら、落ち着いた表情でファルス隊長が、その炎の先のイノシシの動きを観察する。
うろうろしながら、こっちの様子をうかがっていたり、炎をじっと眺めたり、去っていったり。
いずれも一定の距離を保って、炎を恐れていると想像できた。
わずかに安堵してちからが抜ける。
少しの均衡。
動きを互に止める。
「プワー プワー プワー」
どこからか、また不思議な笛の音が響くと、イノシシ全頭が一斉に規則正しく動き始めた。
初めに数頭がその炎に躊躇なく突撃して自らの身を焦がすと、わずかに弱まったその炎の壁の 部分に再び数頭が突撃していく。
また、その正反対の位置にも、その中間地点の左右両方にも同じようにイノシシが一点突破を狙う様に、4か所に同時に突撃を繰り返す。
それは、いままで恐れていた表情や態度ではなく、明かに何かに操られた、機械的で無表情で、自分の意思とは思えない行動。
獣の焼け焦げた嫌な臭いと、呻き声、砂煙と炎の煙が周囲に充満して視界を悪くさせる。
徐々にイノシシの蹄が大地を蹴る音がどんどん大きくなるのは恐怖である。
しかも視線はシフィル達に明らかに向けられている。
「昨日、イノシシ鍋を食べた恨みか・・・」
誰かが冗談のつもりでつぶやいたが、誰一人笑わない。
前足を地面に擦り付けてガリガリと音を立てては威嚇の様相を示している。
「敵襲だ!構えよ! 傷ついた者を優先的に逃がし、後の者は少しでも食い止め、逃げられる体勢を整えよ!」
ファルス隊長が年老いた体からは想像もできない大声を上げ、イノシシの群れを威嚇する。
その声を聞いて、これが現実だということを実感させられる。
目の前に狩るつもりであった獲物が存在するのに、いつの間にか、自分達が狩られる対象となっていることが現実なのだ。
落石で明らかに戦えない4人が円の中心に来るように陣形を造り、剣を抜いた。
シフィルも、ルタも剣を抜き、けが人をかばう。
「プワ~~プワ~~」
どこからか不思議な人工的な音のする笛の音が鳴り響いた刹那、シフィル達からみて右側に構えていたイノシシの半数、約50匹が砂煙を巻き上げながら、怒号のおたけびを上げ、突撃してきた。
「火の石の使用許可を出す。火の壁を作れ!イノシシの群れを撃退する!」
ファルス隊長も火の石を取り出すと、それで小さく円を描き、赤い色のリングを作った。
するとそのリングから、小さな鳥のような形状の炎が生まれて通過し、ファルス村の方角へ一直線に飛んでいく。
他の者は、ルタも含め、火の石を取り出して念じながら武器を握り、近寄るイノシシを威嚇する。
シフィルは何がなんだか判らず、試験の時もらった石がどこにあるのか探すので手一杯で、身を隠すように両手で自分のからだをポンポンと探った。
焦りと初めて身に付けた皮の服で、どこに何をしまったかわからなくなっていたのだ。
ルタは持っていた剣を振り回してイノシシを弾き飛ばすと、それに追撃するように、すばやく火の石を取り出して赤い光を発して火の塊を飛ばし、さっそく一体丸焼きの状態にしている。
その流れるような一連の攻撃に感心しながらシフィルも、ようやくポケットにしまった火の原石を見つけて取り出すと、一歩下がって昨日の試験を思い出し身構える。
が、しかし。
「おわぁあぁ・・」
構えると同時に足元をバタバタと逃げ回るイノシシに接触して大きくバランスを崩すと、それを避けるのに精一杯になる。
「シフィル!剣を使え!」
ファルス隊長が近づいて、持っていた飾りの杖を勢いよく振り回してイノシシを追い払うと、火の石を前に突き出して炎の渦を吹き出す。
慌ててシフィルが剣を握って勢いよくビュンビュンと振り、ファルス隊長に近づくイノシシを一心不乱に追い払う。
他の者も同じように剣をふるい、狩用に準備した弓矢を引き、罠を仕掛けるためのロープでイノシシの足を払う。
火の石で炎を飛ばし、道を作っては逃げるように先を急ぐ。
だが、さらに数を増すイノシシが勢い任せに体当たりを繰り返すと、複数人、怪我で動けなくなる。
「全員集合、集まれ!炎の円陣を敷く!怪我人を中央に!」
ファルス隊長が叫ぶと同時に、持つ火の石から激しく赤色の光が放射され、それが炎に変化してシフィルの身長の程度の火柱が前方に数本立ち上がると、それが徐々に本数を増やして隙間なく壁となり、イノシシの進行を食い止めた。
勢いのついた数匹のイノシシはその火柱の中に突っ込んでしまい、その熱により火傷して引き返すか、その場に倒れ込む。
他のイノシシはその火柱を前に恐怖し、どうすることも出来ず、からだを硬直させている。
ついでに、シフィルもその火柱に驚いて、イノシシと同じような表情で後ろに下がる。
いつのまにか全員がファルス隊長に近づいて自分たちを囲う様に、その周囲に火の石で炎を呼び出し、その火柱を補完して完全な円を描いた。
イノシシと味方とで炎の壁を隔てて離れたことで、ようやく少し安堵する。
「隙を見て撤退する!」
全方位を炎の壁で守られながら、落ち着いた表情でファルス隊長が、その炎の先のイノシシの動きを観察する。
うろうろしながら、こっちの様子をうかがっていたり、炎をじっと眺めたり、去っていったり。
いずれも一定の距離を保って、炎を恐れていると想像できた。
わずかに安堵してちからが抜ける。
少しの均衡。
動きを互に止める。
「プワー プワー プワー」
どこからか、また不思議な笛の音が響くと、イノシシ全頭が一斉に規則正しく動き始めた。
初めに数頭がその炎に躊躇なく突撃して自らの身を焦がすと、わずかに弱まったその炎の壁の 部分に再び数頭が突撃していく。
また、その正反対の位置にも、その中間地点の左右両方にも同じようにイノシシが一点突破を狙う様に、4か所に同時に突撃を繰り返す。
それは、いままで恐れていた表情や態度ではなく、明かに何かに操られた、機械的で無表情で、自分の意思とは思えない行動。
獣の焼け焦げた嫌な臭いと、呻き声、砂煙と炎の煙が周囲に充満して視界を悪くさせる。
徐々にイノシシの蹄が大地を蹴る音がどんどん大きくなるのは恐怖である。
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