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第一章 セイシュの民が翔ける黎明の空
16 そのちからは 誰だ?
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「シフィル。俺が合図を出す。一瞬だ。俺が黒炎の壁に突っ込むから、その瞬間に、一瞬でいい、火のちからで穴をあけるんだ。」
「ちょっと待って、それ、俺が失敗したらルタが焼け焦げるじゃないか。」
「時間がない、行くぞ、タイミングを合わせろよ。」
「待って待って。俺、まだできないんだって!」
「できないじゃない、覚悟を決めろ。やるんだ。わかるな?俺らでこの村を守るんだ!!!」
ルタがシフィルの肩を強く掴む。
「覚悟を決める。そうか。わかった。俺はできる。だって試験を突破したんだ。認められたんだ。」
それに強くうなずくシフィル。一瞬でシフィルの顔つきが変わったのがわかる。
ファルス長老が人が成長する瞬間を目の当たりにして小さく笑い、うなずく。
それにルタも力強くうなずく。
「いくぞ!!」
ルタが小さく助走をとってから、力強く大地を踏みしめて走り出すと、燃え盛る黒炎の壁に全力で突進する。
「俺はできる。ルタを、みんなを助けるんだ。」
シフィルは持っていた火の原石を、ルタの進む黒炎の壁に向ける。
そして目をぎゅっと見開き、全精神をその火の原石に集中させる。
「炎よ、すべてを焼き尽くせ!!!!!!!!!」
シフィルの叫ぶ声に、祈るような声に、力強い声に呼応するように、火の原石が赤く輝く。
シフィルの口元がわずかに緩む。
シフィルの火の原石は他の者が操る炎とは違う一直線の細い淡い炎を赤い光線のように放射し、まさにルタが触れる先の黒炎にわずかに早く触れると、黒炎の壁を生み出している炎すべてを一瞬にして吸い込み、火の村の民とイノシシを遮っていた壁を瞬く間に取り除いた。
「・・・なんだ?」
慌てたファルス長老が、目の前の理解できない出来事をとりあえず無視して、火の石で再び壁を作るが、そのファルス長老から発せられた火はそのままシフィルの火の原石へと吸い込まれる。
ルタはその状況を理解できないながらも、消失した黒炎の壁を通り抜け、今も響く笛の音の方向へと全速力で駆け進む。
「シフィル!そのちからを解除しろ!!すべての炎が吸い取られてしまう!」
「どうやって!!わからないんです。どうやって、どうして!!!」
「火の原石を手放せ!」
壁がなくなり、接する距離まで近づくイノシシに火の石を向けて炎を放つファルス長老だが、同じようにシフィルの持つ火の原石に炎が吸い込まれる。
火の村の者の持つ火の石のちからもすべてシフィルに吸い取られると、瞬時の判断で持っていた剣や弓矢で一斉に応戦する。それでも、イノシシの突進力には歯が立たずに劣勢に立たされるが、剣術道場だけを死守するために体を張る。
「あ・・」
「それをこっちに渡せ!このままだと村が崩壊する!」
ファルス長老がシフィルに手を差し出す。
「でもこれ、手から離れないんです!」
離れないと言っておきながらも、シフィルの右の手は、火の原石を力強く握っている。
右手が微細に震えて言うことを聞かず、自分の意思ではどうすることもできない。
ファルス長老がシフィルの右手に飛びつき、火の原石を自分の火の石で覆う。
「わしのちからで火の原石のちからを相殺させる。他の者は壁を作れ!」
「セイシュの民ごときが我に触れるな。」
シフィルが火の原石を握った右手をゆっくりと下におろすと、その動きに追従するファルス長老を左手で制してから、右手を一気に上に振り上げてファルス長老の顔面を強打して吹き飛ばす。
予期せぬ動きにファルス長老が背中から倒れ込むと、シフィルがそれをみて小さく笑う。
「礼儀知らずが。無礼だ。」
シフィルから発せられたのは、シフィルの声ではない。
近寄るイノシシ達にシフィルが手を向けると、地面から噴き出た炎がそれらを上空へと跳ね上げ、焼け焦げながら落下させる。
そして、火の原石を握る右手に力を込めると、原石の色が赤から激しい青色の高熱な炎へと変化していく。
手をゆっくりと開き、青い光が周囲を照らし放出されると、それを追ってゆっくりと青い炎がシフィルを中心に切れ
目なく渦巻いて周囲を焼失させていく。
先程の黒炎の壁よりもさらい高温なのだろう、その青い炎が直撃した建物は熱で溶けた後に黒色に炭化している。
「全員退避!逃げろ!」
ファルス長老が声を張り上げると、道場の中に入るように大きく手を振って導き、自らはその道場を背にして、シフィルに対峙し火の石を身構える。
「お前は誰じゃ。」
「・・・」
ファルス長老の問いかけに無言のままシフィルが笑う。
そしてシフィルが火の原石を握る右手をファルス長老に向ける。
「死者に応える必要はない。」
徐々にシフィルの右手が赤色に輝くと、それから白色に、そして青色に輝いていく。
それを防ぐためにファルス長老が火の石を前に構えて、道場と自身を守るために全力で赤く輝く火の壁を作り出す。
それでも、わずかに漏れる青色の炎が触れるだけで、簡単にその火の壁にひびが入る。
ファルス長老が後ろに下がると、背を道場の壁に接しさせる。
「だああああああああああっ!!!」
それはシフィルの背後からの声。素早い動きで高い木の枝から飛び跳ねると、ルタが上空から剣を握って切先をシフィルの右手に突き刺した。
が、剣はシフィルに触れる前に溶解して液体になるとポタポタと流れ落ちる。
「ちょっと待って、それ、俺が失敗したらルタが焼け焦げるじゃないか。」
「時間がない、行くぞ、タイミングを合わせろよ。」
「待って待って。俺、まだできないんだって!」
「できないじゃない、覚悟を決めろ。やるんだ。わかるな?俺らでこの村を守るんだ!!!」
ルタがシフィルの肩を強く掴む。
「覚悟を決める。そうか。わかった。俺はできる。だって試験を突破したんだ。認められたんだ。」
それに強くうなずくシフィル。一瞬でシフィルの顔つきが変わったのがわかる。
ファルス長老が人が成長する瞬間を目の当たりにして小さく笑い、うなずく。
それにルタも力強くうなずく。
「いくぞ!!」
ルタが小さく助走をとってから、力強く大地を踏みしめて走り出すと、燃え盛る黒炎の壁に全力で突進する。
「俺はできる。ルタを、みんなを助けるんだ。」
シフィルは持っていた火の原石を、ルタの進む黒炎の壁に向ける。
そして目をぎゅっと見開き、全精神をその火の原石に集中させる。
「炎よ、すべてを焼き尽くせ!!!!!!!!!」
シフィルの叫ぶ声に、祈るような声に、力強い声に呼応するように、火の原石が赤く輝く。
シフィルの口元がわずかに緩む。
シフィルの火の原石は他の者が操る炎とは違う一直線の細い淡い炎を赤い光線のように放射し、まさにルタが触れる先の黒炎にわずかに早く触れると、黒炎の壁を生み出している炎すべてを一瞬にして吸い込み、火の村の民とイノシシを遮っていた壁を瞬く間に取り除いた。
「・・・なんだ?」
慌てたファルス長老が、目の前の理解できない出来事をとりあえず無視して、火の石で再び壁を作るが、そのファルス長老から発せられた火はそのままシフィルの火の原石へと吸い込まれる。
ルタはその状況を理解できないながらも、消失した黒炎の壁を通り抜け、今も響く笛の音の方向へと全速力で駆け進む。
「シフィル!そのちからを解除しろ!!すべての炎が吸い取られてしまう!」
「どうやって!!わからないんです。どうやって、どうして!!!」
「火の原石を手放せ!」
壁がなくなり、接する距離まで近づくイノシシに火の石を向けて炎を放つファルス長老だが、同じようにシフィルの持つ火の原石に炎が吸い込まれる。
火の村の者の持つ火の石のちからもすべてシフィルに吸い取られると、瞬時の判断で持っていた剣や弓矢で一斉に応戦する。それでも、イノシシの突進力には歯が立たずに劣勢に立たされるが、剣術道場だけを死守するために体を張る。
「あ・・」
「それをこっちに渡せ!このままだと村が崩壊する!」
ファルス長老がシフィルに手を差し出す。
「でもこれ、手から離れないんです!」
離れないと言っておきながらも、シフィルの右の手は、火の原石を力強く握っている。
右手が微細に震えて言うことを聞かず、自分の意思ではどうすることもできない。
ファルス長老がシフィルの右手に飛びつき、火の原石を自分の火の石で覆う。
「わしのちからで火の原石のちからを相殺させる。他の者は壁を作れ!」
「セイシュの民ごときが我に触れるな。」
シフィルが火の原石を握った右手をゆっくりと下におろすと、その動きに追従するファルス長老を左手で制してから、右手を一気に上に振り上げてファルス長老の顔面を強打して吹き飛ばす。
予期せぬ動きにファルス長老が背中から倒れ込むと、シフィルがそれをみて小さく笑う。
「礼儀知らずが。無礼だ。」
シフィルから発せられたのは、シフィルの声ではない。
近寄るイノシシ達にシフィルが手を向けると、地面から噴き出た炎がそれらを上空へと跳ね上げ、焼け焦げながら落下させる。
そして、火の原石を握る右手に力を込めると、原石の色が赤から激しい青色の高熱な炎へと変化していく。
手をゆっくりと開き、青い光が周囲を照らし放出されると、それを追ってゆっくりと青い炎がシフィルを中心に切れ
目なく渦巻いて周囲を焼失させていく。
先程の黒炎の壁よりもさらい高温なのだろう、その青い炎が直撃した建物は熱で溶けた後に黒色に炭化している。
「全員退避!逃げろ!」
ファルス長老が声を張り上げると、道場の中に入るように大きく手を振って導き、自らはその道場を背にして、シフィルに対峙し火の石を身構える。
「お前は誰じゃ。」
「・・・」
ファルス長老の問いかけに無言のままシフィルが笑う。
そしてシフィルが火の原石を握る右手をファルス長老に向ける。
「死者に応える必要はない。」
徐々にシフィルの右手が赤色に輝くと、それから白色に、そして青色に輝いていく。
それを防ぐためにファルス長老が火の石を前に構えて、道場と自身を守るために全力で赤く輝く火の壁を作り出す。
それでも、わずかに漏れる青色の炎が触れるだけで、簡単にその火の壁にひびが入る。
ファルス長老が後ろに下がると、背を道場の壁に接しさせる。
「だああああああああああっ!!!」
それはシフィルの背後からの声。素早い動きで高い木の枝から飛び跳ねると、ルタが上空から剣を握って切先をシフィルの右手に突き刺した。
が、剣はシフィルに触れる前に溶解して液体になるとポタポタと流れ落ちる。
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