三つの民と神のちからを継ぐ者たちの物語 ヴェアリアスストーリー

きみゆぅ

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第一章 セイシュの民が翔ける黎明の空

46 ゆめのなかで よくわからない

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『そうわたしはゆめのなかではなしかけているつたえたいことがある』

 頭を押さえる二人と一匹。巨木に視線を集める。

『みちのちからがけっかいをおそいはかいしているどうにかそれをふせいでほしいひとみずよ』

 シフィルが夢でよく見る話と共通点が多い。ここは夢の中なのだろうか。懐疑心てんこ盛りだが、そんな気がした。だが、サチはまだ戸惑っている。というより、意味が分からずに首を傾げたまま停止している。

「火と水?結界とはなんですか!?」

 木に向かってシフィルが叫ぶ。

『けっかいはせいしゅをいしゅからまもるものげんせきをいしゅからまもるものそとのせかいからこのせかいをまもるものそれがけっかい』

 いまいちわからない。が、火や水の村で原石が奪われたのは、この結界の外の世界からの攻撃だということか。

 ということは、この結界というのはセイシュ イシュの歴史書通り、世界が滅びかけたときに造られたという、いわば伝説的なものだろうか。

 おとぎ話と現実をつなげたその説明は、いまだに信じられない。

「えっと、この結界が破壊されたらどうなるんですか?やっぱり困るんですか?」

 サチも木に向かって話しかける。 

『わからないがこまる』

 サチが少し転ける。少し腹がたったのか、平手で木を叩く。

『けっかいのそとのじょうきょうがわからないいしゅがげんせきをうばいにくるかもしれないせいしゅといしゅでぜんめんせんそうになるかもしれないなにもおこらないかもしれない』

「なんかはっきりしないね!」

 いらだつサチ。

「欲しかったら結界の外に原石をわけてあげたらいいんじゃないの?必ずしも悪い人たちとはわからないんでしょ?そうすれば、わざわざ争わなくていいんじゃない?」

 この考えは水の村の考えで、可能な限り共存しよう、敵を作らないように仲良くしようという教えに則ったものであった。その考えに真っ先に反応したのはシフィルであった。

「オレは反対だ。火の村も水の村もその原石を奪うために滅ぼされたんだ。そんなやつらとは仲良くする気はない!!!サチの村もほろぼされただろう!」

 この考えは火の村の考え方であった。共存よりも自分たちの利益を考え、やられたらやりかえす少し凶暴な教えである。少なくとも敵と共存するなんてことはまず考えない。

 サチの脳裏にも滅ぼされた水の村が思い浮かんだ。

「どちらにしても、結界がこのままであれば、なにも問題はないのか?」

 黙っていたもんちきがその声に尋ねた。

『わからないがそうなってほしいとおもっているこのままのじょうたいでありつづけたい』

「・・・それで、じゃあ、そのために結界を守れというのか?どうやって?」

『むずかしいよくわからない』

「ん、だから、どうしろと?」

「それはむずかしいもんだいだだれかおしえてほしい」

 もんちきもいらだつ。何を求めているのかわからない。

 そもそも、会話が成立していない。

「なんか、こっちの言語が通じていないのかもね。夢でも困ったね。」

 サチが首を傾げて苦笑いをする。

「わざわざ、こんなところまで呼んでおいて。もう少し話の分かるやつはいないのか?」

 明かに苛立つもんちき。
 
「むずかしいことわからないおこらないでほしい」

「火の村の村長ファルス!どうせ近くで見ているのだろう!姿をみせてくれ!」

 急に訳のわからない大きな声をあげるもんちき。

 その真剣な、怒った顔の眼が怖く感じたが、それよりも突然の言葉の意味がわからずに戸惑うシフィル。

 もっとわけがわからないサチ。

 するとうっすらと人影が一つ浮かんだ。それがどんどん実体化し、そこにファルスが現れた。

「そんなに声を荒げるな。」

 もんちきにファルスが手を差し出すと素直にその手に移り、ファルスの頭に乗るもんちき。

「そなたもネットワークは知っていたな。」

 ファルスがもんちきの頭を撫でる。

 いかにも夢の中の出来事だ。もう何でもありだと思った。

「これは大地の民ウィレム様のお戯れか!それとも夢見の民か!」

 ファルスの白い髪を引っぱりながら、もんちきは、まだ、苛立っていた。

 そして、もう一つの人影が浮かんだ。

 それもファルスと同様に実体化し、その場に現れる。

 シフィルとサチの初めて見る姿。知らない人。

 ファルス以上の高齢であろうか。

 緑の衣を纏った老人は、緑色の杖をついてゆっくりとその場に座り込む。

「あ、さっき根元で見た格好に似てる!」

 サチが指さしてその老人をじっと見つめる。木の根のところで見た緑色にそっくりと感じた。

「ほっほっほっひさしぶりだのう サブヒュムの白猿よ」

「お久しぶりです。ウィレム様。今はもんちきという名があります。」

 ファルスの肩から飛び降りて地面に着地すると、ウィレムという老人の前に直立して、深く礼をした。

 こんな、畏まったもんちきを見るのは、シフィルは初めてであった。

「もんちきとな!それは面白い名前だ!ほっほっほっ」

 笑い声をあげているが、眼は笑っていない。その眼をずっともんちきも覗き込む。

 シフィルとサチは隅でただそのやりとりを見ているしかなかった。少し怖かった。ピリピリとした空気が流れる。

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