三つの民と神のちからを継ぐ者たちの物語 ヴェアリアスストーリー

きみゆぅ

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第一章 セイシュの民が翔ける黎明の空

47 ゆめのなかで せかいじゅねっとわーく

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「ウィレム様、そろそろ核心をお話願いたい!」

 声を荒げたもんちきを不機嫌そうな顔でウィレムがじっと見つめる。

「やだね。怒られるのは嫌いだ。」

 声を荒げたもんちきに反抗するのか、子供の様に頬を膨らまし、首を振るウィレム。

 顔が強ばるもんちき。

 怒りでからだがぷるぷるとふるえているが、息を深く吸って、深く吐いた。そして落ち着きを取り戻す。

 その一人と一匹の間に、なだめるようにファルスが割って入る。

「ウィレム様、どうか、この者達に教えて下さい。」

 ファルスの手の合図に合わせて、無理に笑顔を作るもんちき。

 シフィルとサチも一緒に笑顔を作り、頼み込む。

 ようやく満足したか、ウィレムが語り出した。

「世界樹ネットワークから連絡があったんじゃ。最近凶暴化した動植物が各地で頻繁に発生し、それにより滅ぼされた村や城が多数あるとな。そして同時に各地に張られた結界の力が弱まっているとの報告もあり、それらが関係している可能性が高いという話じゃ。」

「世界樹ネットワーク??」

 シフィルがもんちきに尋ねる。

「ウィレム様は大地の民の頂点の方。シフィルが火の原石を使えるように大地の原石を使いこなし、木々とも会話できるそうだ。各地にある意志を持った木々でその地点で起こった事の情報を集められる。このネットワークは千年以上、過去の大地の民の情報手段として使用されているってさ。本当か知らんけどな。」

 ウィレムが会話を遮られ、機嫌が悪くなりそっぽを向く。

 それに気づいた、もんちきとシフィルがウィレムに頭を深く下げた。

 よく見ると首元には緑色の石が輝いている。大地の原石だろうか。

「そこでな、各種族の長を集め、今後のことについての取り決めを行った。結果として結界を維持する方法を探るという結論に到った。そのため、セイシュ イシュ歴史書にある火、水、大地、光の4種族の長、水の民サルダ 大地の民ウィレム 火の民ファルス そして光の民リリザで結界を張る検討をしようとしたのだが、なかなか問題が多く
てな。」

 白いひげをさわりながら、少し面倒な表情になり会話を止めたウィレムの続きをファルスが続ける。

「でな、サルダは水の村を襲われた時から行方不明、ワシも村を襲われたときに火の力を使い切り、とてもそんなことはできない。ウィレム様は腰痛が酷く、光の民リリザに到っては連絡が全く付かない。つまり、ぜんぜん駄目なわけじゃ」

『わたしたちのねっとわーくでれんらくがつかないということはほろびたかきぎがせいそくしないとちでくらしているかだ』

 あたまの中に響いた。これが世界樹ネットワークなのか。意志を持った木々が会話をする。

 世の中にはまだまだ判らないことがたくさんあると感じた。

 ファルスが続ける。

「そこでな、この結界内に存在する中で、優秀な者をその代わりにしようと決めたのだ。火の民はシフィルを推薦するぞ!」

 ファルスがシフィルの肩を叩く。優秀な者と言われてシフィルも悪い気はしない。自然と誇らしく笑った。

 だが、それを遮ったのはもんちきであった。

「それはだめだファルス。シフィルは火のちからが強くても純粋な火の民ではなさそうだ。」

 驚くファルスとウィレム。その傍らで既に話についていけていないシフィルも驚く。

 サチはただ眺めている。

「水の村でシフィルは水の原石を扱えた。純血の火の民ではあり得ない。火と水の原石を共に扱えると言うことは特殊系だ。」

 もんちきがいうと、ウィレムがファルスに困った表情で笑った。

「そうなのか?」

「シフィルの父親を実は私は知らないのです。シフィルの母が語ろうとせず・・・てっきり火の一族であるとばっか
り・・・」

 ファルスが少しうなだれ答えた。

『かりくてぃすとおなじかんじがする』

「カリクティス!?」

 ファルスとウィレムが共に驚きシフィルを見る。

 そのファルスとウィレムに対しシフィルが言った。

「何がなんだかわからないんですが。」

 それに強くうなずくサチ。夢の中で夢を見るような、ぼーっとした感じである。

 それともこれはただの夢なのであろうか、頬をつねるが痛くないような気がする。もう完全に夢だ。

 そう自分を納得させる。

「ここは夢の中じゃよ。世界樹ネットワークは特別な場所で眠ることでつながるんじゃ」

 頬をつねるシフィルをみながら、ウィレムが言った。

 ウィレムもシフィルのように頬をつねって、わざとらしく痛そうな顔をして子供のようにからかう仕草をする。

 それでも、シフィルとサチはまだ、本当の事かどうか把握できず、ぼーっとしていた。

「これから言うことはまだ判らなくて良い。いずれわかるだろう」

 ファルスが子供をなだめるように優しく言った。

「セイシュとイシュを分けている結界がもうすぐ崩壊する。いや、もうすでに崩壊している。なんとか結界を張り直
す必要がある。そのためには火、水、大地、光のちからが必要じゃ。」

 ここまでは理解できた事を示すようにシフィルとサチがうなずく。

 それを見てファルスが続けた。

「サチを含め、ちからのある者で結界を張り直して欲しい。ただし、シフィルは火の一族でないかもしれんので、別の火の一族を捜してくれ。」

 サチが目を見開き、大きく首を振る。その横でシフィルは首を傾げ、目を細めている。

「嫌です。そんなの。よくわからないし。大変そうだし。」

 サチがファルスに大きく強く首を振る。

「火の一族じゃないとか、カリクティスだとか、わけがわからないんですが。」

 シフィルもファルスに言う。

 シフィルとサチが顔を見合わせる。

 そして、お互い、面倒なことにはかかわりたくないという表情を浮かべて、目で合図をしてうなずいた。
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