三つの民と神のちからを継ぐ者たちの物語 ヴェアリアスストーリー

きみゆぅ

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第一章 セイシュの民が翔ける黎明の空

48 仲間を探そう でも結界とは

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 ファルスは二人を押さえるように両手を二人の肩に乗せ、話を続けた。

「この話は別に誰でも良いことだ。サチ以外の水の一族でも、ちからがあればいい。それにシフィル、おまえは自分が何者かを捜す旅になるのではないか?」

「そっか、他の水の一族を捜してかわってもらえばいいんだ。」

 サチは安心したように落ち着く。

「カリクティスとはなんですか!?」

 サチの落ち着きとは別にシフィルはさらに興奮する。

「カリクティスは特殊な一族でな、まあ、いろいろあってな、よくわからん。」

 ウィレムの歯切れが悪い。

「じゃあ、まずは火と大地と光の一族を仲間にすればいいんですか?」

「それとついでに水の一族もね!」

 少し嬉しそうなサチにファルスがうなずく。

 周囲がなんとなく白色のもやが強くなって、白色で埋められていく。

 それと相反して周囲の色が薄くなってきたような気がした。ファルスやウィレムの姿も少しずつ薄らいでくる。

「もうすぐ目覚める。結界の張り方などはわしらが調べておるので、他の仲間を集めたら、世界樹ネットワークを使え。それまでには何かわかっているだろう。このことは、おまえ達とは別の者にも既に伝えている。その中のいずれからのグループが結界を張り直せれば良いだけだ。だから楽にいけ。」

 周りがどんどん明るくなり、周りが真っ白くなり、何も見えなくなった。

 そして2人と一匹は、同時に目を覚ます。

 いつの間にか発生した霧が周囲を覆い、夢と現実をまだ繋いでいるようであった。

 シフィルとサチは目を合わせた。

 頬をつねると痛い。確かに現実だ。

「夢見た。」

 サチが寝ぼけた顔でポツリと自信なさげに告げる。それを見てシフィルも大きなあくびをしながらうなずいた。

「仲間集めろって」

 二人でうなずく。全く同じ夢を見ていたことが確認できた。半信半疑が確信に変わる。

「世の中知らないことがありすぎだな」

 シフィルが腕を組んで空を見上げた。霧が太陽を遮っているため、眩しくはない。

 同じようにサチも腕を組んだ。

「なんか、面倒くさいことになっちゃったね・・・いまいちわからないこと多いし。」

 サチの本音だろう。それにシフィルもうなずく。

「結界を張り直せば、火の村や水の村のような被害が出なくなるだろうし、面倒くさいけど、行こうか。」

木の上から、もんちきが降りてきた。少し寝ぼけているのか、足下がふらふらしている。

「疲れる夢だった・・・」

 もんちきがシフィルの足に寄っかかると、目を閉じた。

「もんちき・・・おまえなにものなんだ?」

 シフィルの問いかけに、にやりと笑った。

「少し知恵のある猿です。」

 サチがもんちきを捕まえると、上に放り投げた。

「えいっ!!」

 もんちきは回転しながら急上昇すると、そのまま、サチの腕の中に落ちてきた。

 あわててサチの腕の中からシフィルの肩に移動しようとするが、目が回って足下がふらつく。

 笑いながらシフィルがもんちきを抱きかかえた。

「不思議なお猿ね!」

 サチが笑った。それを見てシフィルも笑う。

「じゃあ、仲間を捜しますか!特に水の一族ね!早く交代したい!」

 サチが元気に言うと、シフィルも笑った。

「じぶんが何者か知りたい・・・」

 小さくつぶやいた言葉にもんちきが小さくうなずいた。


『なぜ結界を張らなければいけないのか。答えは簡単。それは結界外の技術力や戦力は我々より格段に高い。戦いになったら我らは滅ぼされるからだ。』

『であれば、もう結界など開いて交流を進め、我らの技術力を高めるという手もあると思うが』

『セイシュの民がイシュの民ごときに負けるとは思えない。』

『もうイシュとヒュムは区別つかんじゃろ。そもそも結界なんて・・・』

 この言葉はシフィル達には届かなかった。



 ファルスからもらった地図を改めて確認すると、ここから南に7日程歩く距離だろうか、この地図で最も大きい城に『レグランドフィア』と記された印がある。

そしてそのレグランドフィアに葉と思われる紋章が記されていた。大地の民がいるという暗号であると期待する。

「面白いね。」

 サチがコンパスをじっと見て笑った。

 それにシフィルが笑って応えると、その針が指し示す方向へとゆっくりと歩き出す。

 地面に小さくあいた孔から発せられる嫌な臭いのするガスを避けるため、少し早足になりながらコンパスが指し示す方向へと向かう。

 ぱさぱさに乾いた赤い土は、滑りやすく、歩きにくい。あたりを見渡しても動物どころか、草木もほとんどいない。

 周囲を警戒しながら進んでいくと、昼過ぎには、赤土地帯を越え、ようやく草原地帯に踏み込んだ。

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