55 / 104
第一章 セイシュの民が翔ける黎明の空
55 争う気はない
しおりを挟む
「弓矢撃て!!!」
サイン部隊長が大きな声で叫ぶと、100人を3隊に分けた弓矢隊が、炎を纏った人の姿に向け一斉に絶え間なく矢を放つ。
それに合わせ、散らばるように一部の探索部隊とされた兵士が城内に突入していく。
それを見たシフィルたちも、安全なところに隠れるため、城内に走り出した。
できるだけ、デコラ兵士が行かないような、そして炎の届かないところを必死に探す。
「無駄な抵抗はやめろ。大地の原石を渡して欲しい。」
新たな部隊の攻撃に対して、炎を纏った男が再び人の姿に戻り、両手を広げて説得するように話しかけたが、それに見向きもせず、デコラ兵士は攻撃を続ける。
その動きは良く訓練された素早さであり、さきほどのレグランドフィアの兵士とは比べ物にならないくらい統率がとれていた。
「言葉が通じぬか?」
再び炎を纏ったその男の動きに相対してサイン部隊長が即座に指示すると、素早く陣形を入れ替えて対応する。
しかし、兵士たちが放った矢は、その人の姿が覆った炎により、瞬時に触れる前に焼け焦げ、塵となる。
「もう気は済んだか。争う気はない。大地の原石を渡せ。」
静かに説得するその炎を纏った男の姿を横目に、サイン部隊長が再び陣形を変化させて、一定の距離を保った状態で矢の雨を降らす。
が、全く同じ結果で、そのからだに触れると同時に矢が焼け焦げて煙を発して周囲を曇らせる。
「よし今だ!水の石の矢を構えろ。」
戦闘部隊の隊長が、その普通の矢に変わり、瞬時に金属で出来た矢の先端に、青色の小さな石がついた矢を全員一斉に構えさせる。
「撃て!!!」
「!!」
瞬間に何かを察したか、その人の姿が素早く身をかわし、迫る矢を炎で焼き尽くそうとするが、青色の小さな石に炎が触れるととたんに自らを覆う炎の勢いが弱まる。
総数100人の放つ矢である。すべてを避けることができず、右足と左手首に青い石が触れ、ぴったりとくっついた。
すると、その部分の水の石矢が青い光を発し、その身体を凍らせるように冷気を発生させる。
身体を覆っていた炎が徐々に弱まり、衰えていく。
右手で右足の水の石矢を外そうとするが、2本の矢により、身体が凍り始め、身動きがままならない。
「争う意志がないかもしれないが、私もカルゴの指揮官として、私情をはさむわけにはいかない」
小さな声でだれにも聞こえないようにサイン部隊長がささやいた。
「再び水の石矢構え!」
「サイン!ちょっと待て!」
戦闘隊長が指示を出す途中で遮ったのは下がっていた赤い羽根を兜に付けたアルマンプ総隊長であった。
「サイン、爆発石でとどめを刺せ!」
「いや、あれは・・・」
勝利を確信したアルマンプ総隊長が守備兵を引き連れ最前線まで上がってきた。弓を撃つ仕草をサイン部隊長に向かって行う。
それに、戸惑うサイン部隊長だが、再びアルマンプ総隊長が弓を構えて放つ仕草をすると、小さくうなずいた。
「・・・弓矢隊 爆発石矢構え!強固陣の守り!」
サイン部隊長の声にあわせ、今度は黒色の石が先端に付いた金属の矢を構えた。
そして、兵士同士の黒の盾を隙間無く密着させて一面壁のように作り身構える。
アルマンプ総隊長を守る部隊も後退して同じように盾を密着させ、壁を作り出す。
その壁により視界を遮られたアルマンプ総隊長が頑張ってその先を見ようと顔をひょこひょこと動かす。
「撃て!」
身体が凍り、身動きもままならない状態になっている炎が薄くなったその男を、サイン部隊長の合図で矢の先端に付された黒い石が襲いかかる。
その次の瞬間、弓を射終えた兵士は盾に隠れた。
「くっ!!!!!!!」
完全に凍り、動かない右足で避けようとするが、身体の周囲を覆っていた炎も既に無くなっているその人の姿に複数の矢が直撃。
激しい爆発が、爆風があたりを包み込む。
盾に隠れた者も、全身を打ち抜かれたような激しい衝撃を感じた。耳鳴りがひどく、何も聞こえない。周囲が粉塵に覆われ、視界が全くない。
「前方注意!盾構え!威嚇の構えをとれ!油断するな!」
サイン部隊長が素早く指示を出すと、激しい衝撃で動けない兵士も必死になんとか構えをとる。
だが、立ち上がれたのは60人程度であり、他の者はその衝撃で気を失ったり、爆風に吹き飛ばされたりと負傷していた。
まだ、粉塵により視界が悪い。激しい音で耳鳴りが強く、聴力が弱まっている。建物の崩れる音がする。
塵が酷く、呼吸するのも大変である。
明かに、今までの戦闘の被害よりも、自らの武器で発された激しい爆発の被害の方が大きい。
サイン部隊長が大きな声で叫ぶと、100人を3隊に分けた弓矢隊が、炎を纏った人の姿に向け一斉に絶え間なく矢を放つ。
それに合わせ、散らばるように一部の探索部隊とされた兵士が城内に突入していく。
それを見たシフィルたちも、安全なところに隠れるため、城内に走り出した。
できるだけ、デコラ兵士が行かないような、そして炎の届かないところを必死に探す。
「無駄な抵抗はやめろ。大地の原石を渡して欲しい。」
新たな部隊の攻撃に対して、炎を纏った男が再び人の姿に戻り、両手を広げて説得するように話しかけたが、それに見向きもせず、デコラ兵士は攻撃を続ける。
その動きは良く訓練された素早さであり、さきほどのレグランドフィアの兵士とは比べ物にならないくらい統率がとれていた。
「言葉が通じぬか?」
再び炎を纏ったその男の動きに相対してサイン部隊長が即座に指示すると、素早く陣形を入れ替えて対応する。
しかし、兵士たちが放った矢は、その人の姿が覆った炎により、瞬時に触れる前に焼け焦げ、塵となる。
「もう気は済んだか。争う気はない。大地の原石を渡せ。」
静かに説得するその炎を纏った男の姿を横目に、サイン部隊長が再び陣形を変化させて、一定の距離を保った状態で矢の雨を降らす。
が、全く同じ結果で、そのからだに触れると同時に矢が焼け焦げて煙を発して周囲を曇らせる。
「よし今だ!水の石の矢を構えろ。」
戦闘部隊の隊長が、その普通の矢に変わり、瞬時に金属で出来た矢の先端に、青色の小さな石がついた矢を全員一斉に構えさせる。
「撃て!!!」
「!!」
瞬間に何かを察したか、その人の姿が素早く身をかわし、迫る矢を炎で焼き尽くそうとするが、青色の小さな石に炎が触れるととたんに自らを覆う炎の勢いが弱まる。
総数100人の放つ矢である。すべてを避けることができず、右足と左手首に青い石が触れ、ぴったりとくっついた。
すると、その部分の水の石矢が青い光を発し、その身体を凍らせるように冷気を発生させる。
身体を覆っていた炎が徐々に弱まり、衰えていく。
右手で右足の水の石矢を外そうとするが、2本の矢により、身体が凍り始め、身動きがままならない。
「争う意志がないかもしれないが、私もカルゴの指揮官として、私情をはさむわけにはいかない」
小さな声でだれにも聞こえないようにサイン部隊長がささやいた。
「再び水の石矢構え!」
「サイン!ちょっと待て!」
戦闘隊長が指示を出す途中で遮ったのは下がっていた赤い羽根を兜に付けたアルマンプ総隊長であった。
「サイン、爆発石でとどめを刺せ!」
「いや、あれは・・・」
勝利を確信したアルマンプ総隊長が守備兵を引き連れ最前線まで上がってきた。弓を撃つ仕草をサイン部隊長に向かって行う。
それに、戸惑うサイン部隊長だが、再びアルマンプ総隊長が弓を構えて放つ仕草をすると、小さくうなずいた。
「・・・弓矢隊 爆発石矢構え!強固陣の守り!」
サイン部隊長の声にあわせ、今度は黒色の石が先端に付いた金属の矢を構えた。
そして、兵士同士の黒の盾を隙間無く密着させて一面壁のように作り身構える。
アルマンプ総隊長を守る部隊も後退して同じように盾を密着させ、壁を作り出す。
その壁により視界を遮られたアルマンプ総隊長が頑張ってその先を見ようと顔をひょこひょこと動かす。
「撃て!」
身体が凍り、身動きもままならない状態になっている炎が薄くなったその男を、サイン部隊長の合図で矢の先端に付された黒い石が襲いかかる。
その次の瞬間、弓を射終えた兵士は盾に隠れた。
「くっ!!!!!!!」
完全に凍り、動かない右足で避けようとするが、身体の周囲を覆っていた炎も既に無くなっているその人の姿に複数の矢が直撃。
激しい爆発が、爆風があたりを包み込む。
盾に隠れた者も、全身を打ち抜かれたような激しい衝撃を感じた。耳鳴りがひどく、何も聞こえない。周囲が粉塵に覆われ、視界が全くない。
「前方注意!盾構え!威嚇の構えをとれ!油断するな!」
サイン部隊長が素早く指示を出すと、激しい衝撃で動けない兵士も必死になんとか構えをとる。
だが、立ち上がれたのは60人程度であり、他の者はその衝撃で気を失ったり、爆風に吹き飛ばされたりと負傷していた。
まだ、粉塵により視界が悪い。激しい音で耳鳴りが強く、聴力が弱まっている。建物の崩れる音がする。
塵が酷く、呼吸するのも大変である。
明かに、今までの戦闘の被害よりも、自らの武器で発された激しい爆発の被害の方が大きい。
21
あなたにおすすめの小説
炎光に誘われし少年と竜の蒼天の約束 ヴェアリアスストーリー番外編
きみゆぅ
ファンタジー
かつて世界を滅ぼしかけたセイシュとイシュの争い。
その痕跡は今もなお、荒野の奥深くに眠り続けていた。
少年が掘り起こした“結晶”――それは国を揺るがすほどの力を秘めた禁断の秘宝「火の原石」。
平穏だった村に突如訪れる陰謀と争奪戦。
白竜と少年は未来を掴むのか、それとも再び戦乱の炎を呼び覚ますのか?
本作は、本編と並行して紡がれるもう一つの物語を描く番外編。
それぞれに選ばれし者たちの運命は別々の道を進みながらも、やがて大いなる流れの中で交わり、
世界を再び揺るがす壮大な物語へと収束していく。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
『25歳独身、マイホームのクローゼットが異世界に繋がってた件』 ──†黒翼の夜叉†、異世界で伝説(レジェンド)になる!
風来坊
ファンタジー
25歳で夢のマイホームを手に入れた男・九条カケル。
185cmのモデル体型に彫刻のような顔立ち。街で振り返られるほどの美貌の持ち主――だがその正体は、重度のゲーム&コスプレオタク!
ある日、自宅のクローゼットを開けた瞬間、突如現れた異世界へのゲートに吸い込まれてしまう。
そこで彼は、伝説の職業《深淵の支配者(アビスロード)》として召喚され、
チートスキル「†黒翼召喚†」や「アビスコード」、
さらにはなぜか「女子からの好感度+999」まで付与されて――
「厨二病、発症したまま異世界転生とかマジで罰ゲームかよ!!」
オタク知識と美貌を武器に、異世界と現代を股にかけ、ハーレムと戦乱に巻き込まれながら、
†黒翼の夜叉†は“本物の伝説”になっていく!
世紀末ゾンビ世界でスローライフ【解説付】
しおじろう
SF
時は世紀末、地球は宇宙人襲来を受け
壊滅状態となった。
地球外からもたされたのは破壊のみならず、
ゾンビウイルスが蔓延した。
1人のおとぼけハク青年は、それでも
のんびり性格は変わらない、疲れようが
疲れまいがのほほん生活
いつか貴方の生きるバイブルになるかも
知れない貴重なサバイバル術!
最初から最強ぼっちの俺は英雄になります
総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
鬼死回生~酒呑童子の異世界転生冒険記~
今田勝手
ファンタジー
平安時代の日本で魑魅魍魎を束ねた最強の鬼「酒呑童子」。
大江山で討伐されたその鬼は、死の間際「人に生まれ変わりたい」と願った。
目が覚めた彼が見たのは、平安京とは全く異なる世界で……。
これは、鬼が人間を目指す更生の物語である、のかもしれない。
※本作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ネオページ」でも同時連載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる