三つの民と神のちからを継ぐ者たちの物語 ヴェアリアスストーリー

きみゆぅ

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第一章 セイシュの民が翔ける黎明の空

55 争う気はない

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「弓矢撃て!!!」

 サイン部隊長が大きな声で叫ぶと、100人を3隊に分けた弓矢隊が、炎を纏った人の姿に向け一斉に絶え間なく矢を放つ。

 それに合わせ、散らばるように一部の探索部隊とされた兵士が城内に突入していく。

 それを見たシフィルたちも、安全なところに隠れるため、城内に走り出した。

 できるだけ、デコラ兵士が行かないような、そして炎の届かないところを必死に探す。

「無駄な抵抗はやめろ。大地の原石を渡して欲しい。」

 新たな部隊の攻撃に対して、炎を纏った男が再び人の姿に戻り、両手を広げて説得するように話しかけたが、それに見向きもせず、デコラ兵士は攻撃を続ける。

 その動きは良く訓練された素早さであり、さきほどのレグランドフィアの兵士とは比べ物にならないくらい統率がとれていた。

「言葉が通じぬか?」

 再び炎を纏ったその男の動きに相対してサイン部隊長が即座に指示すると、素早く陣形を入れ替えて対応する。

 しかし、兵士たちが放った矢は、その人の姿が覆った炎により、瞬時に触れる前に焼け焦げ、塵となる。

「もう気は済んだか。争う気はない。大地の原石を渡せ。」

 静かに説得するその炎を纏った男の姿を横目に、サイン部隊長が再び陣形を変化させて、一定の距離を保った状態で矢の雨を降らす。

 が、全く同じ結果で、そのからだに触れると同時に矢が焼け焦げて煙を発して周囲を曇らせる。

「よし今だ!水の石の矢を構えろ。」

 戦闘部隊の隊長が、その普通の矢に変わり、瞬時に金属で出来た矢の先端に、青色の小さな石がついた矢を全員一斉に構えさせる。

「撃て!!!」

「!!」

 瞬間に何かを察したか、その人の姿が素早く身をかわし、迫る矢を炎で焼き尽くそうとするが、青色の小さな石に炎が触れるととたんに自らを覆う炎の勢いが弱まる。

 総数100人の放つ矢である。すべてを避けることができず、右足と左手首に青い石が触れ、ぴったりとくっついた。
 すると、その部分の水の石矢が青い光を発し、その身体を凍らせるように冷気を発生させる。

 身体を覆っていた炎が徐々に弱まり、衰えていく。

 右手で右足の水の石矢を外そうとするが、2本の矢により、身体が凍り始め、身動きがままならない。

「争う意志がないかもしれないが、私もカルゴの指揮官として、私情をはさむわけにはいかない」

 小さな声でだれにも聞こえないようにサイン部隊長がささやいた。

「再び水の石矢構え!」

「サイン!ちょっと待て!」

 戦闘隊長が指示を出す途中で遮ったのは下がっていた赤い羽根を兜に付けたアルマンプ総隊長であった。

「サイン、爆発石でとどめを刺せ!」

「いや、あれは・・・」

 勝利を確信したアルマンプ総隊長が守備兵を引き連れ最前線まで上がってきた。弓を撃つ仕草をサイン部隊長に向かって行う。

 それに、戸惑うサイン部隊長だが、再びアルマンプ総隊長が弓を構えて放つ仕草をすると、小さくうなずいた。

「・・・弓矢隊 爆発石矢構え!強固陣の守り!」

 サイン部隊長の声にあわせ、今度は黒色の石が先端に付いた金属の矢を構えた。

 そして、兵士同士の黒の盾を隙間無く密着させて一面壁のように作り身構える。

 アルマンプ総隊長を守る部隊も後退して同じように盾を密着させ、壁を作り出す。

 その壁により視界を遮られたアルマンプ総隊長が頑張ってその先を見ようと顔をひょこひょこと動かす。


「撃て!」

 身体が凍り、身動きもままならない状態になっている炎が薄くなったその男を、サイン部隊長の合図で矢の先端に付された黒い石が襲いかかる。

 その次の瞬間、弓を射終えた兵士は盾に隠れた。

「くっ!!!!!!!」

 完全に凍り、動かない右足で避けようとするが、身体の周囲を覆っていた炎も既に無くなっているその人の姿に複数の矢が直撃。

 激しい爆発が、爆風があたりを包み込む。

 盾に隠れた者も、全身を打ち抜かれたような激しい衝撃を感じた。耳鳴りがひどく、何も聞こえない。周囲が粉塵に覆われ、視界が全くない。

「前方注意!盾構え!威嚇の構えをとれ!油断するな!」

 サイン部隊長が素早く指示を出すと、激しい衝撃で動けない兵士も必死になんとか構えをとる。

 だが、立ち上がれたのは60人程度であり、他の者はその衝撃で気を失ったり、爆風に吹き飛ばされたりと負傷していた。

 まだ、粉塵により視界が悪い。激しい音で耳鳴りが強く、聴力が弱まっている。建物の崩れる音がする。

 塵が酷く、呼吸するのも大変である。

 明かに、今までの戦闘の被害よりも、自らの武器で発された激しい爆発の被害の方が大きい。
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