三つの民と神のちからを継ぐ者たちの物語 ヴェアリアスストーリー

きみゆぅ

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第一章 セイシュの民が翔ける黎明の空

56 古文書館にて

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 後退して少し離れた場所に隠れたにも関わらず、音に驚いて転げ回っていたアルマンプ総隊長がまた、サイン部隊長のいる最前線まであがってきた。

「こほっ こほっ もういいよ、そんな構えなくても、やっつけたよ、私の活躍で。ベストタイミングの指揮で。最高の武器で。」

 悪い視界の中で、アルマンプ総隊長が戦闘隊長の肩を叩きながら、笑い、歓喜する。

 サイン部隊長はアルマンプ総隊長を見向きもせず、その人の姿がいた周囲をジッとにらみ、状況を判断しようとする。

 そのサイン隊長の様子を見て、徐々に兵士も立ち上がり、70人程度が構えた。

 まだ、自らの武器で吹き飛ばされたデコラの兵士達が地に横たわっているのが見える。

 ようやく塵が薄らいで視界が回復していくと、皆が黙ってその先をじっと見つめる。

「ほらみろ!粉々だ!」

 再び歓喜するアルマンプ総隊長。

 その人の姿があった場所には、大きな穴が開いており、どこにもその姿を確認できなかった。

「四方警戒の陣!負傷者を中心に保護!爆発石矢の不発弾注意!衝撃有るぞ!」

 サイン部隊長を中心に前後左右に兵士が構え、どこからでも対処できる陣を指示した。

 負傷者を囲い込み、四方に注視する。

「もういい!戦闘は私のおかげで終わったんだ!構えを解いてレグランドフィアの大地の原石を探すんだ!これは命令だ!急げ!」

 その陣から仲間はずれのようにはじき出されたアルマンプ総隊長は兵士の間に割って入って陣を解かせた。

「しかし・・・まだ戦闘は終わっていません。爆発石矢の不発弾も心配です。」

「この爆発矢を使用すれば、敵はイチコロ。それを証明したんだ。お前もこの成果を伝えろよ。それよりも宝探しだ。我らはレグランドフィアを救った英雄。早く急いで大地の原石を探すんだ!」

「いや、まだ・・・」

「命令に背けば、おまえの命令に従った兵士にも処分をあたえるぞ!!急がないとデコラ王が長年求める大地の原石が逃げるぞ!」

「・・・」

 サイン部隊長は、兵士たちに、陣を解くように告げて、できるだけ早くこの場を去るように兵士に告げる。

 それを聞いて、緊張が解けた兵士は一斉に安堵した。

「そうだ。皆も爆発石矢のすばらしさを広げてくれ。さあ、もう何も心配はいらない!城内で宝探しだ!大地の原石を手に入れた奴は一生遊んで暮らせる報奨金があるぞ!!!」

 アルマンプが両手を広げて大きく飛び跳ねると、また、歓声があがった。



 城内では、サチが大変な発見をしていた。

 たまたま、今起こっている危険から逃げ隠れるために古文書庫の奥深くを探っていたときである。

 この大陸の地図や動植物の辞典、訳のわからない数式が記された本、セイシュ・イシュの歴史書初版や原石全集など、このような非常時しか決して部外者が見ることができない重要な書籍が多数あった。

 部屋の造りや棚は古く年代を感じるが、綺麗に片付けられている。埃も無く掃除が丁寧にされているのがわかった。

 城外の大きな爆発により、古文書庫内もかなり大きな揺れを感じたが、一冊も落下した本はなかった。唯一サチが転倒したぐらいの被害である。

 この部屋は、強固に作られているみたいだ。

「すごいよ、原石全集だって。食料の原石とか魔の原石とかもあるんだ。みてみて死の原石だって。でも、ほとんど字が読めないのよね・・・」

 本をぺらぺらめくりながら、サチは独り言のようにつぶやいていた。かなり古い本のため、字がかすみ、現在では使用されていない文字でかかれているため、なんとなくしか判らなかったが。

 サチの隣でシフィルは、セイシュ・イシュ歴史書に関する解説本を読んでいた。1ページめくるごとに、ほこりが舞う。

 少しでもちからを入れ間違えると破いてしまいそうだ。

 丁寧にページをめくっていくと、『カリクティス』と読める文章が出てきた。

 この本も、かなり昔に記されたもののようで、ほとんど現在とは字が違う。が、なんとなく現在に似ている部分を頼りに、読んでいた。

「カリクティス・・・原石を使える・・・滅ぼされる・・・セイシュにより・・?」

 断片的で、よくわからないが、自分にとって重要なページであることは感じた。


「きゃっ・・・」

 そのとき、サチが小さな声で叫び声をあげた。が、それは途中で強引に遮られる。

 シフィルが急いで駆け寄ると、叫び声をあげようとした口が背後から伸びた手で塞がれ、サチが両手を挙げて無抵抗を示している。

 足下の床の敷物がずれて、床下に隠された厚い木製の扉が開いていることから、そこに隠れていた人物とサチが遭遇したのだろう。

 サチが落ち着きを取り戻したのを告げるように、両手を挙げたまま首を数回うなずくと、その背後からの手がサチを離した。

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