三つの民と神のちからを継ぐ者たちの物語 ヴェアリアスストーリー

きみゆぅ

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第一章 セイシュの民が翔ける黎明の空

62 優将アルマンプ  ひゃぁ

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 そこにアルマンプを阻む様にサイン部隊長が穴の前に立つ。

「実は、マルスという、炎の化け物が、いや若い男なのですが、レグランドフィアを襲っていて、それをデコラとレグランドフィアの兵士が共闘して撃退しました。」

「それで?」

「今日は撃退できたことを祝い、撤退すべきと提案します。仮にマルスという炎の化け物がカルゴを襲っていたら、
 カルゴも被害は甚大であったでしょう。それをここで食い止めることができたのは総隊長の手柄と思います。」

「ここで、イルエスタ国王を亡き者にできれば、我がカルゴ国王がこの地も統べることができる。そうすれば、ほぼこの地方を制したのと同じだ。そっちの方が手柄が大きいと思わないか?」

「このような手段でこの土地を奪ったとしても民が付いてこないのは明白でございます。ご賢察なアルマンプ総隊長であれば、そのあたりはご理解いただけるかと。」

「それは、土地を奪ってから考えればよいのではないのか?」

「レグランドフィアとの共闘後のため、正直に言えば、このような手段は気が進みませぬ。」

「ほう、そなたの気を満足させるのと、カルゴ国王がさらに力を得るのとを比べるというのか。」

「・・・」

「それに、カルゴ兵には多数の死傷者が出た。それなりの手土産を持って帰る必要がある。」

「いや、それは、不発の爆弾石矢が爆発しただけでレグランドフィアは一切関係ない!そもそもこんな不安定な武器
 を使うのが嫌だったんだ!」

「なにを!国の方針に逆らうつもりか。デコラ兵がこんなに殺されたのだ。なにも無しで帰ることはできないだろう!」

「ですから、マルスを追い払ったという手柄は、すべて総隊長のものですから。」

「そんな幻想的なものは誰も信じないだろう。私だって信じられないぐらいだ。だとすると、レグランドフィア王でも捕まえて帰らないと私の立場を失うことになる。それに、今回の武器には多額の研究費がつぎ込まれているのだ。絶対に成果をあげなければならない。」

「立場って、研究費って、そんなもので、戦闘をする気ですか!」

「何が悪い!そんな正義ぶった建前の戦闘でお前レベルなら満足だろうよ。」

「正義ぶった・・・そのあなたの判断で死者が出ているのだぞ!」

 サイン部隊長が強く握った拳をすぐに開くと、怒りをため息で中和して誤魔化し、息を止めてから目を瞑った。

「お前こそ、情に流されてこの戦闘を終わらすつもりか!ここで、カルゴがレグランドフィアを攻略できれば、我らの将来はさらに安泰になる。未来が開けるのだ。この機会を逃したらその逆もあり得るのだぞ!」

「それは・・・。」

 サイン部隊長が言葉に詰まる。

「サイン部隊長よ、お前の行動はカルゴに対しての裏切り行為だ。」

 アルマンプ総隊長が本気で怒った顔でサインを睨んだ。

「この先、カルゴが国を失うことがあれば、お前のこの判断が原因だからな。」

 サインが息を飲んで、その勢いに何も言えなかった。

 穴から手がにゅっと伸びると、地面を強く掴んで、飛び跳ねるように穴からリヴィエラが姿を現す。

 背負っていたサチを丁寧に地面に寝かせると、そのままゆっくりとサイン部隊長の横に並ぶ。

「汚い手段で奪った国を統治した前例は聞いたことがないが。」

 そこからサインが離れると、穴に近づき、チラッと中の状況を確認する。

「それは簡単だ。奪った側が正義として後世には正史として伝えられるからだ。レグランドフィアの王子よ。」

 少し笑った表情で答えたアルマンプ総隊長に対し、リヴィエラも声を出して大声で笑う。

「何を難しい問答をしていると思えば。ただ、お前の無能と欲で、自国の兵士を多数殺したことへの言い訳を探しているといったところか。」

「なにお!!怒るぞ!」

 リヴィエラに対して、アルマンプ総隊長がこぶしを作って振り上げると、背後からの手がそれを掴み止める。


 からだをビクッと震わせて振り返ると、そこには服を汚したレグランドフィア王が立っていた。

「カルゴ国の優将アルマンプ様でございますな。」

 レグランドフィア王が手を離すと、深々と頭を下げた。

「ひゃぁ・・・優将・・そうだ、私がアルマンプだ。」

 少し顔を赤らめると、アルマンプが胸を張って笑った。

 一瞬でその場の空気が穏やかに変わった。

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