三つの民と神のちからを継ぐ者たちの物語 ヴェアリアスストーリー

きみゆぅ

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第一章 セイシュの民が翔ける黎明の空

64 デコラの戦後処理 無事任務報告

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 デコラ王国では、戦後処理が進められていた。

 広間にデコラ国の旗織が掲げられており、壺や絵画、植物が飾られ、赤い絨毯が床に敷き詰められている。

 玉座にデコラ王が深く座っており、その横に王妃が立ち、忙しそうに何かを兵士に指示をする。

 左右に権力者がずらっと並び雑談して、少し離れたところに楽器奏者が勇ましい音楽でこの場を盛り上げている。

「アルマンプ総隊長が到着されました!」

 入り口で待機をしていた兵士が大声で叫ぶと、勢いよく扉を開いた。

 場が一瞬にして静まると、赤い羽根のついた兜を手に持ち、アルマンプ総隊長が胸を張って得意げな顔でゆっくりと進んでいく。

 そして、デコラ国王の前に到達すると、片膝をついて深く一礼をした。

「レグランドフィア救出部隊総隊長アルマンプが報告致します。我々デコラ王国の兵士の活躍により、レグランドフィアを襲っていた化け物を退治し、無事任務を遂行いたしました。」

 城外からは拍手と歓声が上がった。

 そして、アルマンプが手を挙げて合図をすると二人の兵士が、レグランドフィアで探索部隊が奪った宝物を丁寧に持ち運んできた。

「こちら、戦闘中に破壊されるおそれがあったため、良心的に確保したものでございます。」
 絵画や工芸品、指輪や首飾りのような宝石類が多数積んであった。

「そうか、そうか、良心的に確保したか!それでは我が城の宝物庫に良心的に保管してくれ!」

 デコラ国王は上機嫌であった。アルマンプ総隊長の家にも既に宝物が保管され、周囲で歓声を上げる貴族達にも、宝が事前に分配されていた。

 実は、今回のレグランドフィアへのマルスの襲撃で、多くの宝物が焼失してしまっていたので、このアルマンプの良心的確保というのも、あながち判断として間違っていなかったのである。

「こちらは、レグランドフィア国王から直接今回の救出の感謝としていただいたものです。」

 アルマンプが胸から袋を取り出すと、金色に輝く宝石を自らの手に乗せた。

「おおぉ。これは素晴らしい。」

 デコラ王が差し出した手にアルマンプが金色に輝く宝石を渡すと、デコラ王が光に透かして、その美しさに感嘆する。

「アルマンプ総隊長、よくやってくれた。我が国の誇りだ。」

 そのデコラ王の満足な表情をじっと見つめると、アルマンプ総隊長も満足気に笑い、小さく涙を流した。


 それから、アルマンプが武勇伝をかなり盛った内容で、デコラ王とその周囲に身振り手振りを交えて、時には持っていた剣を振りかざしてマルスを叩き切る仕草をしたり、壊滅したレグランドフィア軍をかばう芝居をしたり、一人でマルスをやっつける際に負った顔の傷を細かく説明したりと独演場であった。

 
 やがて、それに嫌気がさした人たちが増えてきたころ、王の横で立っていたデコラ王妃が問いかけた。

「戦闘部隊が大きな被害を受けているようですが、これはどうしてですか?」

 一斉に静まる。それは皆が気にしていたが、聞くに聞けなかったこと。

 レグランドフィアから持ち出した宝物をこの場にいる貴族たちに配布したのは、このことを問わないことを裏で手を回したためであった。

 さすがに、それをデコラ王と王妃にはすることができなかったが。

「あの部隊には、我が国最新鋭の水のちからを込めた石の矢や爆発する矢を与えたはずだが?」

 デコラ国王の顔が急に厳しくなる。それを察したアルマンプは言葉に詰まる。

 アルマンプが一瞬撃たれたように動きを止めると、にこやかに笑った。

「はい。レグランドフィアを襲っていた、マルスというやつが強くて、負傷を。」

「それでは、最新の兵器は役に立たなかったと?」

「いえ、そんなことは無いのですが。」

「では、なぜに、これまでの被害を受けたのですか?」

「あの、それは。」

「兵士の訓練不足ですか?」

「いえ、そんなことも無いのですが・・・」

「指揮官の指示が悪かったとか?」

「それは決してありません。私ほどの戦略家はおりませんから!」

「では原因は?」

「・・・」

 アルマンプが困り果てて黙り込む。それをじっと祈るような目で見つめる複数人。

 デコラの兵器開発部隊責任者とそれを販売する商人、それに関係する権力者たちの無言の圧力。

 今回試した水の石矢と爆発矢は、それらの圧力を与える者達から今回の戦闘で成果を上げて、国内外に存在を知れ渡らせるという依頼を多額の資金でアルマンプは受けており、それは絶対に他言しないことも約束されていた。
 他言しないように、といっても意外と周りは知っているのだが。

 立て続けに繰り返される王妃からの質問攻めに困り果てたアルマンプは小さく顔を触った。

「実は、サイン部隊長が判断を誤ったためです。」

 先程、レグランドフィアの宝物を運んできた片方が、両ひざをついてデコラ国王に告げた。

「なに?そうなのか?」

 デコラ国王がギラギラした目でアルマンプに問うと、続いて先程の兵士が答えた。

「はい、言いにくいのですが、サイン部隊長が判断を誤りました。絶大な威力で素晴らしい性能の水の石矢と爆発矢
 で、すんなりとマルスを倒したと勘違いしたサインは、すぐに隊列を解いて休憩させました。アルマンプ総隊長は、それは駄目だといったのですが、言うことも聞かずにです。」

 腕を組んで怒った仕草をするその兵士に、冷静を保ちながらも手を震わせてその兵士の肩を叩くアルマンプ。

「総隊長の指示も聞かず?」

「いや、え、あの、あ、はい。」

 デコラ国王の問いかけにしどろもどろになって答えたアルマンプは息をかみ殺して、一度目を瞑ると小さくうなずいた。

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