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第一章 セイシュの民が翔ける黎明の空
66 策略と選択
しおりを挟むそのころ、サインにもその連絡が届いた。
「まさか、本当にこの通りになるとは・・・恐れ入った。」
サインはその処刑の連絡よりも、このことをあらかじめその男が予想していたことに驚いた。
「それで、貴国に移れと?それは・・・考えさせてくれ」
「考える?何を?死ぬか、生きるか?生きればいい。簡単なことだ。」
腕を組んだままサインは動かない。
窓から、その男がざわつく外を見渡すと、どんどん兵士が集まり周囲を包囲していくのがわかる。
「囲まれたか?予想したより動きが早い。」
サインも慌てて表を見る。そして複雑な顔をした。
「彼らは大丈夫。大切な仲間だ。」
サインが表に出ると、武装した兵士が約50人も集まっていた。しかもまだまだ集まっている。
「どうした!」
サインが問いかけると、口々に言葉が飛んだ。
「サイン部隊長を守りに来ました。」
「この判断はおかしいです!」
そこへ、サラエンも到着した。サラエンの部下もいつの間にか合流している。
「サイン!国王へ説明すればわかるはずだ、この国はおまえを必要としている!」
そのサラエンの話を遮るように、サインと話していた男が割って入った。
「使い古された言葉で恥ずかしいが、賢い鳥は腐った木には住まん。おまえの住む場所はここではない!」
「なんだ?この小さな男は?私より小さいじゃないか!この国を裏切るつもりか!」
サラエンも大きな声で叫ぶ。剣を抜き、その男の首元に突きつける。が、その男は素早く避け、一瞬でその剣をはじき飛ばした。
「サラエンやめろ!」
サインが止めた。そしておもむろに、周囲に集まった兵士達に問いかけた。
「私はレグランドフィアに行く。着いてくる者はいないか?・・・」
突然の申し入れに皆が戸惑った。
「この国を裏切るのか!!」
サラエンが手をふるわせながら剣を握る。
「この馬鹿はまだ気付かんのか、次はおまえがこの立場になるということを」
「なにを!!」
サラエンは持っていた剣を、震える手で勢いよくサインの隣の男に振り下ろした。が、剣は空を裂き、地面を傷つけるだけであった。
「サラエン聞け。私は部下を8人も殺してしまった。私の部隊はほぼ壊滅状態だ。ここにいれば、また同じ事が起き
るだろう。もういい。無能な上司は貴重な部下を殺す。その通りだった。俺が無能だった。」
呆然として言葉が無いサラエン。隣にいた男がさらに続ける。
「そして、サインがいなくなった後のターゲットはサラエン、おまえだ。サインとサラエンはこの国で影響が強すぎる。それが怖いのだろう国王は。ここにこれだけ部下が集まるこの信頼と人徳が怖いのだろう。おまえたちの国王はもってないからな。人望ってやつを。」
男が話し終えるのを待って、サインが続けた。
「私も独自のルートで調べた。王妃の侍女が、こっそり国王と王妃の会話を聞いたと教えてくれた。私を除去するた
めの作戦だったんだよ、そもそも今回のレグランドフィア救出作戦は。信頼できるルートだ。」
青ざめるサラエン。
「そんな国王が・・・確かに、疑う点もあるが・・・」
両足をつき、全身脱力する。この話を聞いていた周囲の兵士達へも動揺が走る。
「だが、この男の陰謀、われらをカルゴから離間させる策ではないか!」
「当然、真っ先に俺もそれを考えた。だから、デコラ王国のお偉いさんに色々探りを入れていた。その結果がこれだ。」
サラエンを諭すようにサインが、複数の手紙を見せた。
それは、サインが信用する数少ないデコラ王国で奉仕する者たちからの訴え。
どれも、逃げろ、国を出ろ、生きろと記載されていた。
それを見透かしたかのように、男は大声で話した。
「ここにいるみんな、自分で考えろ!なぜサインがレグランドフィアへ行くのか!この国に未来が見えるか!我がレグランドフィアは復旧にいくらでもちからが必要だ。来る者は拒まない!家族共々面倒を見る!このレグランドフィア王子リヴィエラが誓う!」
リヴィエラが叫ぶと、周囲は迷いの沈黙に覆われた。
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