三つの民と神のちからを継ぐ者たちの物語 ヴェアリアスストーリー

きみゆぅ

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第一章 セイシュの民が翔ける黎明の空

74 外に出るか 結界を張って籠るか

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「古にセイシュの民がこの大陸に張った結界は、既に崩壊し始め、一部は外の世界と往来ができている。我がレグランドフィアはそこを通じて外の世界の情報を集めて数年になる。結界の外の世界は、我々が結界を張って籠っている間に大きな文明の進化が起きていた。特に戦力においては、我々の持っている武器などまったく歯が立たないぐらいの差がある。その結界外の国々が我々の持つ原石を奪うために、侵略してくる計画があることを知った。我々がそれに抵抗するには、結界外の世界が持っていない原石のちからに頼る必要がある。我々レグランドフィアはできるだけ、原石とそれを扱える人材を集め、皆と協力してこの結界内を守りたいと考えている。それに協力してくれないか。外の世界にも原石の恩恵を分け与え、可能な限り皆で共存したいというのがレグランドフィア王の願いでもある。」

リヴィエラがライラに告げる。視線をもんちきに移してうなずく。

「そのような争いを避けるためにも、再び結界を張るべきではないかとセイシュの民は言っている。」

もんちきが腕を組み、即座に答えた。

「それは愚策だ。我々は原石に頼るあまり技術力を発展させることを忘れていたのだ。この技術力の差を埋めるためには、我々は外の世界を知らなければならない。」

「外の世界を知る前に滅ぼされることをセイシュの民は懸念している。」

「だから、我々は協力してちからを合わせる必要があるのだ。セイシュの民だけでなく、皆だ。セイシュもヒュム
も、サブヒュムも。それができなければ滅ぼされる。」

「セイシュの民は群れない。助け合わない。俺はそれを昔からずっと見てきたからな。」

「まあ、俺もそう思う。だから、外の世界から技術を学んでいくしかないのではないか。レグランドフィアは滅ぼされた火の村や水の村に外敵の情報提供と防衛援助の申し出をしていた。それを素直に受け入れていれば、滅ぼされずに済んだかもしれないのに。」

「それは結果論だ。そもそも、結界を張り直せば良いことではないか。」

「結界を張るためには、セイシュの民同士の協力が必要になるが。」

「そうだ。それくらいはできる。命がかかっているからな。」

「先日、水の村が滅ぼされ、火の村へ助けを求めたとき、火の村の民は水の村の民を受け入れなかったばかりか、その荷物さえ奪って放り出したという。困ったときに連携できない者達に、なにができるというのか!!」

「その話は本当か!?」

サチの手がぴくりと動いたが、誰も気付かなかった。

「我がレグランドフィアの情報部隊の報告だ。信用できる。外の世界には我々を絶滅させて原石を奪おうとする勢力もある。それらに対応するためには、協力できる外の世界の国と手を結び、その勢力に対抗する必要がある。結界内で分裂するわけにはいかないのだ!もっと広い目で世界を見て欲しい!」

白熱したリヴィエラともんちきの言い争いに、押されるように黙っていたライラが口を開いた。

「もんちき殿はセイシュの再結界論の支持者か。ライラにも再結界の要請が幾度とあったが、その話は断った。このライラの村も商人が行き交い、いろいろな情報が流れるが、その中で火と水の民の争いについて、そして他のセイシュの民の争いも幾度も聞いてきた。とても信頼して協力できるとは思えない。それは長い歴史が証明をしている。」

「・・・」

もんちきが黙る。

「我々ライラの村の民は、セイシュの民と言われる立場にあるかもしれないが、外の世界の技術を学ぶというのは賛成の立場。レグランドフィアに協力いたします。リザと光の原石を託しましょう。」

するとライラがリヴィエラに手を差し出し握手を交わした。そしてもんちきを見つめる。

「もんちき殿、あなたの知識が並はずれたものであることは話せば分かる。そして我らよりも長く生きて経験もおそらく豊富でしょう。ただし、過去は知っていても、現在の情勢には疎いと見える。現在セイシュの民は大地の民の長であるウィレム様を筆頭に強引にセイシュの民をまとめようとしている。そしてこの結界内で一大勢力を作ろうと躍起になっているようだ。ご存じですよね?」

「一大勢力を作る・・・?」

もんちきの曇った声にライラがうなずいた。

「ちょっとした筋からの情報ですが、大地のウィレム様や火のファルス様は既に結界外との交流を進めているようでございますよ。セイシュは本当に結界を張るつもりがあるのか、私には甚だ疑問ではございますね。」

リヴィエラはライラにうなずくと、もんちきをじっと見つめた。

「それは俺も聞いている。もんちき殿はセイシュの民の原石集めに、いいように利用されているだけではないのか!目を覚まされよ!結界を張るというのはそもそも可能なことなのか!その方法すらアヤフヤだろうに!」

「・・・利用されている?」

リヴィエラの言葉にもんちきには返す言葉が無かった。自分が利用されているなんて考えたことがなかった。

「俺が?利用されている??」

少しの間黙って考え込むもんちき。
それに声をかけずに同じように黙るリヴィエラとライラ。
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