三つの民と神のちからを継ぐ者たちの物語 ヴェアリアスストーリー

きみゆぅ

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第一章 セイシュの民が翔ける黎明の空

76 過去に囚われないことを祈る

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 準備が整い、ライラの家の外に出ると、村の人達が集まっていた。

 既にリザが旅立つというのが伝えられたようで、口々に別れの挨拶が聞こえる。

 ここの村人で有れば、誰もが一度はリザの診察を受けたことがあり、感謝の声が絶えない。

 リザも照れながらも一人一人握手をし、それに応える。

「リヴィエラ殿、聞けば砂漠馬を使わずに砂漠に入ったとか。何の目的かは存じませぬが、それは命知らずのすることです。人数分の砂漠馬を準備しました。どうぞお使いください。この馬はレグランドフィアの商人に預けて頂ければ、彼らがこの村に来る時の荷物運搬手段になるでしょう。」

 ライラの家には4頭の砂漠馬がつながれていた。礼を言い、リヴィエラはその手綱を取った。

 ライラのその言葉を聞いて、シフィルとサチが顔を見合わせて納得した表情をすると、二人でリヴィエラの顔を見つめてニヤっとする。

 詳しく聞くと、この村の人間でも毒蠍などが危険なため、そもそも疲れるために砂漠を歩いて横断することはしないらしい。

 ましてや商人など砂漠をよく知っている者達では、絶対考えられないことだそうだ。生きていて良かったと思った。

 特に砂漠嵐が起きると、視界が遮られて遭難する可能性が高いらしく、天気の変化の予兆を読み取る専門家が村の出発を止めることもあるとのこと。

「この手紙をレグランドフィア王に渡してくれ。読んでもらえればわかるはずだ。」

 ライラがリザに手紙を手渡すと、深くうなずいてそれを大切に仕舞った。

「では、お気を付けて。時代が動き始めました。何が本当に正しいか私もわかりません。だから自分が正しいという
 道を私は歩きます。もんちき殿、あなたも過去の知識にとらわれず、今を、未来をみて行動することを私は望みます。我らとあなたの幸せのために。」

 もんちきは曇った顔をした。だが、素直に大きくうなずいた。

「よし、イルエスタに戻る。世話になった。」

 リヴィエラは馬の腹に力を込め、動き出した。リザも同じように進み出す。

「どうすんだこれ?」

 馬になんとか跨ったシフィルがサチに問いかける。

「私に聞かないでよ!」

 馬にまだ乗れないで、鞍を掴んでピョンピョン跳んでいるサチが怒った声で応える。
 笑いながらライラがサチの両脇を抱えて馬に乗せ、馬の尻を叩いた。

 サチの乗った馬が静かに動き出し、リヴィエラを追いかける。

 ただ、シフィルの乗った馬は、どんなにシフィルが上体をばたばたしても一向に動かなかった。

 剣の鞘の先に糸を付け、その先にニンジンを付けて馬の前に吊るしたところようやく前に進み出した。

 それを見ていたライラとその村人は大爆笑であった。

 シフィルは、もう、ライラの村へ来るのは、やめようと心に誓った。


 それでも、しばらく進めば乗馬のコツがつかめ、かなりのスピードで走る爽快感に身震いさせる。

 シフィルとサチは先を争うように調子に乗ってドンドンと進んでいたが、やがて砂漠馬が砂漠を超える前に疲れてしまい、動かなくなってしまう。しょうがなくシフィルもサチも降りて引っぱりながら砂漠を進むことになった。

 それをリザが助けようとするが、リヴィエラは先に進むように指で合図を出した。

「面白い奴らだろ?」

「そうですね。平和を感じます。」

 リザは笑って後ろを気にして何度も振り返りながら、リヴィエラの後に着いていった。砂漠の出口まで後少しである。

 砂漠から草原への移り変わる場所で一旦休憩を入れ、それからレグランドフィアまで一気に走った。一日もかからない道のりだった。

 シフィルもサチもライラ村へ行くときの苦労は何だったのだとブーブー不満を何度も呪文を唱えるように口にしたが、レグランドフィアに着くと、ごちそうが迎えてくれたので、直ぐに機嫌を戻す。

 なんかレグランドフィアで色々振舞うのも慣れてきた気がした。
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