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第一章 セイシュの民が翔ける黎明の空
78 再び世界樹ネットワークへ
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扉を開けると、見張りなのか、護衛なのか、この部屋の近くでうろうろしている兵士に声を掛けて駆け寄ると、リヴィエラの所まで案内して欲しいと頼んだ。
その兵士は、どこかへ問い合わせ、少し待って、何かこそこそ話して、そしてようやくシフィルたちをリヴィエラの所へ案内していく。
そこは、古文書庫であった。
そこでは、リヴィエラとリザが一冊の古文を挟んで言葉を交わしている。タイトルは『セイシュ・イシュの歴史書』誰もが知っている歴史書。
シフィル達に気付いたのか、視線を向けた。
「何か用か?」
リヴィエラが言うと、隣でリザは小さくお辞儀した。
「馬を貸してくれないか?」
「何故?」
シフィルの問いかけに素早く返すリヴィエラ。
「馬を貸して欲しい。」
リヴィエラに向かい今度は、もんちきが説得するようにちから強い声で問いかけた。
何かを察したか、リヴィエラは軽くうなずいた。そして案内をした兵士に、騎馬隊用の馬を2頭貸し与えるように告げた。
また、通常は厳禁である夜の城外への移動についても許可を出した。シフィルとサチは礼を言い、兵士についていった。
「どうなるのでしょう?」
部屋を出て行ったシフィルたちを横目にリザがリヴィエラに心配そうな表情を浮かべる。
「さあな。」
短く答えたリヴィエラは、何事もなかったように古文にまた目を移した。
「選択によっては死んでもらうこともあるかもな。」
「でも、どうなるかだいたいわかってますよね。大丈夫ですよ。」
リザが小さく微笑んだ。
シフィルたちは兵士の後を追って、城外をぐるりと回って、舗装されていない道を通り、そのまましばらく歩いて小さな建屋に案内された。
それに隣接する牧場は木製の頑丈な柵に囲まれて、広大な範囲で馬が放し飼いにされていた。
その牧場内は所々柵で仕切られてはいるが、見回すとざっと300頭はいるだろうか。広大すぎてわからない。
横たわって休んでいたり、立ったまま眠っている馬もいる。
夜のためか、全体的におとなしくしているが、なぜか全力で走っている馬もいる。
案内した兵士がその馬小屋の番人にリヴィエラの指示で来たことを告げて、2頭準備するように頼むと、その番人が台帳を確認して、牧場の中へと走っていった。
それからすぐに砂漠馬よりもスマートな馬、一般的に想像したときに思い浮かべる体型の馬が2頭準備され、手綱をひかれてやってくるのがみえた。シフィルとサチが目を輝かせる。
「それでは、この2頭をご利用ください。」
栗毛の馬がニッと歯茎をみせて笑う。それをサチがまねをして笑い返す。
「かわいい、かわいい、私この子にする。」
笑顔で通じ合ったのか、素直にサチを受け入れるように、ゆっくり近づくと背に乗せた。
慌ててシフィルともんちきも、もう一頭の同じ栗毛の馬に乗る。
背中に乗ると、改めて砂漠馬と比較して、スマートであることを実感した。小さく感じる。
「リヴィエラ様の紹介なので優れた馬を準備した。必ず返すのだぞ。」
馬小屋の番人が二人に何度も繰り返し説明すると、それにシフィルもサチも何度も頷いたが、馬に気を取られていて話を聞いていない。
案内した兵士も苦笑いする。
「急ごう。世界樹ネットワークは寝ないと使えない。」
もんちきがシフィルの後ろに乗って強く掴むと、急いで進む様に促す。
馬小屋の番人と、ここまで案内をした兵士に礼をすると、手綱を操ってさっそく目的地へと進みだす。
わずかな指示で自分の思いの方向へ、適度なスピードで動き進む。賢い馬は違うとシフィルは思った。
そして徐々にスピードを早めていく。
「はや~い はや~い」
サチは馬のように歯茎を前に出しながら笑っていた。スピードの割に振動も少なく、風を切る早さに笑顔になる。前傾姿勢でさらにスピードを上げる。
シフィルの馬は機嫌が悪いのか、時々からだをゆすり、おたけびをあげた。そのたびに、落ちないようにちからを込める。
「あああああああっっっそこまで賢くなかったぁあああ」
シフィルがしっかりと手綱を握り、振り落とされないようにするが、馬は振り落とそうとしてからだを振るわせ、さらにスピードをあげる。
もんちきは器用にシフィルからサチへ移動し、快適な移動を楽しんだ。
必死に手綱を掴んでいたシフィルが振り落とされたのは草木が少なくなり、赤土地帯に入る手前であった。
急な馬の停止によりシフィルは大きく飛ばされ、背中で着地する。
その衝撃で仰向けになり目を瞑って痛さに耐えながらも、あたまの中で星がキラキラ輝いているが分かった。
そしてサチの馬も赤土地帯の手前で徐々にスピードを落として、停止した。
その兵士は、どこかへ問い合わせ、少し待って、何かこそこそ話して、そしてようやくシフィルたちをリヴィエラの所へ案内していく。
そこは、古文書庫であった。
そこでは、リヴィエラとリザが一冊の古文を挟んで言葉を交わしている。タイトルは『セイシュ・イシュの歴史書』誰もが知っている歴史書。
シフィル達に気付いたのか、視線を向けた。
「何か用か?」
リヴィエラが言うと、隣でリザは小さくお辞儀した。
「馬を貸してくれないか?」
「何故?」
シフィルの問いかけに素早く返すリヴィエラ。
「馬を貸して欲しい。」
リヴィエラに向かい今度は、もんちきが説得するようにちから強い声で問いかけた。
何かを察したか、リヴィエラは軽くうなずいた。そして案内をした兵士に、騎馬隊用の馬を2頭貸し与えるように告げた。
また、通常は厳禁である夜の城外への移動についても許可を出した。シフィルとサチは礼を言い、兵士についていった。
「どうなるのでしょう?」
部屋を出て行ったシフィルたちを横目にリザがリヴィエラに心配そうな表情を浮かべる。
「さあな。」
短く答えたリヴィエラは、何事もなかったように古文にまた目を移した。
「選択によっては死んでもらうこともあるかもな。」
「でも、どうなるかだいたいわかってますよね。大丈夫ですよ。」
リザが小さく微笑んだ。
シフィルたちは兵士の後を追って、城外をぐるりと回って、舗装されていない道を通り、そのまましばらく歩いて小さな建屋に案内された。
それに隣接する牧場は木製の頑丈な柵に囲まれて、広大な範囲で馬が放し飼いにされていた。
その牧場内は所々柵で仕切られてはいるが、見回すとざっと300頭はいるだろうか。広大すぎてわからない。
横たわって休んでいたり、立ったまま眠っている馬もいる。
夜のためか、全体的におとなしくしているが、なぜか全力で走っている馬もいる。
案内した兵士がその馬小屋の番人にリヴィエラの指示で来たことを告げて、2頭準備するように頼むと、その番人が台帳を確認して、牧場の中へと走っていった。
それからすぐに砂漠馬よりもスマートな馬、一般的に想像したときに思い浮かべる体型の馬が2頭準備され、手綱をひかれてやってくるのがみえた。シフィルとサチが目を輝かせる。
「それでは、この2頭をご利用ください。」
栗毛の馬がニッと歯茎をみせて笑う。それをサチがまねをして笑い返す。
「かわいい、かわいい、私この子にする。」
笑顔で通じ合ったのか、素直にサチを受け入れるように、ゆっくり近づくと背に乗せた。
慌ててシフィルともんちきも、もう一頭の同じ栗毛の馬に乗る。
背中に乗ると、改めて砂漠馬と比較して、スマートであることを実感した。小さく感じる。
「リヴィエラ様の紹介なので優れた馬を準備した。必ず返すのだぞ。」
馬小屋の番人が二人に何度も繰り返し説明すると、それにシフィルもサチも何度も頷いたが、馬に気を取られていて話を聞いていない。
案内した兵士も苦笑いする。
「急ごう。世界樹ネットワークは寝ないと使えない。」
もんちきがシフィルの後ろに乗って強く掴むと、急いで進む様に促す。
馬小屋の番人と、ここまで案内をした兵士に礼をすると、手綱を操ってさっそく目的地へと進みだす。
わずかな指示で自分の思いの方向へ、適度なスピードで動き進む。賢い馬は違うとシフィルは思った。
そして徐々にスピードを早めていく。
「はや~い はや~い」
サチは馬のように歯茎を前に出しながら笑っていた。スピードの割に振動も少なく、風を切る早さに笑顔になる。前傾姿勢でさらにスピードを上げる。
シフィルの馬は機嫌が悪いのか、時々からだをゆすり、おたけびをあげた。そのたびに、落ちないようにちからを込める。
「あああああああっっっそこまで賢くなかったぁあああ」
シフィルがしっかりと手綱を握り、振り落とされないようにするが、馬は振り落とそうとしてからだを振るわせ、さらにスピードをあげる。
もんちきは器用にシフィルからサチへ移動し、快適な移動を楽しんだ。
必死に手綱を掴んでいたシフィルが振り落とされたのは草木が少なくなり、赤土地帯に入る手前であった。
急な馬の停止によりシフィルは大きく飛ばされ、背中で着地する。
その衝撃で仰向けになり目を瞑って痛さに耐えながらも、あたまの中で星がキラキラ輝いているが分かった。
そしてサチの馬も赤土地帯の手前で徐々にスピードを落として、停止した。
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