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第一章 セイシュの民が翔ける黎明の空
80 結界の外との交流
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それを見たシフィルがキョロキョロ周りを探ってからウィレムに問いかけた。
「ファルス長老は、今日はいないのでしょうか?」
ウィレムともんちきと同様にシフィルも座り込む。それにサチも続いて座る。
「ファルスは今、世界樹ネットワークの届かないところに行っている。少し遠いところにな。」
「それって結界の外って事です??」
間髪いれず質問したサチの顔をもんちきが驚いた顔で覗き込む。
回答に困ったウィレムは目をつぶって少し考えた後、小さくうなずいた。
驚くシフィル達。
「それは、何しに行っているのですか?」
シフィルはウィレムに強く迫ったが、それをもんちきが抑える。
「仮に結界が無くなった時のための情報収集だ。敵の戦力なり、地形なりは知っておく必要がある。それと、再結界化についてもな。」
興奮するシフィルを落ち着かせるように、両手で組んだ態勢で小さくうなずくと、笑った。
もんちきは、結界外への情報収集とサラリとウィレムが口にしたことに驚いたが、それを姿には現さなかった。
結界外に行く手段も、結界外で情報を収取する手段も共に持ちあわせている、それは一朝一夕でできないことは理解できた。
いつ頃から結界外へと繋がっているのだろうか。
ウィレムにしろ、レグランドフィアにしろ、自分が知らないうちに、いろいろ動いていることに不安を覚えた。
ライラで言われた、現状に疎いということを目の当たりにした。自分は何も知らない。そうなのだと強く感じさせられた。
「結界を再び張ることができれば、すべて問題なく、このまま平和に暮らせる。この考えは外界を切り捨てる考え方と言われることは認識しているが、私はセイシュの民を守りたい。これが最善だと思って行動している。」
ウィレムは横に座っていたもんちきの手を取り、強く握り締めた。
「私の考えに賛同してくれないか。そなたらのちからが再結界化には必要なのだ。だから、私は何も隠さず、私の知り得ていることをすべて話しているつもりだ。」
強く見つめたウィレムの視線をもんちきが逸らした。
もちろん、サチ、シフィルもどうしてよいかわからない。
「この大陸の結界を張る方法はどうも結界外の、ある神殿にあるということがわかった。その神殿についても現在セイシュの民が調査に出ている。いずれ結界を張る方法は確立できるであろう。そのためには火、水、大地、光の原石とそなたらのちからが必要なのだ。頼む、どうかそのちからを貸して欲しい。」
シフィルとサチの手を握るウィレム。困ったようになされるまま握手する。
「少し考えさせてください。」
もんちきは弱々しい声でつぶやいた。困った顔をしてうなだれる。それを見たウィレムは、もんちきの頭を撫でると、笑顔で頷いた。
「私はそなたらが、再結界化にちからを貸してくれることを信じている。決心が固まったら、世界樹ネットワークで呼びかけてくれ。」
ウィレムは立ち上がると、目をつぶった。やがてその姿が薄れていき、完全に姿を消す。
シフィル達も同じように目を閉じる。
すーっと意識が遠くなると、やがて目を覚ました。
大きい木の根っこに寄りかかっていたため、からだが痛い。それよりも、気分が優れない。
周囲は濃い霧に覆われているためはっきりとしないが、上空から光が差し、朝が来ているのだろう。
覚えているのは短時間であるが、既に朝を迎えるまでに時間が経過していた。
「難しいね。どうしよう。」
寝ぼけた表情で目を擦りながらため息をつくサチ。
シフィルもその横で首を傾げて目を擦っている。
「どっちも正しく思えてくるよね。っていうか、いまいち、結界って言うのがまだよくわからんのだが。」
シフィルはあくびを我慢しながら、つぶやいた。
「さて、どうしよう。」
サチがもんちきに問いかける。それをシフィルも見つめる。
もんちきは、その話を聞いていないのか、周囲をきょろきょろしていた。
「なんか、嫌な気配がする。馬の音がいくつもするぞ。こちらに向かってくる。すぐにここを立ち去ろう。」
もんちきは、素早くシフィルの肩に駆け上がると、両手で頬をペチペチと叩いて戸惑うシフィル達を強引に動かす。
「え?何が?どこから?」
「いいから急げって。」
起きて間もない重いからだを頑張って、何が起きているかよくわからないまま、馬をつないでいた小川に走り出す。
赤土地帯を越えて小川に近づくと、その姿に気付いた馬のいななきが聞こえた。
「サチーンよく待ってたね!」
また歯茎を出して馬のまねをするサチ。そしてサチーンに飛び乗った。
シフィルが騎乗すると、何かを感じ取ったように大きくからだを震わすと勢いよく走り出した。いきなり全速力に近い。
「こらこら落ち着け!」
振り落とされそうになるが必死に手綱を掴むシフィル。
それを追いかけるサチ。
「ファルス長老は、今日はいないのでしょうか?」
ウィレムともんちきと同様にシフィルも座り込む。それにサチも続いて座る。
「ファルスは今、世界樹ネットワークの届かないところに行っている。少し遠いところにな。」
「それって結界の外って事です??」
間髪いれず質問したサチの顔をもんちきが驚いた顔で覗き込む。
回答に困ったウィレムは目をつぶって少し考えた後、小さくうなずいた。
驚くシフィル達。
「それは、何しに行っているのですか?」
シフィルはウィレムに強く迫ったが、それをもんちきが抑える。
「仮に結界が無くなった時のための情報収集だ。敵の戦力なり、地形なりは知っておく必要がある。それと、再結界化についてもな。」
興奮するシフィルを落ち着かせるように、両手で組んだ態勢で小さくうなずくと、笑った。
もんちきは、結界外への情報収集とサラリとウィレムが口にしたことに驚いたが、それを姿には現さなかった。
結界外に行く手段も、結界外で情報を収取する手段も共に持ちあわせている、それは一朝一夕でできないことは理解できた。
いつ頃から結界外へと繋がっているのだろうか。
ウィレムにしろ、レグランドフィアにしろ、自分が知らないうちに、いろいろ動いていることに不安を覚えた。
ライラで言われた、現状に疎いということを目の当たりにした。自分は何も知らない。そうなのだと強く感じさせられた。
「結界を再び張ることができれば、すべて問題なく、このまま平和に暮らせる。この考えは外界を切り捨てる考え方と言われることは認識しているが、私はセイシュの民を守りたい。これが最善だと思って行動している。」
ウィレムは横に座っていたもんちきの手を取り、強く握り締めた。
「私の考えに賛同してくれないか。そなたらのちからが再結界化には必要なのだ。だから、私は何も隠さず、私の知り得ていることをすべて話しているつもりだ。」
強く見つめたウィレムの視線をもんちきが逸らした。
もちろん、サチ、シフィルもどうしてよいかわからない。
「この大陸の結界を張る方法はどうも結界外の、ある神殿にあるということがわかった。その神殿についても現在セイシュの民が調査に出ている。いずれ結界を張る方法は確立できるであろう。そのためには火、水、大地、光の原石とそなたらのちからが必要なのだ。頼む、どうかそのちからを貸して欲しい。」
シフィルとサチの手を握るウィレム。困ったようになされるまま握手する。
「少し考えさせてください。」
もんちきは弱々しい声でつぶやいた。困った顔をしてうなだれる。それを見たウィレムは、もんちきの頭を撫でると、笑顔で頷いた。
「私はそなたらが、再結界化にちからを貸してくれることを信じている。決心が固まったら、世界樹ネットワークで呼びかけてくれ。」
ウィレムは立ち上がると、目をつぶった。やがてその姿が薄れていき、完全に姿を消す。
シフィル達も同じように目を閉じる。
すーっと意識が遠くなると、やがて目を覚ました。
大きい木の根っこに寄りかかっていたため、からだが痛い。それよりも、気分が優れない。
周囲は濃い霧に覆われているためはっきりとしないが、上空から光が差し、朝が来ているのだろう。
覚えているのは短時間であるが、既に朝を迎えるまでに時間が経過していた。
「難しいね。どうしよう。」
寝ぼけた表情で目を擦りながらため息をつくサチ。
シフィルもその横で首を傾げて目を擦っている。
「どっちも正しく思えてくるよね。っていうか、いまいち、結界って言うのがまだよくわからんのだが。」
シフィルはあくびを我慢しながら、つぶやいた。
「さて、どうしよう。」
サチがもんちきに問いかける。それをシフィルも見つめる。
もんちきは、その話を聞いていないのか、周囲をきょろきょろしていた。
「なんか、嫌な気配がする。馬の音がいくつもするぞ。こちらに向かってくる。すぐにここを立ち去ろう。」
もんちきは、素早くシフィルの肩に駆け上がると、両手で頬をペチペチと叩いて戸惑うシフィル達を強引に動かす。
「え?何が?どこから?」
「いいから急げって。」
起きて間もない重いからだを頑張って、何が起きているかよくわからないまま、馬をつないでいた小川に走り出す。
赤土地帯を越えて小川に近づくと、その姿に気付いた馬のいななきが聞こえた。
「サチーンよく待ってたね!」
また歯茎を出して馬のまねをするサチ。そしてサチーンに飛び乗った。
シフィルが騎乗すると、何かを感じ取ったように大きくからだを震わすと勢いよく走り出した。いきなり全速力に近い。
「こらこら落ち着け!」
振り落とされそうになるが必死に手綱を掴むシフィル。
それを追いかけるサチ。
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