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第一章 セイシュの民が翔ける黎明の空
81 死にたくなければ、殺すしかないよね
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シフィルが馬に話しかけるが、当たり前のように通じず、そのまま走り続ける。どこか怯えているような走り。
「後ろだ。追いかけてくる。」
もんちきがシフィルの首に両手を回して強く握り、大きく叫ぶ。
「ぐぇぇぇぇ苦しい・・・」
見たことのない形状の鎧を纏った騎兵がこちらに向かって槍を構えて近づいてくる。
約10人程度であろうか、シフィル達よりも少し大きな黒い馬に乗ったその者達は、ぐんぐんシフィル達との間を詰めてくる。
「雷よ、矢となりあの者を排除せよ!」
追っ手の男が持っている石が透明に光った瞬間、雷がシフィルの横を通り抜けた。運良く外れたが、その先でえぐれた地面に顔が青ざめる。
さらに追い撃ちが続く。
シフィル達はスピードをあげて逃げようとするが、先程の落雷音で騎馬が怯むと、さらに差が狭くなる。
「風よ、大気を切り裂け!」
風の流れが急に変わったかと思うと、突風が吹き、空気が収縮されて風の刃がシフィルを襲う。
それもどうにか馬が勝手に避けてくれている。馬が揺れることなく走ることを信頼してサチは水の原石を取り出し、構えた。
「水よ!追い払って!!」
水の原石が青く光ると、その原石を取り巻くように水が溢れだして、追いかけてくる騎兵に水が高速で水の塊が降り注ぐが、騎乗での動きにはまだ慣れずに、グラグラして体勢を崩し狙いが定まらない。
追っ手はさらにスピードを上げ、シフィル達を捉えようと周囲を囲い込む。
「炎よ、なんとかしてくれ!」
シフィルが左手で手綱を強く握って後方を振り向くと、右手で掴んだ火の原石にちからを込める
放射線状に炎が放射されるが、シフィルも慣れない騎乗での動きで、関係ない方向へと炎が飛んでいく。
それはそれで予想できない方向へ放射される火の渦で1騎撃退できたのは、運がよかったためだろう。
「シフィル、逃げるぞ。ジグザグで逃げよう。直線だと狙いを付けられる。」
「そんなこと言ったって、囲まれているし!逃げようがないって!」
そんな相談をしている間にも周囲に雷が降り注ぎ、風が吹き荒れて動きが鈍くなる。
慌てるシフィル達を無視するように、すっーとサチが走るサチーンの手綱を離して鞍に直立すると、背負っていた弓を取り出して構える。
サチーンも上下運動をなくして直線的に進み、サチのバランスが崩れないように一定殿速度を保つ。
矢の無い弓をそっと引き絞ると、水の原石が青い光を発して透明な氷の矢が生まれる。そしてそれをさらに引くと、狙いを定めて躊躇なく放つ。
氷の矢が追手の胸の鎧を貫通すると、そのまま吹き飛ばす。
直立する右足にサチーンの手綱を絡ませて、蹴るようにちからを込めて器用に反転させると、さらに氷の矢を二連続で放って、二人を貫く。
「サチ、スゲーな・・・」
「いいから逃げようよ。また囲まれるよ。」
感嘆するシフィルに開いた道を指さして、サチがその方向へと逃げるように自ら急ぐ。
それに遅れないようにシフィルも追いかける。
そのとき、どこからか騎馬隊が20騎程度、シフィル達へ高速で近づいてきた。
サチが再び弓を構えるが、その鎧は見覚えがあった。レグランドフィアのものである。
「シフィル殿、レグランドフィアのサインと申す。ここは我々に任せ、退却されよ。」
黒い鎧を身に纏ったサインという兵士は騎乗したまま、弓を兵士に構えるように指示をすると、追手に向かって一斉に撃ち放った。
馬も兵士も訓練されており、サインが示す手の合図により、瞬時に陣形を変えていった。まさに熟練の兵士達というのが感じられる。
その翻弄する動きの中で、サインが変わった形をした先端の矢を放つと、ゆっくりと蛇行しながら激しい引っかき音をたてて相手に飛んでいく。すると、追手の騎乗している馬がその音に驚き、暴れ始めた。制御できず、ばたばた落馬していく。
そこへ、もう一隊別のレグランドフィアの騎馬隊が10騎駆けつけると、手際よくその追手を取り押さえて縄で縛り拘束した。
追手が持っていた光る石を取り上げると、不思議な箱にしまう。
「レグランドフィアのサラエン隊、片づいたよ。石も確保。8名捕獲。3名はどうにもならない状態だ。」
サイン達は、その追手の乗っていた馬を集め、音の鳴る矢を回収した。
シフィル達の乗っていた馬は、激しい音にも驚かずに一直線に進んでいった。かなり訓練された馬だ。サチが驚いて落馬しそうになったが、サチーンがうまく対処しており、それをよろこんだサチがサチーンの顔をヨシヨシとすっごく撫でている。
「全員捕まえるようにとの指示だったのだがな。」
サインが絶命している追手3名を地面に並べると綺麗に正し、両手を合わせた。その3名はいずれもサチが矢を放った者達だった。
「まあ、仕方ないよね。死にたくなければ、殺すしかないよね。」
「・・・まあ、そうだが。」
「あっちから仕掛けてきたからね。」
悪びれる様子もなく、青色に未だ輝いている水の原石をじっと見つめる少女に、いくつもの戦場をくぐっているサインが少し恐怖を感じた。
「こいつらは、この周辺を縄張りにしている盗賊だ。これで少しは被害が無くなるだろう。うちらも排除が目的だったからね。」
サラエンがサチを見て笑うと、サチも返すように笑ってから小さく首を傾げる。
「後ろだ。追いかけてくる。」
もんちきがシフィルの首に両手を回して強く握り、大きく叫ぶ。
「ぐぇぇぇぇ苦しい・・・」
見たことのない形状の鎧を纏った騎兵がこちらに向かって槍を構えて近づいてくる。
約10人程度であろうか、シフィル達よりも少し大きな黒い馬に乗ったその者達は、ぐんぐんシフィル達との間を詰めてくる。
「雷よ、矢となりあの者を排除せよ!」
追っ手の男が持っている石が透明に光った瞬間、雷がシフィルの横を通り抜けた。運良く外れたが、その先でえぐれた地面に顔が青ざめる。
さらに追い撃ちが続く。
シフィル達はスピードをあげて逃げようとするが、先程の落雷音で騎馬が怯むと、さらに差が狭くなる。
「風よ、大気を切り裂け!」
風の流れが急に変わったかと思うと、突風が吹き、空気が収縮されて風の刃がシフィルを襲う。
それもどうにか馬が勝手に避けてくれている。馬が揺れることなく走ることを信頼してサチは水の原石を取り出し、構えた。
「水よ!追い払って!!」
水の原石が青く光ると、その原石を取り巻くように水が溢れだして、追いかけてくる騎兵に水が高速で水の塊が降り注ぐが、騎乗での動きにはまだ慣れずに、グラグラして体勢を崩し狙いが定まらない。
追っ手はさらにスピードを上げ、シフィル達を捉えようと周囲を囲い込む。
「炎よ、なんとかしてくれ!」
シフィルが左手で手綱を強く握って後方を振り向くと、右手で掴んだ火の原石にちからを込める
放射線状に炎が放射されるが、シフィルも慣れない騎乗での動きで、関係ない方向へと炎が飛んでいく。
それはそれで予想できない方向へ放射される火の渦で1騎撃退できたのは、運がよかったためだろう。
「シフィル、逃げるぞ。ジグザグで逃げよう。直線だと狙いを付けられる。」
「そんなこと言ったって、囲まれているし!逃げようがないって!」
そんな相談をしている間にも周囲に雷が降り注ぎ、風が吹き荒れて動きが鈍くなる。
慌てるシフィル達を無視するように、すっーとサチが走るサチーンの手綱を離して鞍に直立すると、背負っていた弓を取り出して構える。
サチーンも上下運動をなくして直線的に進み、サチのバランスが崩れないように一定殿速度を保つ。
矢の無い弓をそっと引き絞ると、水の原石が青い光を発して透明な氷の矢が生まれる。そしてそれをさらに引くと、狙いを定めて躊躇なく放つ。
氷の矢が追手の胸の鎧を貫通すると、そのまま吹き飛ばす。
直立する右足にサチーンの手綱を絡ませて、蹴るようにちからを込めて器用に反転させると、さらに氷の矢を二連続で放って、二人を貫く。
「サチ、スゲーな・・・」
「いいから逃げようよ。また囲まれるよ。」
感嘆するシフィルに開いた道を指さして、サチがその方向へと逃げるように自ら急ぐ。
それに遅れないようにシフィルも追いかける。
そのとき、どこからか騎馬隊が20騎程度、シフィル達へ高速で近づいてきた。
サチが再び弓を構えるが、その鎧は見覚えがあった。レグランドフィアのものである。
「シフィル殿、レグランドフィアのサインと申す。ここは我々に任せ、退却されよ。」
黒い鎧を身に纏ったサインという兵士は騎乗したまま、弓を兵士に構えるように指示をすると、追手に向かって一斉に撃ち放った。
馬も兵士も訓練されており、サインが示す手の合図により、瞬時に陣形を変えていった。まさに熟練の兵士達というのが感じられる。
その翻弄する動きの中で、サインが変わった形をした先端の矢を放つと、ゆっくりと蛇行しながら激しい引っかき音をたてて相手に飛んでいく。すると、追手の騎乗している馬がその音に驚き、暴れ始めた。制御できず、ばたばた落馬していく。
そこへ、もう一隊別のレグランドフィアの騎馬隊が10騎駆けつけると、手際よくその追手を取り押さえて縄で縛り拘束した。
追手が持っていた光る石を取り上げると、不思議な箱にしまう。
「レグランドフィアのサラエン隊、片づいたよ。石も確保。8名捕獲。3名はどうにもならない状態だ。」
サイン達は、その追手の乗っていた馬を集め、音の鳴る矢を回収した。
シフィル達の乗っていた馬は、激しい音にも驚かずに一直線に進んでいった。かなり訓練された馬だ。サチが驚いて落馬しそうになったが、サチーンがうまく対処しており、それをよろこんだサチがサチーンの顔をヨシヨシとすっごく撫でている。
「全員捕まえるようにとの指示だったのだがな。」
サインが絶命している追手3名を地面に並べると綺麗に正し、両手を合わせた。その3名はいずれもサチが矢を放った者達だった。
「まあ、仕方ないよね。死にたくなければ、殺すしかないよね。」
「・・・まあ、そうだが。」
「あっちから仕掛けてきたからね。」
悪びれる様子もなく、青色に未だ輝いている水の原石をじっと見つめる少女に、いくつもの戦場をくぐっているサインが少し恐怖を感じた。
「こいつらは、この周辺を縄張りにしている盗賊だ。これで少しは被害が無くなるだろう。うちらも排除が目的だったからね。」
サラエンがサチを見て笑うと、サチも返すように笑ってから小さく首を傾げる。
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