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第一章 セイシュの民が翔ける黎明の空
83 私なりの答えを見つけに行く
しおりを挟むそこにはレグランドフィア王とショカ、リヴィエラ、シフィル達とサイン・サラエンが残っていた。
「これから情報部隊として活躍していただくために、わが国の極秘事項を伝達します。このことは他言せぬように注意していただきたい。」
そしてショカが一枚の大きな地図を広げた。
それは、シフィルの持っている地図よりもさらに大きく、結界という印も入っている。
レグランドフィアより南の砂漠をさらに南に進むと海があるらしい。その海をさらに南下した部分に結界という記載があり、そこの一部分に穴の印がある。どうやらそこが結界の欠けた場所らしい。
そしてそこからさらに南下したところに村だろうか、建物の絵がある。それ以外の南下した大陸の記載は空白であった。
「現在我々が発見した結界の穴はこの南の一箇所のみ。そこから結界外へ侵入していただきます。そしてまず目指すはユングの監視所。ここに我が国の極秘の結界外情報収集拠点があり、その近くにユングの町があります。そのユングの町にも既に情報提供者がおりますので、まずはユングの監視所へ向かってください。ただし、そこからの情報提供が現在途切れています。油断せぬよう、お願いいたします。」
この地図を縮小したものがリヴィエラへ手渡された。
次に、サインとサラエンが前に出てきた。
「先ほど、シフィル殿達を襲撃した者は尋問の最中であり、有益な情報はまだありません。どうも、ただの盗賊出ではない可能性があります。これを見てください。」
サラエンは布に包まれた光る石をもっていた。
「これは、もんちき殿のおっしゃるには雷の石と風の石とのことです。なぜ皆様を襲ったのか、現在は謎ですが、敵がいることは確かです。十分注意されますよう、お願いします。」
すると、サラエンはシフィルにこの石を差し出した。
「シフィル殿は火の原石や水の原石の他にもあらゆる石を扱えるとのこと。雷と風の石を一つずつ与えるので、情報収集に役立たせて欲しい。」
レグランドフィア王はシフィルに受け取るように促す。それを素直に受け取る。
風の石を持ち、軽く力を込めると、そこからわずかに風が吹き、広げた地図を飛ばしてしまった。やはり、どのような種類の原石、石も扱えるようだ。
改めて自分はすごいと思った。驚く周りに優越感を感じて嬉しかった。
「それと、他の者にも馬を与えよう。我が城の馬小屋から、好きな馬を選んで持っていくが良い。」
シフィルの目が輝く。サチと目を合わせて笑った。
「ありがとうございます!!!」
最高の笑顔でシフィルとサチが深く頭を下げた。
そして、今日はゆっくりと休み、明日の朝、出発と決まった。
既に船の準備もできているという。と、いうことはこの出立は決められていたことなのだろうか。
ちょっと複雑な想いはあったが、この先すべきことが決まったのは、新しい目的を得たことは、不安よりもワクワクが勝った。
その晩、明日からの旅立ちを前に、色々と説明を受けていた。
なんか覚えることがいっぱいあってくじけそうになってきた。
「リザさんって私と2歳しか違わないんですか?おとなっぽいですね!」
サチは鏡を見ながらリザと自分を比べていた。
「サチさんだってかわいいですよ。」
笑いながらリザがサチの頭をなでる。
その和気藹々の状態を見ながら、リヴィエラがもんちきの隣に座り、話しかけた。
「自分なりの答えは見つかったのか?」
「一度自分で結界外を見てみないことにはどうにもならんからな。」
もんちきはミルクの入ったコップを上手に飲み干すと、今度は木の実をほおばった。
「皆、自分が正しいと思いながら行動する。これはセイシュの民ウィレム様もレグランドフィア王も同じだ。私なりの答えを見つけるようにする。」
木の実を噛み砕き、次にくだものに手を出しながら話すもんちき。
そのくだものを先に取り、自分の口へ運ぶリヴィエラ。
「私はいつも自分の行動が一番正しいと信じている。自分を信じていない者に、他の者が従うわけがないからだ。もんちき殿がどういう真実を見つけるかはわからん。我々が間違っていると確信したときは離れるがいい。文句は言わん。」
するとリヴィエラは立ち上がり、地図を改めて広げた。そこに皆集まる。
「明日は遠回りになるが砂漠を避け、迂回して南の海を目指す。砂漠を通るには砂漠馬が必要になるが、今後を考えると普通の馬をずっと乗っていった方が便利だからだ。」
それを聞いてサチの目が輝く。既にサチは愛馬サチーンに飼い葉と水を与えて、その友情を確かめ合ってきていた。
ついつい歯茎を見せながら微笑む。
「そこの先にレグランドフィアの管理する港があり、そこで馬を降り、船に移る。そこからさらに南下し、結界を抜けることになっている。一応、地図があるが、状況を判断しながら進んでいく。」
港でサチーンを降りると聞いて悲しむサチ。それをなぐさめるリザ。
「馬は船に乗せていく。移動手段として重要だからな。」
そのリヴィエラの言葉で笑顔がこぼれるサチ。ころころ表情が変わるサチを見て、リザが笑っている。
「質問がなければ今日は寝よう。明日から厳しい旅になるが、どうにかなるはずだ。それと、一時的でも我々は仲間として活動することになる。助け合っていくようにしよう。」
リヴィエラは地図をくるくるっと丸めて片づけると、紐で留めた。
また、お互いのことを『さん』を付けないで呼ぶことに決めた。これは仲間意識を高める効果を狙い、身分を無視した行動をとりたいというリヴィエラからの提案であった。それに皆納得する。
リヴィエラは先に部屋へ戻り、シフィルももんちきを連れて部屋へ戻った。
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