三つの民と神のちからを継ぐ者たちの物語 ヴェアリアスストーリー

きみゆぅ

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第一章 セイシュの民が翔ける黎明の空

85 フォーンの館

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 そのころ、リヴィエラたちは計画通り砂漠を大きく迂回し、草原を走っていた。

「シフィルいなくなっちゃった・・・」

 サチは後ろに乗せたもんちきが飛ばされないように注意を払いながらサチーンの手綱を引き操る。

 シフィルと赤馬が風のように走り去っていった後、取り残された者達は、馬が走りやすい速度で順調に進んでいた。

「方向はクリスタルレイクに進んでいったから大丈夫じゃないかしら。」

 心配するサチにリザが笑う。

 走りやすい草原だからか、順調にスピードをあげて進んでいく。馬が疲れる前に休憩を取り、馬に水や食料を与えながら確実に進んでいた。やがて周囲が暗くなりかけ、視界が悪くなる。

「今日はここで休む。」

 リヴィエラはポツンと建つ一軒の小屋を指さした。

 そこには明かりがついており、煙突から煙が立ち上っている。その軒下には飼い葉が豊富にあり、そこへそれぞれ馬を繋いだ。そして桶に入っている水を馬へ与える。

「あ、ここ・・・」

 リザがちょっと困った笑顔で小さく息を吐いた。

「知ってたか。」

 リヴィエラはその小屋の扉を軽く2回叩くと少し待ったが何も反応がなかったため、今度は強く2回叩く。
 さらに少し待つが、諦めて無断でその扉を開けた。周りの様子を探りながらも、ゆっくりと中に入っていく。

「リヴィエラ、入ります!」

 大声で叫んだその先に老人が一人で椅子に座り本を読んでいた。白いモジャモジャの長いひげとラフな服装。

 壁一面に設置された本棚にびっしりと本が数え切れないほど保管されており、一部ぐちゃぐちゃと乱雑に重なっている。

 床にもたくさんの本が積まれており、ちょうどバラバラと崩れた。

 また手紙や巻物、なんか葉っぱに書かれた文書も、大量に散らばっている。

 部屋のさらに奥に視線を移すと、開封されていない本がたくさんある。汚い部屋。

「フォーン殿!」

 もんちきはその老人に近づくと、驚きの声をあげた。リヴィエラとリザが深く頭を下げて礼をする。

 サチもそのまねをして頭を下げた。サチは当然面識ないが、自分以外が皆知っているのはなんか少し不愉快でもある。

「懐かしい顔がおるな。」

 目を細めたフォーンはゆっくりともんちきへ手を差し伸べた。もんちきはその手を両手で握った。

「おひさしぶりです。」

 リヴィエラは床に放置されている本をバサバサと空いた本棚へ片づけ、自分たちの座る場所を確保した。

 リザとサチもそこへ座る。

「フォーンってフォーンの書と筆を発明した人?偉い人だね。すごいねぇ。」

 サチの言葉に笑うフォーン。怖い目をして睨み付けるリヴィエラ。なだめるリザ。自分で口を塞ぐサチ。

「久々の客人よ。おいしい酒でも持ってきてくれたのかね。」

 本を閉じたフォーンが長い白いひげを指でクルクルさせながら笑った。

「実は、結界外へ行くことになりました。」

 リヴィエラは持っていた酒と肉の炙り焼きを手渡すと、膝をついて、旅のいきさつを告げた。

 また、もんちきもセイシュの立場から、結界外への移動について話した。

 どちらの言葉も特に頷くことなく、ただ目を閉じてフォーンは聞いていた。

「原石は戦を生む。セイシュの持つ原石、レグランドフィアが持つ原石どちらも同じ。それを結界外の者は奪うか、
 創るか。やがて特別でなくなる。それでもそなたらは己の立場がどうのと言うつもりか。愚かなことだ。」

 もんちきもリヴィエラも言葉無くただ立ちすくむのみであった。

 サチはもんちきとリヴィエラが困ったように言葉に詰まったのをみて、フォーンはすごい人であると実感した。

 でも、正直何を言っているのか理解できなかった。

「では、どうしたらいいんでしょう?結界張ればいいんですか?」

 サチがフォーンに、かわいい顔して笑った。

「それは自分で考えよ。」

「ふぇーっ」

 冷たくフォーンがあしらう。サチが声を出して泣きそうな顔をする。

「何が正しい答えかは誰もわからない。結界を張るにしても、外の世界と交流するとしても。結界を破壊する技術も開発されていると聞く。当然その反技術として結界を張る技術も既に開発中であるようだ。確かに結界外の情報収集が必要というのは間違ってはいない。結界を原石で張るという行為が今更正しいのかもわからない。」

 リヴィエラが頷く。もんちきも同じように頷いた。そして、フォーンは一通の手紙を出した。

「レグランドフィア王より、おまえ達のちからになって欲しいとの手紙が届いた。王には借りがあるからな。多大な貸しもあるが」

 フォーンは手を叩き合図を出した。すると奥から男の子と女の子が一つのお盆に乗せて両側を持ち、何かの有名な細工だろうか、木で編んだ箱を運んできた。
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