三つの民と神のちからを継ぐ者たちの物語 ヴェアリアスストーリー

きみゆぅ

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第一章 セイシュの民が翔ける黎明の空

86 スポンジのようなスカスカしたやつ

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 その箱をパズルを解くように側面を少し押してから、角を小さく引っ張って外し、再び側面を左右に別々に動かしてから、少し強引にちからを入れると、6枚の板にバラバラになる。

 その箱の中から、全部で10個、金と銀の布袋に包まれた、いかにも宝物と思われる物が姿を現す。

「好きなのを一つずつ選びな。」

 フォーンの合図で男の子と女の子がその布袋から取り出すと、手のひら程度の大きさの剣や刀、杖、槍、短剣などの武器が現れた。

 武器と言っても、その形をしているだけで、その刃に手を触れても切れはしない、まがい物に見えた。
 色は薄い灰色の透明だが、スポンジのようなスカスカした感触であり、軽く、ふにゃふにゃ柔らかかった。

「これなに?」

 サチが弓の型を手で持ち、丸めたり、引っぱったりしながらフォーンに尋ねた。粘土みたいに簡単に形を変えることができる。

「名前は知らん。説明するより試した方が早い。」

 フォーンが合図をすると、男の子と女の子が不思議な透明な石を持ち、ゴニョゴニョブツブツわからない言葉で祈り始めた。

 すると不思議な雰囲気が周囲を包む。背中がモゾモゾして気持ち悪い。なんかちからが入らないような気がする。

「今、原石の気配を消す結界を作り出した。この結界の中で原石を扱っても外ではわからぬ。」

 フォーンはリヴィエラにまず、この中の武器を一つ選ばせた。

 リヴィエラは訳が分からずに戸惑いながらも、好んで使うことが多い短剣のかたちを選んだ。

「大地の原石に自分の血を与え、短剣と合わせよ。」

「・・・はっ?」

 周囲は驚きを隠せない。が、冷たいフォーンの視線を感じたリヴィエラは、覚悟を決め、自分の腰にある短剣を取り出すと、左手の甲に傷を付け、血を流した。思わずサチは目を背ける。

 左手の甲から流れ落ちた赤い血が大地の原石に滴り落ち、周囲に血の独特な臭いが充満する。

 床に血が流れ落ちる。フォーンが指で血が大量についた大地の原石を指し、それをフォーンが与えた短剣のスポンジのような透明な物体にあわせるように指示を出した。

 リヴィエラは素直に血の付着した大地の原石をその短剣の型に接し合わせた。

 すると、大地の原石から緑色の光が一瞬あふれ出し周囲を包むと、リヴィエラの手には、緑色の一振りの短剣が握られていた。大地の原石を透明な短剣の型と融合させというのが感覚的に理解できた。

 手に吸い付くような感触、また大変軽く、切れ味も良さそうに見えた。その緑色の短剣にちからを込めると、小さく緑色に光り、床の土が渦を巻いた。

「すごい・・・」

 思わずつぶやくと、その緑の短剣をブンブンと振り回す。

「こういう事だ。この武器の型と原石を融合させることにより、その血を与えた者専用の武器を生み出すことが出来る。そしてこれは普段通り原石を扱うようにちからを使用できる優れものだ。当然武器としても使用できる。」

 リヴィエラは持っていた緑の短剣にちからを込め、持っていた木の葉にそのちからを注ぎ込んだ。すると、木の葉が鋭く、堅く変形し、葉の剣となった。

 そして最も驚いたのが、原石を使用するときに発せられる独特な原石の気配がリヴィエラの持っていた短剣からはそれが起きなかった。

 ということは、原石のちからをいつでも使い放題と言うことだろうか。封印の布が用無しだ。フォーン以外の皆が驚いた。

 リヴィエラはその大地の原石と短剣の型の融合したものを大地の短剣と名付けた。


「次は誰だ?」

 フォーンが面倒くさそうに、サチとリザに交互に催促する視線を送る。
 するとサチが人差し指を口にくわえながら、自分がいつも使う弓の型を選択すると、それをフォーンへ差し出した。

「これがいい。」

 サチは、水の原石を取り出すと、以前毒蠍に刺されてできた傷のカサブタを取り、そこから血を流し、水の原石へ傷口をすりつけて血を付け、弓の型と融合させようとした。

 だが、何も反応がない。サチが首を傾ける。

「血が足りないんじゃない?」

 リザがサチにささやく。サチがリザに泣きそうな顔をする。

「十分痛いんですけど・・・ダメ?」

 友達にでも話すようにサチがフォーンへ確認する。フォーンは何も答えず、ただ、眠るように目を閉じていた。
 顔いっぱいに嫌な表情を浮かべてから諦めると、サチも腰に付けた小振りのナイフを取り出して、リヴィエラと同じく左手の甲に近づけた。

「痛いよね?」

 リヴィエラへ確認するサチ。リヴィエラも何も答えず、ただ見守るだけであった。

「ひーん。」

 嫌々顔をするサチの横でリザが光の原石を取り出し、傷を治すという合図をサチに出す。

 少し安心したサチは、目をつぶり、思いっきりにズバッとナイフを左手の甲に突き刺した。

 そしてその血を水の原石へ付着させ、弓の型へと近づけ、接しさせた。

「ぎゃあっっ」

 まばゆいほどの青い光が周囲を包んだかと思うと、透き通るような、氷の結晶のような青色をした弓が、サチの手に握られていた。それはとても軽く、サチの手に吸い付くように握られていた。

「水の原石なくなっちゃった。」

 その横で、リザが想像以上にザクっといったサチの左手の傷を光の原石で慌てて癒している。

 本人は気にしていないが、リヴィエラの倍以上の出血量でリザのほうが慌てている。

 サチは水の原石と弓の型の融合した物を水の弓と名付けた。
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