三つの民と神のちからを継ぐ者たちの物語 ヴェアリアスストーリー

きみゆぅ

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第一章 セイシュの民が翔ける黎明の空

88 はちの化け物の縄張り

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 そして昼が過ぎたころ、ようやく目を覚ますと、男の子と女の子が用意してくれた食事をいただき、急いで港を目指した。

フォーンはどこかへ出かけてしまったらしい。

リヴィエラ達の出立を男の子と女の子が見送った。


以前、リヴィエラが手紙の翻訳を頼んだ時は、この片づけや掃除で10日拘束されたそうだ。
また、もんちきがとある情報を求めた際は、遊び相手になれと、約30日間ここで暮らしたという。

レグランドフィア王もここで20日ぶっ続けで一人で掃除をしたこともあるそうだ。

だが、ここで学んだ事は大変多く、現在も役立っているらしい。当然、ここでこんな奉仕ができる者は特別扱いであり限られている。

ファルスもウィレムも片づけをした経験があるという。

今回、数時間で済んだことは奇跡に近いと言っていた。

「あの子供たちすごいよね。ちっちゃいのに私より全然頭いいんだよ。」

「当然だ。」

感心するサチに冷たく答えるリヴィエラ。

それにリザがうなずいて笑った。

「私よりも比べ物にならない程、知識が豊富ですからね。」

リザも女の子と少し会話をしただけで、自分でも知らない情報や、文学、歴史などを大量に知っていることを理解していた。

「まあ、あんなにいろいろな本に囲まれてたらそうなるのかもね。」

サチが納得した。

改めて、フォーンはすごい人だとサチは思った。

リザは是非とも今度、その何日も泊まっての経験をしたいと心から思った。

周囲に何もないところに住む理由はわからないが、今後も、深く接していきたいと思った。

そんなこんなしながら、シフィルが待つであろう港へ向け、急いで進んでいった。


草原を順調に馬は駆ける。

太陽が真上に昇ったころに出発をしてから、何度か馬を休ませるための休憩を取り、日が落ち始めるころには目的地
付近まで到達していた。

レグランドフィアの港への案内板が立ち、あとわずかで港へと着くというと距離である。

「迷わず到着できそうですね。」

リザが地図を見ながら方向を確かめる。その方向は案内板が示す方向と同じで安心する。

「ん?どうした?」

サチが急に足を止めたサチーンの頭を撫でる。サチーンがすこし怯えたような表情でその場で首をブンブンと振って小さく吠える。

「休憩するか。もうすぐ到着だから焦る必要も無いだろう。」

手綱を大木に結んで木陰に馬を休ませながら、リヴィエラ達が周囲を警戒して見回るが特に怪しいところはない。
集まってその場に座り休んだ。

「考えすぎか。」

リヴィエラが持っていた水筒の水をグビグビと飲むと、小さく安心した息を吐く。が、ふと動きを止めて耳を澄ました。

どこからか羽音が聞こえた。


周囲を確認したが木々が覆い茂っており、視界は悪い。羽音は複数、囲まれているようにも思えた。

「上だ!蜂の化け物だ!」

リヴィエラの声を聞いて空を見上げると、こぶしの大きさ、もんちきと同じ大きさぐらいの蜂が群れでこちらを狙いらせん状に動く。

数は20匹ぐらいだろうか。普通の蜂と比べて異常に大きい。その割に動きは早く、その黄色と黒色のからだの色は恐怖を増幅させる。

「蜂の縄張りに入りこんじゃったかね。」

サチが走り怯える馬をなんとか制御しようとするが、ばたばたと暴れて言うことを聞かない。

「ゆっくり立ち去りましょう。音を立てずに、動きを最小限で。」

リザが馬のいる方向ゆっくりと身構えながら動くと、その巨大蜂がブンブンと羽音を立てて追跡して警戒する動きをする。

リザはぎゅっと全身に力を入れて、動きを止めてその様子をうかがった。

「サチはそのまま馬3頭と一緒に逃げてくれ、リザはその武器を振り回し、蜂がここまで近寄れないようにしてくれ!隙を見て逃げよう。」

リヴィエラが叫ぶと同時に、サチは素早くサチーンの背に乗り、リヴィエラとリザの馬の手綱を引いてその場を離れた。

もんちきもサチと一緒に馬に乗り、この場を離れる。

リザは光の円刃にちからを注ぎ込んで光の糸を発現させ、それを持って光の円刃をリザを中心として円形に振り回し、上空の蜂を威嚇した。

リヴィエラは周囲を見回して木の葉を大量に拾い集めると、それに大地の短剣を近づけて硬い刃として、上方へ一気に放り投げた。

大地のちからが注ぎ込まれた葉の刃は勢いよく飛んでいき、10匹を撃退。それを見たリザも光の円刃を空高く放り投げ、3匹を撃退した。残りの7匹は散らばり、リヴィエラとリザを取り囲む。

リヴィエラとリザは背中合わせになり、周囲を威嚇しながら武器を身構えるが、蜂は的を絞らせないように小刻みに動き、ときどき針で刺すような動作を見せた。しばらくお互いのけん制が続く。

蜂の針は鋭く、長さも蜂の体長と同じぐらいある。また、その針からは毒だろうか、液体が滴り落ちている。

「リザ!逃げるぞ!」

すばやくリヴィエラが地面から木の葉を広い、大地の短剣でちからを注いだ瞬間、待ちかまえたように、上空を飛ぶ7匹が一斉に急降下して二人へと針を向け、突っ込んだ。

「きゃぁ!」

地面に足を取られて転びそうになるリザを横目で確認しながら、リヴィエラは、木の葉を固めた葉の刃を投げて自分の前方の2匹を撃退し、リザも片膝をついた状態で光の円刃で2匹撃退したが残りの3匹がリザを襲う。

「危ない!」

その瞬間、リヴィエラはリザの前に立ち大地の短剣で1匹突き刺したが、左腕と脇腹にその針が突き刺さる。

巨大な蜂は自分の体長と同じ長さの針を、器用にリヴィエラへ残して折り切り離すと、ふらふらしながら上空へ上がる。

さらに再びどこからか5匹が合流し、7匹となった。
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