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第一章 セイシュの民が翔ける黎明の空
90 レグランドフィアの港 合流と治療
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その隙にサチは馬で駆けながらリザへ近づき、リザが乗ってきた馬を上手に近づける。
リザはリヴィエラの肩を支えて立ち待ち構えると、リヴィエラを抱えて馬に乗せ、そのままリザも同じ馬に力を振り絞り飛び乗った。
空いたリザの馬の上では、もんちきが手綱を握って全力で操馬している。
馬上では、リザとリヴィエラが同じ馬の上で振り落とされないように必死にしがみついている。
先頭を駆けるサチは、案内板にあるレグランドフィアの港へと方向を確認し、必死に駆けた。
それから、どれくらい進んだのだろうか、海が近いのだろうか、塩の匂いが立ち込めてくる。
そして再び『この先レグランドフィアの港』という案内板が現れた。
それを頼りに一心不乱に進むと、ようやく家が何軒か立ち並ぶ、集落へたどり着いた。
そこは人の気配はなく、荒れ、古びて、廃墟の様だった。看板にレグランドフィアの港と書いてあるため、目的地はここで間違いないのであろう。想像とは違うなんか寂れた感じ。
早速サチは、人を探しに村へ入り込み、大声で人を呼んだ。
だが、何の反応も無い。
サチは村の中心部と思われる場所にリヴィエラとリザを下ろし、もんちきに薬草を渡して処置してもらい、自分はサチーンに乗って村を回って医者を探した。
「誰かいませんか~!!」
サチがゆっくりと数少ない建屋の中を覗き込みながら馬を走らせると、その港の奥深くでようやく人を見つける。
そこには、見慣れた人物と、ここの住民だろうか、合わせて6人が集まっていた。
整備された港の停船所で海面に棒を突き刺したり、網で何かをすくったりしている。
その付近に、なぜか海ではなく陸地に立派な帆船が一艘停泊している。
この錆びついた港には似つかわしくない豪華な立派な船である。
ゴム製のタイヤが4か所ついた木製の巨大な台車に帆船が乗せられて固定されている。
船が停泊している場所はどうやってそこへ運んだのか考え込むほどの高台で、海面までかなり急な坂道になっており、帆船を固定しているロープが切れてしまったら、そのまま海に帆船が坂道を滑り下るのではないかと思えた。
白い大きな帆が特徴的であり、帆を弛ませた状態で風を受けてたなびいていた。
その付近では、薪にでもするのだろうか、切り倒された木が山積みにされている。
「おーい!」
急いでシフィル達が集まっている場所へサチが駆け寄る。
それに気づいたシフィルはうれしそうな顔をした。
「サチ!ようやく会えた!リヴィエラたちもみんな一緒か?」
馬に乗ったまま、状況を簡単に説明したサチは、シフィルと他5名を連れて村の中心に急ぐ。
5人はこのレグランドフィアの港を守る護衛兵とのことで、ここに現在駐在している全員である。
護衛兵といっても、鎧や盾は装着しておらず、普段着で釣竿を担いでいた。自由そうでうらやましいと思った。
腰に下げた剣にはレグランドフィアの紋章がある。
「リヴィエラ様!」
護衛兵の一人が叫ぶと、もんちきがその大声にびくりと全身を揺らした。サチが状況を大急ぎで説明する。
「軍隊蜂の毒ですか。すぐに解毒しないと命にかかわります!」
他の一人も叫ぶ。
医療担当の護衛兵が、急いで近くの建屋の中に運び込む様に指示をすると、複数の木箱に詰められた乾燥した薬草をいくつか選択して混合し、細かくすりつぶして蜂に刺された傷口へ押し付けるように貼り合わした。
それから、蜂の針に指された傷口の処置をしたり、目の動きをじっと観察したり、心音を数えたりと診察を進めた。
「ふむ。しばらく休めば大丈夫でしょう。不思議ですが、そこまで症状としては悪くありません。」
リザは意識もしっかりしており、歩くこともできたが、疲れた表情で椅子の背もたれを抱くように体重をかけて休む。
リヴィエラは脇腹への傷が深く、毒が奥まで浸透しており、薬草やこっそりと使用したリザの光のちからの癒しでもすぐに回復はできず、村の療養所で回復に専念することになった。
両肩を抱えられて部屋へ移動させると、リヴィエラは倒れ込む様にそのまま眠りについた。
護衛兵が薬草を細かくすりつぶして傷口に塗り、傷口付近をわずかに薄く刃物で削っての解毒を繰り返し行っている。
他の者は、兵士の生活している建屋に各々一室を準備され、ようやく落ち着いた。
リザは受け取った薬草を左足と左腕に自分ですりこみながら、光のちからは使わずに解毒していた。少し痺れるように痛みが和らぐ。
それからしばらく休んで、食事が準備されると、再びリヴィエラ以外の全員が集まった。
リザはリヴィエラの肩を支えて立ち待ち構えると、リヴィエラを抱えて馬に乗せ、そのままリザも同じ馬に力を振り絞り飛び乗った。
空いたリザの馬の上では、もんちきが手綱を握って全力で操馬している。
馬上では、リザとリヴィエラが同じ馬の上で振り落とされないように必死にしがみついている。
先頭を駆けるサチは、案内板にあるレグランドフィアの港へと方向を確認し、必死に駆けた。
それから、どれくらい進んだのだろうか、海が近いのだろうか、塩の匂いが立ち込めてくる。
そして再び『この先レグランドフィアの港』という案内板が現れた。
それを頼りに一心不乱に進むと、ようやく家が何軒か立ち並ぶ、集落へたどり着いた。
そこは人の気配はなく、荒れ、古びて、廃墟の様だった。看板にレグランドフィアの港と書いてあるため、目的地はここで間違いないのであろう。想像とは違うなんか寂れた感じ。
早速サチは、人を探しに村へ入り込み、大声で人を呼んだ。
だが、何の反応も無い。
サチは村の中心部と思われる場所にリヴィエラとリザを下ろし、もんちきに薬草を渡して処置してもらい、自分はサチーンに乗って村を回って医者を探した。
「誰かいませんか~!!」
サチがゆっくりと数少ない建屋の中を覗き込みながら馬を走らせると、その港の奥深くでようやく人を見つける。
そこには、見慣れた人物と、ここの住民だろうか、合わせて6人が集まっていた。
整備された港の停船所で海面に棒を突き刺したり、網で何かをすくったりしている。
その付近に、なぜか海ではなく陸地に立派な帆船が一艘停泊している。
この錆びついた港には似つかわしくない豪華な立派な船である。
ゴム製のタイヤが4か所ついた木製の巨大な台車に帆船が乗せられて固定されている。
船が停泊している場所はどうやってそこへ運んだのか考え込むほどの高台で、海面までかなり急な坂道になっており、帆船を固定しているロープが切れてしまったら、そのまま海に帆船が坂道を滑り下るのではないかと思えた。
白い大きな帆が特徴的であり、帆を弛ませた状態で風を受けてたなびいていた。
その付近では、薪にでもするのだろうか、切り倒された木が山積みにされている。
「おーい!」
急いでシフィル達が集まっている場所へサチが駆け寄る。
それに気づいたシフィルはうれしそうな顔をした。
「サチ!ようやく会えた!リヴィエラたちもみんな一緒か?」
馬に乗ったまま、状況を簡単に説明したサチは、シフィルと他5名を連れて村の中心に急ぐ。
5人はこのレグランドフィアの港を守る護衛兵とのことで、ここに現在駐在している全員である。
護衛兵といっても、鎧や盾は装着しておらず、普段着で釣竿を担いでいた。自由そうでうらやましいと思った。
腰に下げた剣にはレグランドフィアの紋章がある。
「リヴィエラ様!」
護衛兵の一人が叫ぶと、もんちきがその大声にびくりと全身を揺らした。サチが状況を大急ぎで説明する。
「軍隊蜂の毒ですか。すぐに解毒しないと命にかかわります!」
他の一人も叫ぶ。
医療担当の護衛兵が、急いで近くの建屋の中に運び込む様に指示をすると、複数の木箱に詰められた乾燥した薬草をいくつか選択して混合し、細かくすりつぶして蜂に刺された傷口へ押し付けるように貼り合わした。
それから、蜂の針に指された傷口の処置をしたり、目の動きをじっと観察したり、心音を数えたりと診察を進めた。
「ふむ。しばらく休めば大丈夫でしょう。不思議ですが、そこまで症状としては悪くありません。」
リザは意識もしっかりしており、歩くこともできたが、疲れた表情で椅子の背もたれを抱くように体重をかけて休む。
リヴィエラは脇腹への傷が深く、毒が奥まで浸透しており、薬草やこっそりと使用したリザの光のちからの癒しでもすぐに回復はできず、村の療養所で回復に専念することになった。
両肩を抱えられて部屋へ移動させると、リヴィエラは倒れ込む様にそのまま眠りについた。
護衛兵が薬草を細かくすりつぶして傷口に塗り、傷口付近をわずかに薄く刃物で削っての解毒を繰り返し行っている。
他の者は、兵士の生活している建屋に各々一室を準備され、ようやく落ち着いた。
リザは受け取った薬草を左足と左腕に自分ですりこみながら、光のちからは使わずに解毒していた。少し痺れるように痛みが和らぐ。
それからしばらく休んで、食事が準備されると、再びリヴィエラ以外の全員が集まった。
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