三つの民と神のちからを継ぐ者たちの物語 ヴェアリアスストーリー

きみゆぅ

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第一章 セイシュの民が翔ける黎明の空

97 平穏な船旅

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 シフィルとリザが早速操舵を始めていた。

 舵輪を慣れない手つきで握るシフィルに、リヴィエラから教わった技術をリザは丁寧に教えた。

「うん。意外と簡単だね。」

 シフィルはすべてをわかったかのように、操舵を進めた。

「実際は、コンパスを確認して航路が正しいかを確認する忍耐力が大切ですよ。」

 リザが笑う。
 船に揺られながら、くだらない話をしていた。

 よく考えれば、シフィルはリザとあまり話したことが無く、話題に困る。
 それでも、ぎこちない会話から、なんとか気まずい空気を乗り越えていく。

「そうだったんだ。」

 シフィルが火の村ファルスでの出来事を話し、リザは過去の旅の話などをしていた。どうしてもお互い気を遣う。
 少し打ち解けたところで、シフィルが真顔になる。

「あの、もし、何か知っていたら教えて欲しいんだけど。」

「はい。」

 急な雰囲気の変化に戸惑ったが、真剣な顔に応えるようにリザも真剣な顔になった。

「カリクティスの一族って知ってる?」

 困ったような顔をするリザ。その顔から、何かを知っていると確信したシフィル。

「自分がカリクティスの一族だと、火の一族じゃないっていわれてずっと気になっていたんだ。どんな些細なことでもいい、教えてほしい。リザは知識豊富だから!」

 シフィルの懇願するまなざしと勢いに押されて、リザが重い口を開いた。

「カリクティスの一族は謎の一族です。文献でもほとんど記録がなく、絶滅種としての記載がされています。ただ、一般論として挙げられるのがカリクティスの一族はセイシュの特殊なちからを扱うことができた。そしてそのちからを使う能力を消すことができた、そしてセイシュによって滅ぼされたというのが昔の記述であります。ただし、それらも良くわかっていません。本当にわからないことが多いのです。誰も見たことがないので。」

 リザはシフィルの様子を気にしながら舵をとり、進路を修正しながら真南に進んだ。

 シフィルがさらに踏み込んだ質問をするが、リザはただ首を振るだけだった。本当にわからないのだろう。

 それからなにげなく話題を代え、またリザと話しながら操舵を交代で進めた。

 船は正確に真南へと進み、やがて交代の時間が来た。



「交代だよ~ん。」

 元気な声でサチが操舵場へ現れた。その後ろにリヴィエラがすっと立っている。

 シフィルとリザに笑みが出る。

「案外しんどいぞ」

 シフィルがサチに伝える。サチは楽しみにしていたのか、わくわくした様子をからだで表し、早速操舵を始めた。

 シフィルとリザは、はじめての作業に疲れたか、それぞれすぐに個室に戻り、からだを休めた。

「で、どうやるの?」

 頭を傾げるサチの後ろに立ち、リヴィエラは操舵方法を教えた。
 地図の見方やコンパスの確認の仕方等、海図の書き方、必要なことを細かく丁寧に説明すると、サチはすぐにそれらを理解して操舵を始めた。

 次第にサチは調子に乗り、舵を振り回しながら、航路に沿って進む。

 リヴィエラは進む方向を海図に示しながらサチを確認し、横の椅子で本を読んでいる。

「気持ちいい!!!」

 サチが周囲を見渡しながら進路に沿って船を進める。既にリヴィエラの存在自体忘れたように船の操作に熱中していた。

 リヴィエラからの交代の申し入れも断り、ずっと舵を握ったまま時が過ぎた。やがて暗くなり、周囲が闇に包まれる。

 ここから先は特に暗礁に乗り上げたりしないように、前方の注意が必要となる。

 夜食はリザが作り、操舵場で集まって全員一緒に夜風にあたりながら食べた。

 リザは料理も上手で、手先が器用だとシフィルは関心するばかりであった。

 次の食事当番であるサチは料理のプレッシャーを感じながら、何を作ろうか、リザがどうやって作ったのか考えながら食べていた。

 ここでまたシフィル・リザ組が操舵当番になり、交代する。

 そうして、何事も無く夜が深け、海路二日目の朝が来た。
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