101 / 104
第一章 セイシュの民が翔ける黎明の空
101 チャンスは一回だけ!!
しおりを挟む
「さて、ここからが正念場だ。一瞬だから、気を抜くな。」
そうしている間に周囲は完全に暗くなり、監視艇との連絡をする時刻になる。
船の明かりをすべて消すと、意外と星空の明るさで周りがうっすらと見えることに気付く。
前後左右と上空がすべて星に囲まれている。妨げる物の無い星光は、気持ち悪いぐらいに明るい。痛いぐらいに眩しい。
息をのむ。波音がうるさい。星の光を監視艇と間違えてどうしてもビクビクしてしまう。
「じゃあ、チャンスは一回だからな。頼むぞ!」
リヴィエラは棒の先に火薬をつけた花火を取り出して、船に装着した。そして火を準備する。
そして大きな声でサチを呼び戻す。
サチは白龍に肉や野菜などいろいろ与えていたらしく、白龍はおとなしく口をモグモグして、笑っている。
「サチゴンたくさん食べた。なんでも食べるよ。すごいね。」
すでに白龍にサチゴンという名前をつけていた。いろんなものと仲良くなるサチの才能は皆が認めているが、今回は行き過ぎではないかとも感じた。
「よし、周囲を確認できるように、四方に散らばろう。これから花火を打ち上げる。それからしばらくして一度だけ
監視艇からの合図で点灯があるはずだ。その一瞬を見逃すな!」
そして、四方に散り、リヴィエラの合図を待った。
サチもサチゴンと共にじっと暗闇を見つめる。星の光が邪魔なぐらいすごく眩しく感じる。
吸い込まれそうなぐらいに星が光り輝いている。正直怖い。
「行くぞ!」
リヴィエラの声が響くと、火打石の火花が乾燥した草に引火して、それが導火線を伝って一筋の閃光を発しながら花火を空へと打ち上げる。
そして、激しい爆音が響く。
それに驚いたか、サチゴンが何か強く大きく反応し、暴れ、おびえたが、強引にサチが抱きしめ、落ち着かせる。
素直にサチゴンは落ち着き、何も無かったように、サチを真似てきょろきょろして周囲を確認している。
花火の閃光が消え、辺りがまた闇に包まれる。そして静寂の時。
静かな暗闇の中で、波音だけが聞こえる。
「光った!こっちの方向です!近いです!」
リザが指差した方向をリヴィエラはコンパスで確認すると、錨を上げて、素早く操舵場へと戻って舵をとった。
リヴィエラ以外は甲板からリザの示した方向に集まり、監視艇との接触のため、周囲をくまなく探索する。
サチゴンも同じようにサチに抱きつきながら、きょろきょろと見ている。
船はゆっくりと確実にリザの指差した方向へ近づく。
「あそこ!」
舟の後方にリザが弱い光を見つけた。それは大変淡く、近づいても目を凝らさなければわからない。
リザは操舵場まで急ぎ、リヴィエラへ告げる。
方向を微調整してその方向へ向かうと、そのことに気づいたのか、その淡い光消えた。
「よし、少し待とう。あっちから接触してくるはずだ。」
リヴィエラは、その場で船を停船させて静かに待った。
船の後方に全員が集まる。
強い緊張感。
念のため全員が武器を構えて、万が一に備える。
「お名前と所属を。」
暗闇から男の声が聞こえた。
「レグランドフィアのリヴィエラだ。」
「合言葉を。」
「合言葉・・・?」
リヴィエラが言葉に詰まり、黙り込む。
少しの沈黙。
「確認しました。そちらに向かうので受け入れの準備をお願いします。」
意味が分からないまま、リヴィエラがその声の方向に走り近寄ると、船に装着されていた他の船との移動用のはしごを持ち、声の方向へ投げ渡した。
一艘の釣り船のような小さい船が、真横に接する距離で停船している。
そのはしごを手繰り、一人の男が飛び乗ってきた。
声の感じよりも、思ったよりも若い、リヴィエラ達と同年齢ぐらいに見える男。
暗闇に紛れるためにだろうか、全身が黒ずくめの衣服を纏っている。
「リヴィエラ様、お疲れ様でした。」
男は真剣な顔でリヴィエラに肩ひざをついて形式的な挨拶をした。
リヴィエラは少し警戒する姿勢で無表情のまま軽く頭を下げる。が、その男の顔を見て、どこか安心した表情浮かべる。
「無事の到着、何よりでございます。」
「そうか、城を離れるとの挨拶があったが、このような役割についていたか。」
「はい。自分の興味をいかせる業務として、ショカ様に紹介を受けました。」
「元気そうでよかった。」
シフィルがその船を繋ぐ鎖をこの帆船の後ろに結び付けると、その男が深く頭を下げて礼をする。明からに知り合い
だろう。シフィル達も息を吐いてちからを抜いた。
「リヴィエラ様が直々にいらっしゃると聞いて驚きました。このような危険な旅路、よく、選ばれました。」
再び頭を下げる男。今度はシフィル達もその男に向かい、頭を下げた。
「急ぎましょう。この海域に他の船も確認されています。」
「そうか、では、結界について教えてくれ。」
リヴィエラが急かすように問いかける。男はかしこまって答えた。
「はい。結界の割れ目と言われる場所はここからすぐ先にあります。そこから結界外の世界、外界へ行けます。そし
てまっすぐ真南へ進んでください。そうすると崖の麓にたどり着きます。そこで次の案内の者が待っています。そこの崖から外界の大陸へ入り、ユングの監視所へ行くという手はずになります。」
「結界の割れ目の大きさは?目に見えるのか?」
「大きさは把握しておりません。視認することもできません。ただし、私が何度も通過した経験からですが、小さいものではなく、かなりの距離を持っていると認識しています。」
「そうか。なら、大丈夫か。」
「はい。正直、結界を通過することは心配ありません。私は、今日外界から来ましたので。問題は、外界の大陸に入った後の拠点本陣からの連絡が無いことです。我らは連絡係としてこの海域から不用意に動くことができず、詳細が確認できないのです。」
「その役目は任せてもらおう。」
「よろしくお願いいたします。それでは、さっそく先導します。私は、結界を抜ける前に離れますので、そのまま、
まっすぐ進んでください。」
「了解した。」
男は深く一礼をして、飛び跳ねるように外に連なっている船に移ると、シフィルに結んだ鎖を解くように合図をする。
そして、船に淡い青色の光をつけると、ゆっくりとまっすぐに進み、シフィルたちの船を導いた。
リザが舵輪を取り、舟の先端で方向を指示するリヴィエラに従い、丁寧に操舵する。
そうしている間に周囲は完全に暗くなり、監視艇との連絡をする時刻になる。
船の明かりをすべて消すと、意外と星空の明るさで周りがうっすらと見えることに気付く。
前後左右と上空がすべて星に囲まれている。妨げる物の無い星光は、気持ち悪いぐらいに明るい。痛いぐらいに眩しい。
息をのむ。波音がうるさい。星の光を監視艇と間違えてどうしてもビクビクしてしまう。
「じゃあ、チャンスは一回だからな。頼むぞ!」
リヴィエラは棒の先に火薬をつけた花火を取り出して、船に装着した。そして火を準備する。
そして大きな声でサチを呼び戻す。
サチは白龍に肉や野菜などいろいろ与えていたらしく、白龍はおとなしく口をモグモグして、笑っている。
「サチゴンたくさん食べた。なんでも食べるよ。すごいね。」
すでに白龍にサチゴンという名前をつけていた。いろんなものと仲良くなるサチの才能は皆が認めているが、今回は行き過ぎではないかとも感じた。
「よし、周囲を確認できるように、四方に散らばろう。これから花火を打ち上げる。それからしばらくして一度だけ
監視艇からの合図で点灯があるはずだ。その一瞬を見逃すな!」
そして、四方に散り、リヴィエラの合図を待った。
サチもサチゴンと共にじっと暗闇を見つめる。星の光が邪魔なぐらいすごく眩しく感じる。
吸い込まれそうなぐらいに星が光り輝いている。正直怖い。
「行くぞ!」
リヴィエラの声が響くと、火打石の火花が乾燥した草に引火して、それが導火線を伝って一筋の閃光を発しながら花火を空へと打ち上げる。
そして、激しい爆音が響く。
それに驚いたか、サチゴンが何か強く大きく反応し、暴れ、おびえたが、強引にサチが抱きしめ、落ち着かせる。
素直にサチゴンは落ち着き、何も無かったように、サチを真似てきょろきょろして周囲を確認している。
花火の閃光が消え、辺りがまた闇に包まれる。そして静寂の時。
静かな暗闇の中で、波音だけが聞こえる。
「光った!こっちの方向です!近いです!」
リザが指差した方向をリヴィエラはコンパスで確認すると、錨を上げて、素早く操舵場へと戻って舵をとった。
リヴィエラ以外は甲板からリザの示した方向に集まり、監視艇との接触のため、周囲をくまなく探索する。
サチゴンも同じようにサチに抱きつきながら、きょろきょろと見ている。
船はゆっくりと確実にリザの指差した方向へ近づく。
「あそこ!」
舟の後方にリザが弱い光を見つけた。それは大変淡く、近づいても目を凝らさなければわからない。
リザは操舵場まで急ぎ、リヴィエラへ告げる。
方向を微調整してその方向へ向かうと、そのことに気づいたのか、その淡い光消えた。
「よし、少し待とう。あっちから接触してくるはずだ。」
リヴィエラは、その場で船を停船させて静かに待った。
船の後方に全員が集まる。
強い緊張感。
念のため全員が武器を構えて、万が一に備える。
「お名前と所属を。」
暗闇から男の声が聞こえた。
「レグランドフィアのリヴィエラだ。」
「合言葉を。」
「合言葉・・・?」
リヴィエラが言葉に詰まり、黙り込む。
少しの沈黙。
「確認しました。そちらに向かうので受け入れの準備をお願いします。」
意味が分からないまま、リヴィエラがその声の方向に走り近寄ると、船に装着されていた他の船との移動用のはしごを持ち、声の方向へ投げ渡した。
一艘の釣り船のような小さい船が、真横に接する距離で停船している。
そのはしごを手繰り、一人の男が飛び乗ってきた。
声の感じよりも、思ったよりも若い、リヴィエラ達と同年齢ぐらいに見える男。
暗闇に紛れるためにだろうか、全身が黒ずくめの衣服を纏っている。
「リヴィエラ様、お疲れ様でした。」
男は真剣な顔でリヴィエラに肩ひざをついて形式的な挨拶をした。
リヴィエラは少し警戒する姿勢で無表情のまま軽く頭を下げる。が、その男の顔を見て、どこか安心した表情浮かべる。
「無事の到着、何よりでございます。」
「そうか、城を離れるとの挨拶があったが、このような役割についていたか。」
「はい。自分の興味をいかせる業務として、ショカ様に紹介を受けました。」
「元気そうでよかった。」
シフィルがその船を繋ぐ鎖をこの帆船の後ろに結び付けると、その男が深く頭を下げて礼をする。明からに知り合い
だろう。シフィル達も息を吐いてちからを抜いた。
「リヴィエラ様が直々にいらっしゃると聞いて驚きました。このような危険な旅路、よく、選ばれました。」
再び頭を下げる男。今度はシフィル達もその男に向かい、頭を下げた。
「急ぎましょう。この海域に他の船も確認されています。」
「そうか、では、結界について教えてくれ。」
リヴィエラが急かすように問いかける。男はかしこまって答えた。
「はい。結界の割れ目と言われる場所はここからすぐ先にあります。そこから結界外の世界、外界へ行けます。そし
てまっすぐ真南へ進んでください。そうすると崖の麓にたどり着きます。そこで次の案内の者が待っています。そこの崖から外界の大陸へ入り、ユングの監視所へ行くという手はずになります。」
「結界の割れ目の大きさは?目に見えるのか?」
「大きさは把握しておりません。視認することもできません。ただし、私が何度も通過した経験からですが、小さいものではなく、かなりの距離を持っていると認識しています。」
「そうか。なら、大丈夫か。」
「はい。正直、結界を通過することは心配ありません。私は、今日外界から来ましたので。問題は、外界の大陸に入った後の拠点本陣からの連絡が無いことです。我らは連絡係としてこの海域から不用意に動くことができず、詳細が確認できないのです。」
「その役目は任せてもらおう。」
「よろしくお願いいたします。それでは、さっそく先導します。私は、結界を抜ける前に離れますので、そのまま、
まっすぐ進んでください。」
「了解した。」
男は深く一礼をして、飛び跳ねるように外に連なっている船に移ると、シフィルに結んだ鎖を解くように合図をする。
そして、船に淡い青色の光をつけると、ゆっくりとまっすぐに進み、シフィルたちの船を導いた。
リザが舵輪を取り、舟の先端で方向を指示するリヴィエラに従い、丁寧に操舵する。
21
あなたにおすすめの小説
炎光に誘われし少年と竜の蒼天の約束 ヴェアリアスストーリー番外編
きみゆぅ
ファンタジー
かつて世界を滅ぼしかけたセイシュとイシュの争い。
その痕跡は今もなお、荒野の奥深くに眠り続けていた。
少年が掘り起こした“結晶”――それは国を揺るがすほどの力を秘めた禁断の秘宝「火の原石」。
平穏だった村に突如訪れる陰謀と争奪戦。
白竜と少年は未来を掴むのか、それとも再び戦乱の炎を呼び覚ますのか?
本作は、本編と並行して紡がれるもう一つの物語を描く番外編。
それぞれに選ばれし者たちの運命は別々の道を進みながらも、やがて大いなる流れの中で交わり、
世界を再び揺るがす壮大な物語へと収束していく。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
『25歳独身、マイホームのクローゼットが異世界に繋がってた件』 ──†黒翼の夜叉†、異世界で伝説(レジェンド)になる!
風来坊
ファンタジー
25歳で夢のマイホームを手に入れた男・九条カケル。
185cmのモデル体型に彫刻のような顔立ち。街で振り返られるほどの美貌の持ち主――だがその正体は、重度のゲーム&コスプレオタク!
ある日、自宅のクローゼットを開けた瞬間、突如現れた異世界へのゲートに吸い込まれてしまう。
そこで彼は、伝説の職業《深淵の支配者(アビスロード)》として召喚され、
チートスキル「†黒翼召喚†」や「アビスコード」、
さらにはなぜか「女子からの好感度+999」まで付与されて――
「厨二病、発症したまま異世界転生とかマジで罰ゲームかよ!!」
オタク知識と美貌を武器に、異世界と現代を股にかけ、ハーレムと戦乱に巻き込まれながら、
†黒翼の夜叉†は“本物の伝説”になっていく!
世紀末ゾンビ世界でスローライフ【解説付】
しおじろう
SF
時は世紀末、地球は宇宙人襲来を受け
壊滅状態となった。
地球外からもたされたのは破壊のみならず、
ゾンビウイルスが蔓延した。
1人のおとぼけハク青年は、それでも
のんびり性格は変わらない、疲れようが
疲れまいがのほほん生活
いつか貴方の生きるバイブルになるかも
知れない貴重なサバイバル術!
最初から最強ぼっちの俺は英雄になります
総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
鬼死回生~酒呑童子の異世界転生冒険記~
今田勝手
ファンタジー
平安時代の日本で魑魅魍魎を束ねた最強の鬼「酒呑童子」。
大江山で討伐されたその鬼は、死の間際「人に生まれ変わりたい」と願った。
目が覚めた彼が見たのは、平安京とは全く異なる世界で……。
これは、鬼が人間を目指す更生の物語である、のかもしれない。
※本作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ネオページ」でも同時連載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる