三つの民と神のちからを継ぐ者たちの物語 ヴェアリアスストーリー

きみゆぅ

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第一章 セイシュの民が翔ける黎明の空

101 チャンスは一回だけ!!

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「さて、ここからが正念場だ。一瞬だから、気を抜くな。」

 そうしている間に周囲は完全に暗くなり、監視艇との連絡をする時刻になる。

 船の明かりをすべて消すと、意外と星空の明るさで周りがうっすらと見えることに気付く。

 前後左右と上空がすべて星に囲まれている。妨げる物の無い星光は、気持ち悪いぐらいに明るい。痛いぐらいに眩しい。

 息をのむ。波音がうるさい。星の光を監視艇と間違えてどうしてもビクビクしてしまう。

「じゃあ、チャンスは一回だからな。頼むぞ!」

 リヴィエラは棒の先に火薬をつけた花火を取り出して、船に装着した。そして火を準備する。

 そして大きな声でサチを呼び戻す。

 サチは白龍に肉や野菜などいろいろ与えていたらしく、白龍はおとなしく口をモグモグして、笑っている。

「サチゴンたくさん食べた。なんでも食べるよ。すごいね。」

 すでに白龍にサチゴンという名前をつけていた。いろんなものと仲良くなるサチの才能は皆が認めているが、今回は行き過ぎではないかとも感じた。

「よし、周囲を確認できるように、四方に散らばろう。これから花火を打ち上げる。それからしばらくして一度だけ

 監視艇からの合図で点灯があるはずだ。その一瞬を見逃すな!」

 そして、四方に散り、リヴィエラの合図を待った。

 サチもサチゴンと共にじっと暗闇を見つめる。星の光が邪魔なぐらいすごく眩しく感じる。

 吸い込まれそうなぐらいに星が光り輝いている。正直怖い。

「行くぞ!」

 リヴィエラの声が響くと、火打石の火花が乾燥した草に引火して、それが導火線を伝って一筋の閃光を発しながら花火を空へと打ち上げる。

 そして、激しい爆音が響く。

 それに驚いたか、サチゴンが何か強く大きく反応し、暴れ、おびえたが、強引にサチが抱きしめ、落ち着かせる。

 素直にサチゴンは落ち着き、何も無かったように、サチを真似てきょろきょろして周囲を確認している。

 花火の閃光が消え、辺りがまた闇に包まれる。そして静寂の時。

 静かな暗闇の中で、波音だけが聞こえる。

「光った!こっちの方向です!近いです!」

 リザが指差した方向をリヴィエラはコンパスで確認すると、錨を上げて、素早く操舵場へと戻って舵をとった。

 リヴィエラ以外は甲板からリザの示した方向に集まり、監視艇との接触のため、周囲をくまなく探索する。

 サチゴンも同じようにサチに抱きつきながら、きょろきょろと見ている。

 船はゆっくりと確実にリザの指差した方向へ近づく。

「あそこ!」

 舟の後方にリザが弱い光を見つけた。それは大変淡く、近づいても目を凝らさなければわからない。

 リザは操舵場まで急ぎ、リヴィエラへ告げる。

 方向を微調整してその方向へ向かうと、そのことに気づいたのか、その淡い光消えた。

「よし、少し待とう。あっちから接触してくるはずだ。」

 リヴィエラは、その場で船を停船させて静かに待った。


 船の後方に全員が集まる。

 強い緊張感。

 念のため全員が武器を構えて、万が一に備える。

「お名前と所属を。」

 暗闇から男の声が聞こえた。

「レグランドフィアのリヴィエラだ。」

「合言葉を。」

「合言葉・・・?」

 リヴィエラが言葉に詰まり、黙り込む。


 少しの沈黙。


「確認しました。そちらに向かうので受け入れの準備をお願いします。」

 意味が分からないまま、リヴィエラがその声の方向に走り近寄ると、船に装着されていた他の船との移動用のはしごを持ち、声の方向へ投げ渡した。

 一艘の釣り船のような小さい船が、真横に接する距離で停船している。

 そのはしごを手繰り、一人の男が飛び乗ってきた。

 声の感じよりも、思ったよりも若い、リヴィエラ達と同年齢ぐらいに見える男。

 暗闇に紛れるためにだろうか、全身が黒ずくめの衣服を纏っている。

「リヴィエラ様、お疲れ様でした。」

 男は真剣な顔でリヴィエラに肩ひざをついて形式的な挨拶をした。

 リヴィエラは少し警戒する姿勢で無表情のまま軽く頭を下げる。が、その男の顔を見て、どこか安心した表情浮かべる。

「無事の到着、何よりでございます。」

「そうか、城を離れるとの挨拶があったが、このような役割についていたか。」

「はい。自分の興味をいかせる業務として、ショカ様に紹介を受けました。」

「元気そうでよかった。」

 シフィルがその船を繋ぐ鎖をこの帆船の後ろに結び付けると、その男が深く頭を下げて礼をする。明からに知り合い
 だろう。シフィル達も息を吐いてちからを抜いた。

「リヴィエラ様が直々にいらっしゃると聞いて驚きました。このような危険な旅路、よく、選ばれました。」

 再び頭を下げる男。今度はシフィル達もその男に向かい、頭を下げた。

「急ぎましょう。この海域に他の船も確認されています。」

「そうか、では、結界について教えてくれ。」

 リヴィエラが急かすように問いかける。男はかしこまって答えた。

「はい。結界の割れ目と言われる場所はここからすぐ先にあります。そこから結界外の世界、外界へ行けます。そし
 てまっすぐ真南へ進んでください。そうすると崖の麓にたどり着きます。そこで次の案内の者が待っています。そこの崖から外界の大陸へ入り、ユングの監視所へ行くという手はずになります。」

「結界の割れ目の大きさは?目に見えるのか?」

「大きさは把握しておりません。視認することもできません。ただし、私が何度も通過した経験からですが、小さいものではなく、かなりの距離を持っていると認識しています。」

「そうか。なら、大丈夫か。」

「はい。正直、結界を通過することは心配ありません。私は、今日外界から来ましたので。問題は、外界の大陸に入った後の拠点本陣からの連絡が無いことです。我らは連絡係としてこの海域から不用意に動くことができず、詳細が確認できないのです。」

「その役目は任せてもらおう。」

「よろしくお願いいたします。それでは、さっそく先導します。私は、結界を抜ける前に離れますので、そのまま、
 まっすぐ進んでください。」

「了解した。」

 男は深く一礼をして、飛び跳ねるように外に連なっている船に移ると、シフィルに結んだ鎖を解くように合図をする。

 そして、船に淡い青色の光をつけると、ゆっくりとまっすぐに進み、シフィルたちの船を導いた。

 リザが舵輪を取り、舟の先端で方向を指示するリヴィエラに従い、丁寧に操舵する。

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