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第一章 【2人の兄編】
目が覚めたら……空腹だった
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イケメンが料理をしている光景は目の保養になった。歳が三十代前半でも見た目は二十代だしね。イケメンは健在だ。
もしも僕が料理をしてもこうはならないだろう。
だって今の僕って可愛い系の顔で髪も腰まであるからね。服装は男だけどドレスとか着たら女の子に間違えられると思う。
まあ可愛い系といっても言うほど可愛いってわけじゃないんだけどね。
「ノエル様、出来ましたが食堂で食べますか? それともご自分のお部屋で?」
白くて丸いお皿に盛り付けられた野菜と肉の炒め物。それを両手に持ち僕の前へやってきた料理長さんはどこで食べるのかと聞いてきた。
「ここで食べます! もう我慢できません!」
「でもさすがにテーブルがないと……あそこの部屋まで我慢できますか?」
そういって指差したのは厨房の奥にあるドア。
「あそこは何があるんですか?」
「休憩室ですよ。私やコックの人たちがお昼を食べるときにも使用します」
「ならすぐに行きましょう! もう限界です!」
催促すると料理長さんはにっこり笑って足早にドアへと向かう。僕はその後について行き、部屋の中へと入った。
中は中央に大きなテーブルと椅子が備えられ、壁沿いには小さな棚や着替え用のエプロンなどが置かれている。
ひとしきり観察し、一番近くの椅子へと座る。料理長さんは棚からフォークを取り出し、肉と野菜の炒め物と一緒に僕の目の前に置いた。
白くゆらゆらとした湯気と、食欲をさらに奮い立たせる匂いに喉を鳴らす。
フォークを手に取ると中央に突き刺し、すくい上げるようにしてそれを食べた。
口の中に広がる肉の旨味と、まだ若干シャキシャキとした食感の野菜がマッチしてとても美味しい。
空腹は最高のスパイスと聞いたことはよくいったものだ、と思った。
「ふふっ、美味しそうに食べてもらえて何よりです」
夢中で食べていて気がつかなかったが、いつの間にか料理長さんは僕の向かい側に座り、頬杖をつきながら僕のことを幸せそうな顔でじっと見つめていた。
「すごく美味しいです。すみません、朝早くに……そういえばこんなにはやい時間から何をしてたんですか?」
「調理のための下ごしらえを少し。あとは食材の確認と調味料の整理とかです」
「すごいですね。こんなに朝早くから」
「ええ。でもとてもやりがいがありますし、楽しいんです。何より、ノエル様のように美味しいと思ってもらえることが嬉しいです」
「僕も、クッキー作ったとき料理長さんに美味しいっていってもらえて、すごく嬉しかったです」
自分が頑張って作ったものを喜んでもらえるのって、本当にすごく嬉しいことなんだ。
「ふふっ、本当に見れば見るほどお話と聞いた人物像と違いますね」
「え? なんの話ですか?」
「失礼を承知で申し上げますが、メイドたちの間でノエル様はあまり良い印象はなかったです。それどころかその逆でした」
……あ、前世の僕か。まあそりゃメイドに向かって奴隷だ家畜だといっていればそうなるのも当たり前だ。
「でも実際に目にしてみると、話とは全くの逆でした。とてもお優しく素敵な方でした」
「そ、そんなに褒められると、恥ずかしいです……」
「そうして恥ずかしがる姿も、とても可愛らしいです」
可愛い、か。
昨日、レイヴン兄さんが僕をベッドへ押し倒した時、何度も何度も可愛いと言っていた。
それが僕に向けられているのか、それともノエルに向けられているのかはわからない。
そもそも兄さんは僕とノエルを同じように見ているようだった。
……本当にそれで良いのかどうかは分からないけど、兄さんに認められるならそれでも良いと思った。
もちろん、レイヴン兄さんを恋愛対象とは思っていない。いくら僕がゲイだからと言っても、相手は実の兄なんだ。
ただ、そばにいていいよって、言ってほしい。
「どうしました? 難しい顔をしてますよ?」
「え?」
「何か悩みでも? ……良ければ、聞かせてもらえませんか? 誰かに相談すれば、気持ちも楽になると思いますよ」
料理長さんが優しく微笑みながらそう言った。
「……それじゃあ、聞いてもらえますか?」
僕のつぶやくような小さな声に、料理長さんは笑顔を崩さず__。
「はい。私で良ければ」と言ってくれた。
もしも僕が料理をしてもこうはならないだろう。
だって今の僕って可愛い系の顔で髪も腰まであるからね。服装は男だけどドレスとか着たら女の子に間違えられると思う。
まあ可愛い系といっても言うほど可愛いってわけじゃないんだけどね。
「ノエル様、出来ましたが食堂で食べますか? それともご自分のお部屋で?」
白くて丸いお皿に盛り付けられた野菜と肉の炒め物。それを両手に持ち僕の前へやってきた料理長さんはどこで食べるのかと聞いてきた。
「ここで食べます! もう我慢できません!」
「でもさすがにテーブルがないと……あそこの部屋まで我慢できますか?」
そういって指差したのは厨房の奥にあるドア。
「あそこは何があるんですか?」
「休憩室ですよ。私やコックの人たちがお昼を食べるときにも使用します」
「ならすぐに行きましょう! もう限界です!」
催促すると料理長さんはにっこり笑って足早にドアへと向かう。僕はその後について行き、部屋の中へと入った。
中は中央に大きなテーブルと椅子が備えられ、壁沿いには小さな棚や着替え用のエプロンなどが置かれている。
ひとしきり観察し、一番近くの椅子へと座る。料理長さんは棚からフォークを取り出し、肉と野菜の炒め物と一緒に僕の目の前に置いた。
白くゆらゆらとした湯気と、食欲をさらに奮い立たせる匂いに喉を鳴らす。
フォークを手に取ると中央に突き刺し、すくい上げるようにしてそれを食べた。
口の中に広がる肉の旨味と、まだ若干シャキシャキとした食感の野菜がマッチしてとても美味しい。
空腹は最高のスパイスと聞いたことはよくいったものだ、と思った。
「ふふっ、美味しそうに食べてもらえて何よりです」
夢中で食べていて気がつかなかったが、いつの間にか料理長さんは僕の向かい側に座り、頬杖をつきながら僕のことを幸せそうな顔でじっと見つめていた。
「すごく美味しいです。すみません、朝早くに……そういえばこんなにはやい時間から何をしてたんですか?」
「調理のための下ごしらえを少し。あとは食材の確認と調味料の整理とかです」
「すごいですね。こんなに朝早くから」
「ええ。でもとてもやりがいがありますし、楽しいんです。何より、ノエル様のように美味しいと思ってもらえることが嬉しいです」
「僕も、クッキー作ったとき料理長さんに美味しいっていってもらえて、すごく嬉しかったです」
自分が頑張って作ったものを喜んでもらえるのって、本当にすごく嬉しいことなんだ。
「ふふっ、本当に見れば見るほどお話と聞いた人物像と違いますね」
「え? なんの話ですか?」
「失礼を承知で申し上げますが、メイドたちの間でノエル様はあまり良い印象はなかったです。それどころかその逆でした」
……あ、前世の僕か。まあそりゃメイドに向かって奴隷だ家畜だといっていればそうなるのも当たり前だ。
「でも実際に目にしてみると、話とは全くの逆でした。とてもお優しく素敵な方でした」
「そ、そんなに褒められると、恥ずかしいです……」
「そうして恥ずかしがる姿も、とても可愛らしいです」
可愛い、か。
昨日、レイヴン兄さんが僕をベッドへ押し倒した時、何度も何度も可愛いと言っていた。
それが僕に向けられているのか、それともノエルに向けられているのかはわからない。
そもそも兄さんは僕とノエルを同じように見ているようだった。
……本当にそれで良いのかどうかは分からないけど、兄さんに認められるならそれでも良いと思った。
もちろん、レイヴン兄さんを恋愛対象とは思っていない。いくら僕がゲイだからと言っても、相手は実の兄なんだ。
ただ、そばにいていいよって、言ってほしい。
「どうしました? 難しい顔をしてますよ?」
「え?」
「何か悩みでも? ……良ければ、聞かせてもらえませんか? 誰かに相談すれば、気持ちも楽になると思いますよ」
料理長さんが優しく微笑みながらそう言った。
「……それじゃあ、聞いてもらえますか?」
僕のつぶやくような小さな声に、料理長さんは笑顔を崩さず__。
「はい。私で良ければ」と言ってくれた。
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