平凡王の国政奮闘記!〜えぇいッ!次から次へと問題を持ってくるで無いわッ!〜

クレアンの物書き

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幼き聖女について

誕生せし聖女は

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「それでね~」


木々の隙間から差し込む暖かな日差し…


透き通った水が流れる川…


よく成長した果実が実る森の中…


そこで女の子が遊んでいた。


花飾りをつくったり、地面に絵を書いたり、唐突に踊ったり…


その顔には暗い表情はなく、今という時間を大いに楽しんでいる様子が見て取れる。


だが、楽しそうに遊ぶ彼女の周りには誰もいない…


動作から見て“誰か”と遊んでいる様に見えるのに…


普通の人間が見れば、女の子が1人…妄想の中で遊んでいる様に見える光景だが……



でも実際は違う。


本当に、その女の子は自分とは異なる存在と遊んでいるのだ。


見える者が見れば驚愕する光景…


…彼女の周りには、属性を問わず沢山の精霊達が彼女を囲み、彼女と共に遊び、静かに見守っているのだ。


本来、精霊とはどこにでも存在する。


木々の側や川の中、耕された農地や石で作られた王宮の中でさえ彼らの居場所なのだ。


彼らは皆、世界の理の具現体…


彼らは常に全ての生き物の側にいて、自由気ままに世界のバランスを保つ存在だ。


普通の人間には見えず、中には魔法は信じても精霊など存在しないと否定する者もいるが…


精霊達は気にしていない。


そんな否定者でさえ、彼らにとっては保護対象であり、からかったりする玩具であり、生物の1つにしか過ぎないのだから…


…だからこそ、この光景は本来ありえないのだ。


人間が家畜やモンスターをそれぞれひとまとめにして同一の存在とみなすように…精霊からしても、人間はこの世界の生物の1つ程度の認識なのに…


その場にいる精霊達は皆、その女の子の存在を認識し、女の子に寄り添い、愛情をそそいでいるのだ。


…歴史上で同じ様に精霊達から愛された存在がいた…


…“精霊の愛子”…


数多の精霊達から愛され、その力を持って世界中の生物を救った女性に贈られた名前だ。


かつて、世界中の生物を死にいたらしめる毒が蔓延した。


当時の聖女達をはじめ、回復術師や僧侶など多くの者が問題解決のために尽力したが…


毒は予想以上に強く、聖女の祈りを持ってしても、浄化する事ができなかった…


もう助かる術はないと誰もがあきらめかけたその時、数多の精霊を連れた女性が現れ“自分には皆を苦しめる毒を浄化する力がある”と言い出したのだ。


誰もがその言葉を疑った。


何せ、何人もの聖女達が尽力しても浄化できなかったのだから…突然現れた女が浄化できるなんて思えなかった。


しかし、彼女は精霊達と共に癒しの奇跡をもって、本当に毒を浄化し、世界中の生き物を救っていった。


誰しもが驚き、聖女達すらも本物の聖女が現れたと涙を浮かべていたという…


そして、世界から毒が消え去ると同時に、彼女と精霊達も一緒にいなくなり…助けられた生物達は親愛と敬意を込めて、彼女の事を偉大なる聖女の1人として…“精霊の愛子”と呼ぶ様になったのだ。


この女の子が、精霊の愛子なのかは未だ不明だが…


伝説の聖女または近い存在がバルガンナ国内で誕生したという事実…


それはどんな火種となり燃え上がるかなど…


誰にも予想できなかった。
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