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幼き聖女について
ようやく本題に…ただし主人のレベル差に唖然
しおりを挟む「…疲れた…」
とりあえず、俺は暴走しだした馬鹿二人を追い出した。
うん、邪魔だからだ。
それ以外に理由はない。
邪魔だったからだ。
…まぁ…とりあえず、それぞれ別の部屋で待機させるようにした。
何故なら、2人とも真面目な話はちゃんとあるはずだからだ。
だから、話をきちんと聞けそうなそれぞれの側近を1人ずつ残したのだが…
「…あんな…ルキアーナ様…見たこともっ…ぶつぶつ…」
「…」
…おい、昼間の啖呵を切った際の勢いはどうした…ちびっ子…
「…無理もございません…私も…宇華ノ様の従者になり、側で仕えるようになってからは…その……式典などで見ていたお姿とは違って……あぁでしたから…」
…と、もう片方の側近は遠い目をしていた。
いや…
もう…
なんというか…
…なんだか不憫に思えて仕方ないんだが…?
「…ちびっ子よ」
「ぶつぶつっ…」
「おい、ちびっ子ッ」
「ひゃッ!?…はッ…申し訳ございませんっ…なッ…なんでしょうっ?」
うむ、元気は良いな。
だが、昼間と比べて覇気が足らん。
「…とりあえず、さっきまでと違くないか?」
「…先程は大変申し訳ございませんでした…一国の王であらせられる御身を」
「いや、そういうのいいから」
「…へぇ?」
…なるほど、ルキアーナから何か言われたか…
まぁ、大方間違ったことではないだろうが…
「俺以外ならまぁ…確かにああいうのはまずいが………だが、俺に対しては昼間みたいな態度でも問題はない。そもそも、子供相手にムキになるなどありえん……まぁ、度が過ぎるなら仕置きは必要だが…其方は自分の主人のために怒ったのであろう?」
「…それは…」
「どうなのだ?」
「もちろんルキアーナ様のためです…ですがっ…」
「なら、問題ないではないか。大切な主人のために怒れる…それは簡単のようで誰でも出来ることではない。誇るがいい、其方は幼いながらも立派な忠臣だ。その強気心に敬意を…ん、どうした…そんな驚いた顔をして?」
「…い…いえ……予想外と…申しますか…」
「…私も…」
…いやいや…
…よくわからんのだが…
…何故2人して驚いておるのだ…
「…よくわからんが……とりあえず、2人の手のかかる主人が何を伝えたかったのか教えて欲しいんだが」
話を聞いてみれば予想以上だった…
「…なるほど……なかなかにめんどくさいな…まさか、本当に関係ある話だったとは…」
「此方の場合は間接的に…な部分が多いですが…」
「だが、根本の部分で繋がっておろう……かのドマンド王国復興に向けて…“後継者の育成”と“モンスター達の力バランスの調整”か…難題だな」
ただでさえ、自国内でも人手不足の問題に頭を抱えておるのだがな…
「…モンスター…前任者達が荒らした環境の修復に力を貸さない理由はない……くわえて、無理難題に巻き込まれた民達のケア………とりあえず、多少ならば力を貸すとして……後継者についてはよくわからん。そもそも、なぜ俺に頼む?」
後継者…
いわば、次の王になる存在だ。
それこそ、あの女狐が直々に指導した方が都合がいいだろうに…
「…宇華ノ様の真意は定かではありませんが……どうやら御身を高く買っているご様子で…」
「…ありがた迷惑としか言えんぞ…第一、他国の王が干渉できる事なのか?。それこそ、自国の王族内で…」
「…宇華ノ様が次期後継者として選んだ方は、ドマンド王族…いえ、元王族の方ではございません」
「…何?」
おい、俺の聞き間違えか?
色々とややこしそうな情報が含まれてた気がするぞ…
「…先代国王なり、身内なりいるだろう?」
「…先代国王は既に死去されており…まともだった方々は皆なんらかの方法で…」
…なるほど…
かなりドロドロとした関係だったようだな…
「…残っていたのはゴミ屑ばかり…というわけか…」
「…あのぅ…私なんかが口を挟むのは違うと思うんですが………詳しいことは分かりませんが、まだ存命の王族の方々もいらしたんですよね?…でしたら、いくらやらかしてしまったとはいえ、簡単に…じゃないかも知れませんが、別の方を次期後継者にするのは無理なんじゃ…?」
うむ。
まだ子供だが、ルキアーナの側近なだけはある。
目の付け所がいい。
「そこは問題ございません…詳しいことはお話し出来ませんが…ドマンド王国…元王族の方々は我が国に多大なる“貸し”がございました…元王族の方々は、その“貸し”の返済で他の事に考えている暇などございません」
「…なるほど…其方の主人がやりそうな事だ…」
…おおかた、何処かで奴隷のようにこき使っておるのだろう…
まぁ、何らかの貸しに対する清算といえ、今の国民に手を出さなかったあたりは…好感が持てるが…
「…しかし、なら尚更自分でやる方が良くはないか?」
そう。
ただ単に新しい後継者を育てるだけではない。
他国の次世代の王を育成するわけだ。
ならば、より自分の考え…理想に近い方が良かろう。
「…宇華ノ様が考える事ですので…」
「…色々苦労しておるのだな…」
複雑そうな表情を浮かべる彼女に対して、俺は素直に言葉を紡いだ。
「……私も申し上げたのですが…その……“えっ、そんなんおもろないやん”…と…」
「…」
「…」
女狐の側近の言葉に、この場にいた全員が唖然とした。
…本当にそう思っていたとしてもだ…
側近を困らすでない…
「……はぁ………どうやら、居ても居なくても扱いに困る主人のようだな…」
「……ルキアーナ様とお話されてた時はすごい怖い雰囲気がありましたが……なんだか…その……頑張ってください」
思わずちびっ子ですら同情する始末…
「…ぅぅっ…ありがとうございますぅ…」
「…ミランダ」
「承知しました」
とミランダは部屋を出でいく。
そして、数分後紅茶セットを持って戻ってきた。
「お待たせいたしました」
「うむ」
「…ぇ…ぇぇ…と?」
「国内の茶葉を用いた紅茶でございます。どうぞ」
と、ミランダは慣れた手つきでカップに紅茶を注ぎ、“全員分”用意する。
「うむ、ご苦労」
「…」
…
…なぜか…
ちびっ子が此方を凝視している…
…ふむ…自分の分じゃないと思っているのか?
「遠慮せず飲むがいい」
「…え……やっぱり私の分?」
「当たり前であろう…せっかく用意したのだから味わうがいい」
「……い…いつ…このようなご指示を?」
…いや、どうしたお前達…そんな驚いた顔をして?
「いつも何も……確かに言葉に出しておらんが…大体察せるであろう、なぁミランダよ?」
「はい」
「「……」」
「…ちなみに」
「はい、とれたての野菜を用いたケーキもご用意しました」
「…うむ…いつもすまぬな」
「…私がしたいことをしてるまでです…ところで、我が王よ。この後ですが…」
「わかっておる…時間ならば必ず用意しよう。だが、まずは優先する仕事を終わらせてからだが…」
「…ありがとうございます…」
「…なん…という……洗練された従者関係っ……」
「…意外です…」
…いや、だから何故そこまで驚く…
「…ミランダよ、何故この2人は唖然としておるのだ?」
「…さぁ…私にも…」
羨ましそうに見てくる者と予想外だった相手を見るようなちびっ子相手に、俺とミランダは首を傾げるしかなかった。
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