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日常

第20話 望むもの

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 ドアが閉まるなり、シーツを跳ね除ける。

「ッん゛、ぐっ……ぅ゛……っふ、ぅぐっ……ッ」

 焦点の合っていない黄金が、ふらふらしながら見上げてきた。
 碌に呼吸できていないと思わしき喉は、ひくひくと痙攣しながら今なお嚥下の動きを繰り返している。
 飲み込みきれなかった白濁が旭陽の顔中に飛び散って、喉どころか胸元にまで垂れていた。

 額や体のあちこちに脂汗が滲んでいる。
 酷く苦しそうだが、それ以上の量の白濁を旭陽も吐き出していた。

 ぐち、と湿った音がする。

 視線を動かせば、アナルが五本の指を飲み込んでいた。
 かたかたと震えている指は動かしにくそうだが、ゆっくりと根本まで押し込んでは、入り口を拡張する動きを繰り返している。


 かっと頭に血が昇った。
 衝動のまま、旭陽の肩を掴んで無理矢理顔を引き剥がす。

「ッっン゛ぅ゛あアッッ!」

 ずるずると喉奥から怒張を引き抜かれて、旭陽が濁った悲鳴を上げた。
 隠されている最中にも絶頂していたらしい体が、また精液を吐き出す。

 酷く咳込んでいる旭陽が体を丸めようとしているのを押さえて、アナルから両手の指も引き抜かせる。

 首輪の上から、逞しい首を押さえ付けた。
 喉に深く牙を突き立て、いつもより乱暴に血を啜る。

「ッが、っげほ、っァ゛ッッひぃ!?」

 ひゅっ、と旭陽の喉が音にならない悲鳴を漏らした。
 射精した直後の旭陽が、全身を弓なりにしならせてまたぶしゃりと白濁を撒き散らす。

「っか、ッ、っ、~~ッ゛、ぁ゛、ぎっ……ッ!」

 あきら、だめ、やだ、まって。

 多分そんな感じの制止を口にしようとしては、ひゅうひゅうと鳴る喉が音を発せずにいる。
 黄金から溢れ落ちる涙を舐め取り、がくがくと震えている腰を掴んだ。
 旭陽自身の手で蕩かされたアナルへ、吐き出しても収まらないペニスを押し当てる。

 むり、まだ、むり、あきら。

 声が出ていない旭陽の唇がそう動くのを見ながら、体重をかけて、一気に最奥まで貫いた。

「、ッぁ゛、!!」

 がくん! と旭陽の体が大きく跳ねて、強すぎるほどの力で俺を締め上げてくる。

「っく…………!」
 ぐねぐねと胎内がうねる動きは、旭陽がイった時のものだ。
 挿れただけで、今度は出さずにイったらしい。

 俺ももう我慢はせずに、精液を強請ってくるナカに吐き出した。
 俺の可愛い旭陽。今日もナカに出されただけで、イけるよな?

「っァ゛、ぁぎッ、ひっィ゛ぃいッ!」

 ぶしゃりと噴き上がった白濁が、旭陽と俺の体を濡らした。
 うん、完全に奥で射精されるだけでイく体になってるな。

 嬉しくなって、がちがちの性器で旭陽のナカのしこりを狙う。
 俺のは大きすぎるから、わざわざ狙わなくてもいつも全部押し潰して刺激しっ放しだ。
 だから場所だけ把握している状態だった。
 今は敢えて全部は突き挿れず、前立腺を集中して先端で叩き潰す。

 肩に牙で噛み付き、ぽかりと空いた跡に舌を押し込んで舐め回した。

「ッひ、っげほ、っはッぁ゛アアアアッ! あ、きッ、ま゛、って、ァ゛ぎッ、っらぁ゛……っ!」

 呼吸を取り戻す前に立て続けの吸血と律動を叩き付けられた旭陽が、酸欠と過剰な絶頂にがくがくと全身を痙攣させている。

 ドライ……メスイキって言い方もあるんだっけ? その最中に射精を伴った絶頂も被せられて、同時にメスとオスの絶頂を味わされている男は今にも気を失いそうだ。
 いや、むしろ気絶したいのに快感が強すぎて、意識が飛ばせない状況なのかもしれない。
 アナルから引き抜かせた両手が、無意識といった様子でがりがりとシーツを引っ掻いている。

 のたうち回る体を押さえ込む。
 結腸を貫き、根元までペニスを押し込んだ。

「っぁ゛、がッ、ッ゛~~っ、~~~ッ゛、っぁ゛!!」

 俺の押さえる力に反して、旭陽の体が危ういほどの跳ね方をした。
 勢いよく噴き出した潮が、俺の体に当たってびしゃびしゃと旭陽の腹に降る。

「ッひぐっ、ぃ゛、っぁ゛、き……ッ」
 名前を呼ばれそうになって、咄嗟に精液と潮を交互に吐き出している鈴口へと爪を立てた。

「っは、ぎぅ゛うッ! ぁひっ、ャ、ゃ゛あぁぁっ! ぁあ゛ーっ!」

 旭陽はすぐに言葉を失って、綺麗な髪を振り乱して泣き叫んでいる。
 胸の突起に噛み付けば、泣き声は一層大きくなった。


 結腸と前立腺を交互に穿っていれば、泣きじゃくる声が少しずつ弱まってきた。

「かっ、ひゅっ、かはっ、あヒッ、~~~ッ゛ッ! ッぃ、ぅ゛っ、ッァ゛、あぐっ、ッぁあ゛ーー……っ、ぁ゛……ッ゛ぅ、……っ」

 どろどろの顔を見れば、虚ろな黄金が瞼の奥に隠れそうになっていた。

 痙攣している太腿を持ち上げて、汗だくの足裏に牙を立てる。

「っぁ゛ひィッ!?」
 がくんと腰から下が跳ねて、ぼたぼたと色のない精液が滴った。

「ッぁ、ァ゛っ、かっ、……ぁ……っぅ……っ?」

 もう理性など全く残っていない瞳が、酷い衝撃に反応して丸く見開かれている。
 快感の所為とも、怖がっているとも取れる大きさでがたがたと震えている体を、全身を使って押さえ込んだ。

 はくりと、色々な体液に塗れた唇が空ぶる。
 ひぅひぅと細い呼吸音を漏らしている唇が何事か言葉を発する前に、また根元までペニスを捻じ込んだ。

「ーーーーっ゛、~~~~~ッ!!」

 痙攣しながら激しくのたうち回る体を掴み、がつがつと穿ち続ける。

「ひぎっ、ぃ゛ッ、っ、ぁがっ! アっぁ゛ッ、ッひ、ひゃぅっ、ッァ゛、」

 時折、旭陽の唇があきらと動きそうになる。
 その度に鈴口を抉っていれば、段々と褐色の体の跳ね方が鈍くなってきた。
 悲鳴も途切れがちになり、痙攣も小さくなっていく。

 昨日、興奮しすぎて貪りすぎた時にも見た。
 このままだと、死んだように反応がなくなるまで追い込んでしまう。

 もう止めなければと思えば、ふと視界がぼやけた。

 瞬いてみると、透明の雫が俺の目から滴り落ちた。
 旭陽の目尻に落ちた水滴は、虚ろな黄金から流れ続けている涙に紛れてすぐに判別が付かなくなる。

「っ……!」

 ぎゅっと唇を引き結んで、旭陽の背中をシーツから引き上げる。

「ッぁ゛ヒァ゛……ッ」

 弱った嬌声と共に、力尽きて芯をなくしている旭陽の性器がぷしゃりと少量の潮を吹いた。
 昨日はそこまでじゃなかったのに、いつの間にか旭陽の顔からは血の気が引いて、今は真っ青な顔色になっている。
 何か言いかけていても酸欠で喘いでいても、全て無視したからだろうか。
 それは昨日も終盤は割と同じだった気がするけど。

 ……改めて考えると、最低なことをしている。
 でも、改めるつもりは、ない。

「……旭陽……」

 かたかたと小刻みに震えている体を抱き締め、またぐっと腰を押し付ける。

「っぁ゛、あー……っ、ぁ゛、ッ゛ーー……、」

 がくんと頭が後ろに傾いて、微かに譫言のような啼き声を零した。
 どろどろに蕩けた胎内をゆっくりと掻き回しながら、薄く開いている唇に口付けを落とす。

 誰にも渡さない。
 何処にも行かせない。
 もし間違いだとしても、誰に批判されようとも。
 旭陽自身が望んだとしても。

 俺のものだ。
 俺だけの、旭陽だ。

 心の中で何度も唱えて、ぐったりと動かなくなった体を強く抱き締めた。
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