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日常
第22話 今は、それで
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肩甲骨を包み込み、肩口に掌を擦り付ける。
「は……、んっ……」
腰まで背中を撫で下ろしていくと、旭陽の足がぴくぴくと小さな反応を返してきた。
そういえば腰を掴んだり腕を押さえ付けたりはしてたけど、背中はあんまり触ってなかったな。
ふと気付けば好奇心じみたものが湧いて、何度も広い背に指を這わせてしまう。
しつこいかと思ったが、旭陽は嫌がる素振りを見せない。
「ッん、ンぁ……っ」
肩の噛み跡に舌を這わせれば、首筋に触れている呼吸が甘く跳ねた。
――そうだ。そうだった。
昨日、邪魔が入る直前には、こういう触れ方をしようとしてたんだった。
「……旭陽」
首筋の黒髪を掻き上げ、項に指先を擦り付ける。
「はっ……ッ、ぁ……!」
褐色がざっと鳥肌に覆われた。
腕に褐色の指が触れて、弱い力で爪を立ててきた。
長い指は、俺の腕を引っ掻きながらかたかたと震えている。
昨日、空気に肌が触れているだけでも感じていた体だ。
今日だって同じくらい、もしかすると昨日以上の過敏さが継続していてもおかしくない。
そんな状態で、よくもあれほどの威圧を与えてこれたものだ。
「旭陽」
頬に手を添えて、伸ばした指で顎の下を擦る。
緩慢に持ち上げられた顔に自分から顔を寄せて、そっと唇を重ねた。
深めはせずに、触れるだけの口付けを繰り返す。
「……ん」
何度も触れていると、薄く開いている黄金が蕩けた。
あ、気持ち良さそうな目してる。
軽く口を開けて、触れている唇の表面に舌を滑らせてみた。
「っぁ……ん、ぅ……っ」
がっちりとした肩が震えて、とろりとした瞳の甘さも増す。
敏感になっているのもあるんだろうが、嫌々にしては旭陽の目に嫌悪が全く見当たらない。
いつもの皮肉げな色も暴力性もなく、心地良さに浸っているように見えた。
……旭陽は、昔からよくキスしてくる男だった。
俺への嫌がらせだと思ってたんだけど、単純に旭陽自身がキス好きだったりするんだろうか。
それなら――いいかな。我慢、しなくても。
触れたいと思うだけ全部触れて、いいのかな。
「んッ!」
舌で唇を割れば、旭陽の吐息が跳ね上がった。
「っふ、んぅ……っ、ぁ……ッ」
舌を絡め取って、根元から舌先までずりずりと擦り合わせていく。
足の震えが大きくなっていくのが伝わってきた。片手で臀部を鷲掴めば、びくりと腰が跳ねる。
「っあ!」
甘い声が俺の咥内にも響いてくるのを心地良く思いながら、舌と臀部を撫でていく。
「っぅ、ふあ……ァッ……っ、あ……き、らぁ……?」
唇を塞いだり少し隙間を開けたりしながら、舌と口腔を舐め回す。
やがて深く塞いでこないことに疑問を感じたらしい旭陽が、甘さを増した声で呼んできた。
痺れてきたのか、少し舌が回らなくなっている。
呼ばれた瞬間、舌先に吸い付いて軽く歯を立てた。
「んぁっ」
ああ、その声可愛い。
いつもなら即座に角度を変えて深めるところだけど、今日は場所を変えて何度も軽い力で吸い付いた。
「っぁ、っ、ら、んあっ、ぁ、に……っ」
びくびくと反応を返してきながら、何事かと不思議そうにしている。
すぐには答えず、引き締まった尻肉を揉みしだく。
「ッア、ぁっ! っあ、はあ! ぁっ、き、待っ……ッ、ひゃ! ッゃ、も、れ……っ」
途端に旭陽の体が緊張して、瞼が強く閉ざされた。
背中を撫でていた手で太腿を撫で上げていく。濡れた感触が伝ってきて、指から手首へと流れ落ちた。
「旭陽?」
「ッン……っあ、ぁうっ……!」
声をかけてみても、ぶるぶると震えながら耐えている旭陽は答えてくれない。
少し考えて、緩く絡めていた舌を解いた。
「っぁ……?」
すぐに旭陽の目が開き、不満そうな視線を口元に向けられる。
思わぬ反応に撃ち抜かれながら、可愛いなと零れかけた言葉を飲み込んだ。
「旭陽。見せて」
何を? と言いたげな目は一瞬のことで、旭陽はすぐに理解したらしかった。
指を抜けば、がくりと腰を揺らして体を震わせる。
暫く余韻に耐えてから、大柄な体が動き出した。意外と躊躇う様子はない。
「こっち」
隣を叩いて促せば、俺の上から退いてそちらへ移動した。
ぐちゃぐちゃなままのシーツに腰を下ろして、ようやく僅かな躊躇が見えた。
それも数秒で消え、ゆっくりと両足が開いていく。
俺に向けて開かれた足の間から、小さくひくついているアナルが見えた。
そこから、どろどろと白い液体が溢れ出している。
昨日、俺が散々注ぎ込んだものだ。
後処理せずに寝落ちたんだしな。
俺が忘れていただけで、全部旭陽の中に残っているのは当然のことだった。
「……気持ちいい?」
苦しいんだろうか。
そう思ったはずなのに、俺の口は別の言葉を発していた。
「……っ」
小さく息を飲んだ旭陽が、眉を寄せてからにやりと笑った。
目尻は堪えるように震えてるけど。
そもそもさっきの反応からして、今結構恥ずかしいんだって伝わってきちゃってるし。
「ッど、う……っ、見え、る?」
「気持ち良くて困ってるように見える……」
挑発的な声音に、感嘆の声を返した。
褐色に伝う白はもう何度も見たが、どれだけ見ても美味そうだ。
ぐっと言葉に詰まった旭陽に手を伸ばし、白が零れている場所へ指を突き立てる。
「っひ!」
座っていた大きな体が跳ねて、両手がシーツに沈んだ。
押し込んだ指を動かせば、旭陽の手によってシーツの皺が増えていく。
「っあ、あぅっ、んぁっ! ぁッ、はあっ、んぅっう……ッ!」
どろどろと溢れ出してくる白濁を掻き出していくと、シーツに腕を突いていた旭陽の肘が折れた。
横に倒れ込みそうになった体を押して、後ろへと倒れ込ませる。
仰向けに倒れた男の足を下から掬い上げ、太腿を旭陽自身の胸板へと触れさせた。
ああ、昨日も同じ体勢を強制したっけ。
今日も相変わらず、旭陽は抜け出そうとはしてこない。
膝の裏へ手を滑らせ、強めに胸板に押し付ける。
宙に浮いた足に唇を落とし、昨日噛んだ足裏へと舌を這わせた。
「ンンッ!」
ばっと旭陽が自分の口元に手を当て、声を押し殺した。
目を瞠った拍子に、黄金からぽろりと涙が零れ落ちる。
動揺の視線が注がれてくるのを感じながら、吸血跡を優しく舌でなぞった。
「ッゃ、ぁっ、あっ、んあっ……ッ」
ぶるぶると震える太腿も舌で伝い上げ、また足首まで舐め下りていく。
伸びきった状態で固まってしまった指を口に含んだ。
「あっ!?」
驚きの声と共に、旭陽の背中がシーツから浮いた。
足先にまで残っている体液の跡を舐め取り、足指の間に舌を押し込む。
指の付け根から爪先まで舐って、かりりと甘く歯を立てた。
「っひ、ぅ、んぅあ……っ」
悶える旭陽の指を全て濡らしていって、足裏にまた舌を這わせた。
「ぁ、っぁ、やっ……ッひう!」
制止の声が聞こえてきそうになった。
先にアナルに含ませた指を動かせば、発されそうだった言葉が掻き消えて嬌声に変わる。
震えている下肢へ顔を寄せて、とろとろと少量の白濁を溢れさせ続けている陰茎を一度だけ舐め上げた。
すぐにまた足元へ戻れば、乱れた旭陽の呼吸が引き攣るのを感じた。
「っあ……き、なにっ……ぁ、んで、」
「ん?」
困惑の声に視線を上げる。
視線がぶつかると、ふらりと揺れた黄金が俺の股座で止まった。
どれだけ前日に出していようが、旭陽の感じている姿を見ていれば俺はいくらでも昂ってしまう。
罪悪感を煽る真っ青な顔も、いつの間にか血の気が戻って仄かに赤らんできていることだし。
でも痛いほどガチガチでも、今は挿れるつもりはない。
旭陽を過剰な連続絶頂に追い込む気もない。
挿れないのかと言いたげな視線には気付かないふりをして、俺の唾液で濡れた足首に唇を落とす。
「汚れ、取れたな」
「……?」
ちゅ、ちゅ、と口付けの音を何度も立てながら言えば、向けられている視線が疑問の色を強めた。
「昨日の跡、ここからはなくなった」
「……そ、りゃあ……」
俺が舐めたことで乾いた体液や血の跡が拭われた場所を指せば、旭陽が困ったような声を出した。
新たに唾液に塗れさせといて何言ってるんだこいつ、ってところだろう。
「全部、今日は今日の俺で塗り潰してやりたい気分」
「…………それ、」
にっこりと笑ってやると、旭陽が顔を強張らせた。
全身舐めてから挿れる、と言っていることを理解したようだ。
無理、と首を振ろうとする男の腰に軽く噛み付く。
「ッア、っ」
足を持ち上げていた手を離し、びくりと仰け反った旭陽の頬を撫でた。
「――だから、今日はずっとここにいる」
背を伸ばし、濡れた目尻に唇を押し付ける。
旭陽が目を見開いた。
昨日『おいていくな』『ここにいろ』って泣いていた男に、もう一度同じ言葉を繰り返した。
ここに、いる。
何も言わずに口を噤んでしまった旭陽の首筋や頬に、やんわりと牙を触れさせては舌で擽る。
血が流れるような傷は付けない。
何度か繰り返すと、深々とした嘆息が落とされた。
「旭陽?」
なあ、いいだろ。
そう問い掛けるつもりで、声をかけた。
濡れた黄金がゆっくりと瞬いて、淡く笑みを浮かべた。
「なら――――いい」
柔らかな声で囁いて、旭陽が体から力を抜いた。
俺を受け入れる姿勢になった男を見て、自然と笑みが零れた。
うん。俺も、いいかな。
少なくとも今は、旭陽は俺を求めてる。
なら、いいや。
それがどんな理由でも、お前が俺から離れないなら、それでいい。
「は……、んっ……」
腰まで背中を撫で下ろしていくと、旭陽の足がぴくぴくと小さな反応を返してきた。
そういえば腰を掴んだり腕を押さえ付けたりはしてたけど、背中はあんまり触ってなかったな。
ふと気付けば好奇心じみたものが湧いて、何度も広い背に指を這わせてしまう。
しつこいかと思ったが、旭陽は嫌がる素振りを見せない。
「ッん、ンぁ……っ」
肩の噛み跡に舌を這わせれば、首筋に触れている呼吸が甘く跳ねた。
――そうだ。そうだった。
昨日、邪魔が入る直前には、こういう触れ方をしようとしてたんだった。
「……旭陽」
首筋の黒髪を掻き上げ、項に指先を擦り付ける。
「はっ……ッ、ぁ……!」
褐色がざっと鳥肌に覆われた。
腕に褐色の指が触れて、弱い力で爪を立ててきた。
長い指は、俺の腕を引っ掻きながらかたかたと震えている。
昨日、空気に肌が触れているだけでも感じていた体だ。
今日だって同じくらい、もしかすると昨日以上の過敏さが継続していてもおかしくない。
そんな状態で、よくもあれほどの威圧を与えてこれたものだ。
「旭陽」
頬に手を添えて、伸ばした指で顎の下を擦る。
緩慢に持ち上げられた顔に自分から顔を寄せて、そっと唇を重ねた。
深めはせずに、触れるだけの口付けを繰り返す。
「……ん」
何度も触れていると、薄く開いている黄金が蕩けた。
あ、気持ち良さそうな目してる。
軽く口を開けて、触れている唇の表面に舌を滑らせてみた。
「っぁ……ん、ぅ……っ」
がっちりとした肩が震えて、とろりとした瞳の甘さも増す。
敏感になっているのもあるんだろうが、嫌々にしては旭陽の目に嫌悪が全く見当たらない。
いつもの皮肉げな色も暴力性もなく、心地良さに浸っているように見えた。
……旭陽は、昔からよくキスしてくる男だった。
俺への嫌がらせだと思ってたんだけど、単純に旭陽自身がキス好きだったりするんだろうか。
それなら――いいかな。我慢、しなくても。
触れたいと思うだけ全部触れて、いいのかな。
「んッ!」
舌で唇を割れば、旭陽の吐息が跳ね上がった。
「っふ、んぅ……っ、ぁ……ッ」
舌を絡め取って、根元から舌先までずりずりと擦り合わせていく。
足の震えが大きくなっていくのが伝わってきた。片手で臀部を鷲掴めば、びくりと腰が跳ねる。
「っあ!」
甘い声が俺の咥内にも響いてくるのを心地良く思いながら、舌と臀部を撫でていく。
「っぅ、ふあ……ァッ……っ、あ……き、らぁ……?」
唇を塞いだり少し隙間を開けたりしながら、舌と口腔を舐め回す。
やがて深く塞いでこないことに疑問を感じたらしい旭陽が、甘さを増した声で呼んできた。
痺れてきたのか、少し舌が回らなくなっている。
呼ばれた瞬間、舌先に吸い付いて軽く歯を立てた。
「んぁっ」
ああ、その声可愛い。
いつもなら即座に角度を変えて深めるところだけど、今日は場所を変えて何度も軽い力で吸い付いた。
「っぁ、っ、ら、んあっ、ぁ、に……っ」
びくびくと反応を返してきながら、何事かと不思議そうにしている。
すぐには答えず、引き締まった尻肉を揉みしだく。
「ッア、ぁっ! っあ、はあ! ぁっ、き、待っ……ッ、ひゃ! ッゃ、も、れ……っ」
途端に旭陽の体が緊張して、瞼が強く閉ざされた。
背中を撫でていた手で太腿を撫で上げていく。濡れた感触が伝ってきて、指から手首へと流れ落ちた。
「旭陽?」
「ッン……っあ、ぁうっ……!」
声をかけてみても、ぶるぶると震えながら耐えている旭陽は答えてくれない。
少し考えて、緩く絡めていた舌を解いた。
「っぁ……?」
すぐに旭陽の目が開き、不満そうな視線を口元に向けられる。
思わぬ反応に撃ち抜かれながら、可愛いなと零れかけた言葉を飲み込んだ。
「旭陽。見せて」
何を? と言いたげな目は一瞬のことで、旭陽はすぐに理解したらしかった。
指を抜けば、がくりと腰を揺らして体を震わせる。
暫く余韻に耐えてから、大柄な体が動き出した。意外と躊躇う様子はない。
「こっち」
隣を叩いて促せば、俺の上から退いてそちらへ移動した。
ぐちゃぐちゃなままのシーツに腰を下ろして、ようやく僅かな躊躇が見えた。
それも数秒で消え、ゆっくりと両足が開いていく。
俺に向けて開かれた足の間から、小さくひくついているアナルが見えた。
そこから、どろどろと白い液体が溢れ出している。
昨日、俺が散々注ぎ込んだものだ。
後処理せずに寝落ちたんだしな。
俺が忘れていただけで、全部旭陽の中に残っているのは当然のことだった。
「……気持ちいい?」
苦しいんだろうか。
そう思ったはずなのに、俺の口は別の言葉を発していた。
「……っ」
小さく息を飲んだ旭陽が、眉を寄せてからにやりと笑った。
目尻は堪えるように震えてるけど。
そもそもさっきの反応からして、今結構恥ずかしいんだって伝わってきちゃってるし。
「ッど、う……っ、見え、る?」
「気持ち良くて困ってるように見える……」
挑発的な声音に、感嘆の声を返した。
褐色に伝う白はもう何度も見たが、どれだけ見ても美味そうだ。
ぐっと言葉に詰まった旭陽に手を伸ばし、白が零れている場所へ指を突き立てる。
「っひ!」
座っていた大きな体が跳ねて、両手がシーツに沈んだ。
押し込んだ指を動かせば、旭陽の手によってシーツの皺が増えていく。
「っあ、あぅっ、んぁっ! ぁッ、はあっ、んぅっう……ッ!」
どろどろと溢れ出してくる白濁を掻き出していくと、シーツに腕を突いていた旭陽の肘が折れた。
横に倒れ込みそうになった体を押して、後ろへと倒れ込ませる。
仰向けに倒れた男の足を下から掬い上げ、太腿を旭陽自身の胸板へと触れさせた。
ああ、昨日も同じ体勢を強制したっけ。
今日も相変わらず、旭陽は抜け出そうとはしてこない。
膝の裏へ手を滑らせ、強めに胸板に押し付ける。
宙に浮いた足に唇を落とし、昨日噛んだ足裏へと舌を這わせた。
「ンンッ!」
ばっと旭陽が自分の口元に手を当て、声を押し殺した。
目を瞠った拍子に、黄金からぽろりと涙が零れ落ちる。
動揺の視線が注がれてくるのを感じながら、吸血跡を優しく舌でなぞった。
「ッゃ、ぁっ、あっ、んあっ……ッ」
ぶるぶると震える太腿も舌で伝い上げ、また足首まで舐め下りていく。
伸びきった状態で固まってしまった指を口に含んだ。
「あっ!?」
驚きの声と共に、旭陽の背中がシーツから浮いた。
足先にまで残っている体液の跡を舐め取り、足指の間に舌を押し込む。
指の付け根から爪先まで舐って、かりりと甘く歯を立てた。
「っひ、ぅ、んぅあ……っ」
悶える旭陽の指を全て濡らしていって、足裏にまた舌を這わせた。
「ぁ、っぁ、やっ……ッひう!」
制止の声が聞こえてきそうになった。
先にアナルに含ませた指を動かせば、発されそうだった言葉が掻き消えて嬌声に変わる。
震えている下肢へ顔を寄せて、とろとろと少量の白濁を溢れさせ続けている陰茎を一度だけ舐め上げた。
すぐにまた足元へ戻れば、乱れた旭陽の呼吸が引き攣るのを感じた。
「っあ……き、なにっ……ぁ、んで、」
「ん?」
困惑の声に視線を上げる。
視線がぶつかると、ふらりと揺れた黄金が俺の股座で止まった。
どれだけ前日に出していようが、旭陽の感じている姿を見ていれば俺はいくらでも昂ってしまう。
罪悪感を煽る真っ青な顔も、いつの間にか血の気が戻って仄かに赤らんできていることだし。
でも痛いほどガチガチでも、今は挿れるつもりはない。
旭陽を過剰な連続絶頂に追い込む気もない。
挿れないのかと言いたげな視線には気付かないふりをして、俺の唾液で濡れた足首に唇を落とす。
「汚れ、取れたな」
「……?」
ちゅ、ちゅ、と口付けの音を何度も立てながら言えば、向けられている視線が疑問の色を強めた。
「昨日の跡、ここからはなくなった」
「……そ、りゃあ……」
俺が舐めたことで乾いた体液や血の跡が拭われた場所を指せば、旭陽が困ったような声を出した。
新たに唾液に塗れさせといて何言ってるんだこいつ、ってところだろう。
「全部、今日は今日の俺で塗り潰してやりたい気分」
「…………それ、」
にっこりと笑ってやると、旭陽が顔を強張らせた。
全身舐めてから挿れる、と言っていることを理解したようだ。
無理、と首を振ろうとする男の腰に軽く噛み付く。
「ッア、っ」
足を持ち上げていた手を離し、びくりと仰け反った旭陽の頬を撫でた。
「――だから、今日はずっとここにいる」
背を伸ばし、濡れた目尻に唇を押し付ける。
旭陽が目を見開いた。
昨日『おいていくな』『ここにいろ』って泣いていた男に、もう一度同じ言葉を繰り返した。
ここに、いる。
何も言わずに口を噤んでしまった旭陽の首筋や頬に、やんわりと牙を触れさせては舌で擽る。
血が流れるような傷は付けない。
何度か繰り返すと、深々とした嘆息が落とされた。
「旭陽?」
なあ、いいだろ。
そう問い掛けるつもりで、声をかけた。
濡れた黄金がゆっくりと瞬いて、淡く笑みを浮かべた。
「なら――――いい」
柔らかな声で囁いて、旭陽が体から力を抜いた。
俺を受け入れる姿勢になった男を見て、自然と笑みが零れた。
うん。俺も、いいかな。
少なくとも今は、旭陽は俺を求めてる。
なら、いいや。
それがどんな理由でも、お前が俺から離れないなら、それでいい。
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