【完結済】王宮恋綴り〜宰相家の令息と公爵令嬢の秘密日記〜

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再会

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【令嬢・エリシアの日記】

四月十四日。晴れ。

舞踏会の招待状を受け取ったとき、心は静かだったはずなのに。

彼が現れるかもしれないと考えた途端、それだけで何も手につかなくなった。

会場の光、音、香り——そのすべてが遠くに霞んだのは、彼の姿を見つけた瞬間だった。

アラン・グランベール様。

黒の礼装に身を包んだ彼は、まるで別世界のひとだった。



私が壁際で息を整えていると、彼が静かに歩み寄ってきた。

「今宵も、花より貴女の方が美しい」

一礼し、そう言った彼の声は、微かに震えていた気がする。



応える言葉を見つけられぬまま、ただ微笑むことしかできなかった。

けれどその後、彼が小さく囁いた。

「……少しでいい。どうか、私に貴女との時間をいただけないだろうか」

その声が、私の胸の奥を揺らした。



【令息・アランの日記】

四月十四日。晴れ。夜風、涼し。

舞踏会は、形式と儀礼の集まり。いつもなら退屈なだけの場所。

けれど今夜、彼女がいた。

エリシア嬢。

薄紫のドレスが、彼女の白い肌をいっそう引き立てていた。

どれほど稽古を積んでも、教養を身につけても、彼女の前に立つと、私はただの少年に戻ってしまう。


あの視線を、再び交わすことができただけでも、十分だった。

けれど。

私は、歩み寄り、言葉を選び、勇気を振り絞った。

「今宵も、花より貴女の方が美しい」

わずかに揺れた彼女の瞳が、何よりの答えだった。

そしてそのとき、どうしても言いたくなってしまった。

「……少しでいい。どうか、私に貴女との時間をいただけないだろうか」

彼女が何か言おうとして、口を閉じた。
それでも——その目が、拒まなかった。


それだけで、希望が生まれるには十分だった。
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