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「あれ? ウィル様」
ガチャリと扉が開く音が聞こえて、ハッと目を開ける。素早く体を起こしてその場でくるくる回る。
「なんでこんなところに?」
結局ロッドが帰ってきたのは夕食の時間が近づいた頃であった。慌ただしく動き回る俺であったが、こちらに手を伸ばしてきたロッドに勢いよく飛びかかってやる。虚をつかれたらしいロッドが大袈裟に肩を揺らした。
「うわ!」
『この野郎! 俺に黙っていなくなるとはどういうつもりだ! それでも俺の子分か!』
「僕ってウィル様の子分なんですか?」
今更な質問をしてくるロッドに、体当たりをお見舞いしてやる。おまえはどう考えても俺の子分だろうが。なんとか噛みついてやろうと必死になる俺をあっさり抱き上げて、ロッドは「やめてください」と被害者面をし始める。どう考えても長時間待たされた俺が被害者だ。
『この野郎! おとなしく噛みつかれろ!』
「普通に嫌です」
ぎゅっと俺を抱え直すロッドは、片手に荷物を抱えたまま歩き出す。
『俺に謝れ! 俺を待たせたことを謝罪しろ!』
「はい。申し訳ありません」
いつものように素直に従うロッドは、「なんで待っていたんですか?」と不思議そうに訊ねてきた。
「別に僕を待つ必要は」
『うるさい! 突然消えたらびっくりするだろうが』
「フロイドさんにはちゃんと言いましたよ。荷物取りに行ってくると」
『俺にも報告しろ。なんでフロイドには報告するのに俺にはしない!』
「はぁ」
ぼんやり頷くロッドは、いまいち理解していないような顔でのんびり歩く。そうして自室に入ったロッドは荷物を適当に床に下ろすと、ついで俺のことも離した。
『許せん!』
ロッドの部屋で暴れてやる。
忙しく室内を駆けまわれば、部屋の中央でぼんやり佇むロッドが「あんまり暴れないでください」とやる気のない声を出した。
その声かけにも腹が立ったので、ベッドの下にもぐり込んでやった。ふんふん鼻息荒くベッドの下から顔だけ出せば、ロッドが「汚れますよ」と言いながら俺を引っ張り出そうとしてくる。
『俺に触るな!』
「……」
『無視すんな』
俺を引っ張り出して埃を払うように撫でるロッドは、椅子の上に俺をのせてしまう。
「えっと。ご心配おかけしました?」
『なぜ疑問系なんだ』
頼りない謝罪を寄越すロッドは、「すみません」と雑に頭を下げる。まったく気持ちのこもっていない謝罪に逆にイラついてくる。そんな俺の気持ちを察したのか。ロッドが口を閉じて目を瞬く。
『謝れ!』
「申し訳ありません」
椅子に座る俺の前に正座して、ロッドが淡々と謝罪の言葉を口にする。
『次は俺も連れて行け』
「はい」
すんなり頷くロッドに満足した。理解したならそれでいい。
ふんと鼻息荒く椅子からおりて、ロッドの膝をペシペシしてやる。さりげなく俺を撫でてくるロッドは、じっと俺の前足に視線を注いでいた。
『なんだよ』
叩くなと言いたいのか?
俺を置いて行ったおまえが悪いんだぞ。誰がやめてやるかと引き続き座るロッドの膝をペシペシしていれば、急に前足を掴まれた。ちょっとびっくり。『なにすんだ!』と抗議すれば、ロッドが無言でもみもみしてくる。
一体なにを? と考えて気がついた。こいつ、俺の肉球に触ってやがる。
半眼で前足を引き抜こうとするが、ロッドは手を離さない。
『勝手に触るな』
「はい」
『触るなと言ってる!』
口では「はい」と言いつつひたすら肉球を触るロッドは「僕、ウィル様にだったら踏まれてもいいです」と、突然の変態宣言をしてきた。普通に引くわ。
ドン引きする俺に気が付かないロッドは、「そろそろ夕食の時間では?」と俺を抱え上げる。そのまま廊下に出て、俺を部屋に送り届けるロッドは「お腹空きましたね」とのんびり俺を離した。
フロイドの姿は見えない。
とりあえず室内を駆けまわっておく。
「ウィル様」
異常がないか室内を隈なく見回っていた時である。なんか真剣な表情をしたロッドが、床に正座した。そのまま俺を見つめてくるロッドに寄っていく。
『どうした』
「ちょっと僕の顔を踏んでみてくれませんか」
『ど変態かよ。断る!』
こいつは本当になにを言っているんだ?
ささっと距離を取る俺に、けれどもロッドはいつになく真面目な顔で「僕、犬が好きなんです」と意味不明な言い訳を始める。
「肉球を感じたい」
『こっわ』
俺の肉球がピンチ。
素早く逃げまわるが、ロッドが「実は僕の帰りが遅かったのは街で有名な菓子屋に寄っていたからで」と聞き捨てならないセリフを吐いた。
『土産はどうした! まさか自分だけ食べたのか!?』
許せん! と床をペシペシ叩けば、「ウィル様の分も買ってきました」という素敵な言葉が聞こえてきてパッと笑顔を浮かべておく。
実に気が利く子分だ。
ちょっと帰りが遅くなったことくらい許してやろう。
「ウィル様、クッキーお好きですよね」
『好き。美味しいから』
はやく寄越せとロッドのまわりをくるくる回れば、「じゃあ僕のお願いもきいてください」と取引を持ちかけられた。
ガチャリと扉が開く音が聞こえて、ハッと目を開ける。素早く体を起こしてその場でくるくる回る。
「なんでこんなところに?」
結局ロッドが帰ってきたのは夕食の時間が近づいた頃であった。慌ただしく動き回る俺であったが、こちらに手を伸ばしてきたロッドに勢いよく飛びかかってやる。虚をつかれたらしいロッドが大袈裟に肩を揺らした。
「うわ!」
『この野郎! 俺に黙っていなくなるとはどういうつもりだ! それでも俺の子分か!』
「僕ってウィル様の子分なんですか?」
今更な質問をしてくるロッドに、体当たりをお見舞いしてやる。おまえはどう考えても俺の子分だろうが。なんとか噛みついてやろうと必死になる俺をあっさり抱き上げて、ロッドは「やめてください」と被害者面をし始める。どう考えても長時間待たされた俺が被害者だ。
『この野郎! おとなしく噛みつかれろ!』
「普通に嫌です」
ぎゅっと俺を抱え直すロッドは、片手に荷物を抱えたまま歩き出す。
『俺に謝れ! 俺を待たせたことを謝罪しろ!』
「はい。申し訳ありません」
いつものように素直に従うロッドは、「なんで待っていたんですか?」と不思議そうに訊ねてきた。
「別に僕を待つ必要は」
『うるさい! 突然消えたらびっくりするだろうが』
「フロイドさんにはちゃんと言いましたよ。荷物取りに行ってくると」
『俺にも報告しろ。なんでフロイドには報告するのに俺にはしない!』
「はぁ」
ぼんやり頷くロッドは、いまいち理解していないような顔でのんびり歩く。そうして自室に入ったロッドは荷物を適当に床に下ろすと、ついで俺のことも離した。
『許せん!』
ロッドの部屋で暴れてやる。
忙しく室内を駆けまわれば、部屋の中央でぼんやり佇むロッドが「あんまり暴れないでください」とやる気のない声を出した。
その声かけにも腹が立ったので、ベッドの下にもぐり込んでやった。ふんふん鼻息荒くベッドの下から顔だけ出せば、ロッドが「汚れますよ」と言いながら俺を引っ張り出そうとしてくる。
『俺に触るな!』
「……」
『無視すんな』
俺を引っ張り出して埃を払うように撫でるロッドは、椅子の上に俺をのせてしまう。
「えっと。ご心配おかけしました?」
『なぜ疑問系なんだ』
頼りない謝罪を寄越すロッドは、「すみません」と雑に頭を下げる。まったく気持ちのこもっていない謝罪に逆にイラついてくる。そんな俺の気持ちを察したのか。ロッドが口を閉じて目を瞬く。
『謝れ!』
「申し訳ありません」
椅子に座る俺の前に正座して、ロッドが淡々と謝罪の言葉を口にする。
『次は俺も連れて行け』
「はい」
すんなり頷くロッドに満足した。理解したならそれでいい。
ふんと鼻息荒く椅子からおりて、ロッドの膝をペシペシしてやる。さりげなく俺を撫でてくるロッドは、じっと俺の前足に視線を注いでいた。
『なんだよ』
叩くなと言いたいのか?
俺を置いて行ったおまえが悪いんだぞ。誰がやめてやるかと引き続き座るロッドの膝をペシペシしていれば、急に前足を掴まれた。ちょっとびっくり。『なにすんだ!』と抗議すれば、ロッドが無言でもみもみしてくる。
一体なにを? と考えて気がついた。こいつ、俺の肉球に触ってやがる。
半眼で前足を引き抜こうとするが、ロッドは手を離さない。
『勝手に触るな』
「はい」
『触るなと言ってる!』
口では「はい」と言いつつひたすら肉球を触るロッドは「僕、ウィル様にだったら踏まれてもいいです」と、突然の変態宣言をしてきた。普通に引くわ。
ドン引きする俺に気が付かないロッドは、「そろそろ夕食の時間では?」と俺を抱え上げる。そのまま廊下に出て、俺を部屋に送り届けるロッドは「お腹空きましたね」とのんびり俺を離した。
フロイドの姿は見えない。
とりあえず室内を駆けまわっておく。
「ウィル様」
異常がないか室内を隈なく見回っていた時である。なんか真剣な表情をしたロッドが、床に正座した。そのまま俺を見つめてくるロッドに寄っていく。
『どうした』
「ちょっと僕の顔を踏んでみてくれませんか」
『ど変態かよ。断る!』
こいつは本当になにを言っているんだ?
ささっと距離を取る俺に、けれどもロッドはいつになく真面目な顔で「僕、犬が好きなんです」と意味不明な言い訳を始める。
「肉球を感じたい」
『こっわ』
俺の肉球がピンチ。
素早く逃げまわるが、ロッドが「実は僕の帰りが遅かったのは街で有名な菓子屋に寄っていたからで」と聞き捨てならないセリフを吐いた。
『土産はどうした! まさか自分だけ食べたのか!?』
許せん! と床をペシペシ叩けば、「ウィル様の分も買ってきました」という素敵な言葉が聞こえてきてパッと笑顔を浮かべておく。
実に気が利く子分だ。
ちょっと帰りが遅くなったことくらい許してやろう。
「ウィル様、クッキーお好きですよね」
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はやく寄越せとロッドのまわりをくるくる回れば、「じゃあ僕のお願いもきいてください」と取引を持ちかけられた。
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