来世で独身貴族ライフ楽しんでたら突然子持ちになりました〜息子は主人公と悪役令息〜

こざかな

文字の大きさ
33 / 49
前編

32

しおりを挟む
「おー、お帰り。俺の奥さん」

絶句。
やっと帰ってこれた俺の家。安息の地。そこからまるで主のように出てきたのは、先ほどまで話題に上がっていた男。ジェイス・ローレンだった。

「ジェイス・ローレン様……。どうして屋敷にいらっしゃるのですか?」
「フィリアお嬢様から聞かなかったのか? 婚約者候補の話」
「それは今朝聞いた! だが、お前がここに来るとは聞いていない!」

思わず指を突き付けてしまったが、許して欲しい。本当になんでこの男がここにいるんだ!?

「まぁまぁ、そんなに怒るなって。ほら、この前言っただろ。お前の屋敷に行きたいってさ」
「こんなにすぐだとは思ってないし、そもそも招待してないだろ! 未来の騎士団長様ともあろうお方が押しかけてくるなよ!」
「いやいや! 俺はお前を追いかけたつもりだったんだ。すぐに帰ったと思ってな。無作法だとは思ったが、この辺りには宿屋もないだろ? だからさ、屋敷で待たせてもらったぜ」
「~~っ、はぁ……」

あっけらかんと笑って屋敷に泊まったことを告白してきたジェイスに、もはや何も言えなかった。言いたい文句は山ほどあるが、ほぼ初対面にも関わらずここまで遠慮の欠片もないジェイスに乗せられて、ヒートアップしてはいけない。深呼吸して、何とか気持ちを落ち着かせた。優しく背中を撫でてくれるデリスだけが俺の癒し……って、そういえば俺の可愛い息子達はどうした?

「ターニャ。カーディとユリウスはどうしたんだ?」

俺が馬車から降りてからずっと申し訳なさそうに頭を下げていたターニャに声をかけた。他の使用人達もなんだか落ち込んでいるように見えたけど、ジェイスについては咎めるつもりはない。流石に一介の使用人がローレン家の御子息を追い出すことはできないことくらい分かる。買ってきた土産が役に立つと良いんだけどな……。
だが俺は、彼女達がどんよりとした空気を漂わせている理由を誤解していた。

「あの、その前に旦那様……。ジェイス・ローレン様とご婚約されるというのは、本当なのですか?」
「……まだ決まったわけじゃないが、本家から話があったことは事実だ。一応言っておくが、俺はまだ婚約するつもりはない。カーディとユリウスが学園に通うまでなら、本家にもなんとか言い訳できるだろうからな。それに俺はお前を選んだわけじゃないぞ、ジェイス。フィリア姉上から紹介された候補は他にもいる」
「それも知ってるさ。そのうえで、お前は俺を婚約者に選ぶってこともな」
「……? どういう意味だ」

ふと、ターニャ達の表情が気になった。俺がまだ婚約するつもりがないって断言したにも関わらず、その表情は浮かない。それに、俺がカーディアス達のことを聞いたのに、婚約話の方を優先して俺に聞いてきたのも不自然だ。なにが起きてるんだ?

「お前も分かってるんだろ? 他の候補者ではお前の息子達が学園に入学するまで待ってくれない。侯爵家という家柄にふさわしい上位貴族ばかりだからな」
「それは貴方も同じではないですか。ローレン家は王家からの信頼も厚く、この国の中枢を担う存在。跡継ぎを急がれるのは、貴方もでしょう」
「そうでもない。俺には兄弟がいるからな。俺自身は跡継ぎとかに興味はないんだ。周りが勝手に言ってるだけさ。相手がお前であれば、周囲も納得するだろう。それに騎士団という職場は独身者が多い。既婚者でも子どもがいない奴もいる。表面上、この国は平和だとはいえ、王族や国民を守るために命を落とすことも考えられる。だから覚悟ができるまでは、貴族の嫡男であってもそういったことを見逃してもらえやすい」
「だからお前と婚約すれば、カーディとユリウスのことは問題ないと?」
「そうだ」

俺が優先したいのは、カーディアスがちゃんと正しい人生を歩んでくれる土台を作ることだ。ユリウスはカーディアスと俺を断罪する側だから、子ども時代の悪夢が無くなった今、彼が心に傷を作る要因は存在しないため、これから先も大丈夫だろう。それでも、本編が始まる学園に通うまではあの子達に何が起きるかは分からない。本来のレイラとカーディアス、それとユリウス達攻略対象者が辿り着く本当の未来。それを知る俺だけがあの子達を守ることができるのだから、俺があの子達の重荷になってはいけないのだ。
しおりを挟む
感想 40

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

幼馴染が結婚すると聞いて祝いに行ったら、なぜか俺が抱かれていた。

夏八木アオ
BL
金髪碧眼の優男魔法使いx気が強くてお人好しな元騎士の幼馴染の二人です。

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。 挿絵をchat gptに作成してもらいました(*'▽'*)

【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。

天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。 成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。 まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。 黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

処理中です...