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不良に見初められた少女
送り、牽制する狼 side絆那
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「和凜、そろそろ戻るか。もうじきチャイムが鳴るだろうし。」
「あっ、そうですね! ……もうそんな時間かぁ。」
残り5分で休み時間が終わってしまうことに気付き、和凜に声をかける。
名残惜しいが……和凜を授業に遅刻させるわけにはいかないから仕方がない。
なんて、今までの自分じゃ抱かなかった感情と共にため息を漏らす。
「ちょっとだけ、名残惜しいですね。絆那さんとお話するの、すごく楽しいので……。」
それは和凜も同じだったようで、ぽつりと呟いたそれを俺は聞き逃さなかった。
「嬉しいことを言ってくれるな。なら、ギリギリまでここにいるか?」
「で、でも授業もあるので……我慢しますっ。」
一瞬俺の提案に揺らいだ和凜だったが、ふるふると左右に首を動かす。
……ダメだな、和凜の全部が愛しい。本当に離したくなくなってしまう。
「分かった。それじゃあ、行こうか。」
ふつふつと湧いて出てくる独占欲を体の奥へ押しやり、代わりに頬を緩める。
この感情はまだ、和凜には見せられない。
……それにしても、やはり和凜は視線を集めてしまうな。
「咲城さんってほんとお人形みたいで可愛いよね~っ! あー、いつか話してみたいな~。」
「じゃあ今声かけたら……って、一緒にいるの天狼先輩じゃない⁉ え、どういう繋がり⁉」
「お、俺たちのアイドルが天狼絆那に取られた……っ!」
屋上に向かっていた時もそこそこ野次馬はいたが、休み終わりだとより人が多い。
そのせいか和凜は心底居心地が悪そうに、小さな体を更に縮こまらせていた。
こうして見ていると、ますます和凜を一人にさせたくなくなってしまう。
詐欺とかにも引っ掛かりそうだし、もう少し和凜に警戒心を持たせる方法がないだろうか。
「和凜、放課後はいつも何をしているんだ?」
「放課後ですか? えっと、用事がなければすぐ家に帰ってます!」
「そうか。なら、今日からは俺と帰らないか?」
「えっ、いいんですかっ……⁉」
目を大きく見開いて、立ち止まりかけた和凜。
だがすぐふふっと、こちらに満面の笑みを向けた。
「す、すみません大きな声を出してっ……絆那さんと一緒にいられる時間が増えるのが、すっごく嬉しくって……。」
……ここが廊下で、本当によかった。二人きりだったら歯止めが利かなかっただろうから。
「ありがとう、和凜。」
俺のわがままなのに、受け入れてくれて。
そんな感謝を込めながら、和凜の頭を撫でようと腕を伸ばす。
けれどそれは、とんでもない怒号によって遮られてしまった。
「やっと帰ってきたわね……! 天狼っ、さっさと和凜を返しなさい!!」
「あっ、美月ちゃん!」
和凜の驚いたような声でハッと我に返り、怒号が飛んできたほうに視線を向ける。
そこには予想通りの人物、香椎が鬼の形相で仁王立ちしていた。
あー……もう教室着いてたのか。正直まだ和凜といたかったが、これ以上わがままは言えないな。
頭ではそう分かっていても、俺は咄嗟に和凜の腕を掴んで自分のほうに引き寄せた。
「き、絆那さんっ⁉」
「放課後、迎えに行くから待っていてくれ。」
こそっと耳打ちして、さっと和凜の頭を撫でる。
いきなりのそれに和凜はリンゴのように頬を染めていて、ぽかんとしていた。
そんな姿も可愛いなと愛おしく思っていると、今度は香椎が和凜の腕を引っ張る。
「ちょっと天狼、あんた和凜に何もしてないでしょうね⁉」
「……惚れた相手にすぐ手を出すほど、俺は腐っていない。」
「は⁉ 惚れた相手って――」
……キーンコーンカーンコーン
信じられないと声を張り上げる香椎をなだめるように、休憩終わりのチャイムが鳴り響く。
和凜は香椎に掴まれながらあたふたしていて、香椎に声をかけていた。
「美月ちゃん、授業始まるから……も、戻ろっか?」
その様子を背に俺も自分の教室に戻ろうと、踵を返す。
瞬間、和凜のひときわ大きな声が追いかけてきた。
「絆那さんっ、送ってくれてありがとうございます! 午後の授業、頑張ってください……!」
「……あぁ、和凜も頑張ってな。」
そんな一言を返すのが、精一杯だった。
何ださっきのは……可愛すぎるだろ。やはり和凜を一人になんてさせられない。
自分でも気持ち悪いほどの使命感が生まれてきているのは、それほど和凜に溺れているからだろう。
俺は、紛れもなく和凜に惚れている。やっと、そう確信が持てた。
「あっ、そうですね! ……もうそんな時間かぁ。」
残り5分で休み時間が終わってしまうことに気付き、和凜に声をかける。
名残惜しいが……和凜を授業に遅刻させるわけにはいかないから仕方がない。
なんて、今までの自分じゃ抱かなかった感情と共にため息を漏らす。
「ちょっとだけ、名残惜しいですね。絆那さんとお話するの、すごく楽しいので……。」
それは和凜も同じだったようで、ぽつりと呟いたそれを俺は聞き逃さなかった。
「嬉しいことを言ってくれるな。なら、ギリギリまでここにいるか?」
「で、でも授業もあるので……我慢しますっ。」
一瞬俺の提案に揺らいだ和凜だったが、ふるふると左右に首を動かす。
……ダメだな、和凜の全部が愛しい。本当に離したくなくなってしまう。
「分かった。それじゃあ、行こうか。」
ふつふつと湧いて出てくる独占欲を体の奥へ押しやり、代わりに頬を緩める。
この感情はまだ、和凜には見せられない。
……それにしても、やはり和凜は視線を集めてしまうな。
「咲城さんってほんとお人形みたいで可愛いよね~っ! あー、いつか話してみたいな~。」
「じゃあ今声かけたら……って、一緒にいるの天狼先輩じゃない⁉ え、どういう繋がり⁉」
「お、俺たちのアイドルが天狼絆那に取られた……っ!」
屋上に向かっていた時もそこそこ野次馬はいたが、休み終わりだとより人が多い。
そのせいか和凜は心底居心地が悪そうに、小さな体を更に縮こまらせていた。
こうして見ていると、ますます和凜を一人にさせたくなくなってしまう。
詐欺とかにも引っ掛かりそうだし、もう少し和凜に警戒心を持たせる方法がないだろうか。
「和凜、放課後はいつも何をしているんだ?」
「放課後ですか? えっと、用事がなければすぐ家に帰ってます!」
「そうか。なら、今日からは俺と帰らないか?」
「えっ、いいんですかっ……⁉」
目を大きく見開いて、立ち止まりかけた和凜。
だがすぐふふっと、こちらに満面の笑みを向けた。
「す、すみません大きな声を出してっ……絆那さんと一緒にいられる時間が増えるのが、すっごく嬉しくって……。」
……ここが廊下で、本当によかった。二人きりだったら歯止めが利かなかっただろうから。
「ありがとう、和凜。」
俺のわがままなのに、受け入れてくれて。
そんな感謝を込めながら、和凜の頭を撫でようと腕を伸ばす。
けれどそれは、とんでもない怒号によって遮られてしまった。
「やっと帰ってきたわね……! 天狼っ、さっさと和凜を返しなさい!!」
「あっ、美月ちゃん!」
和凜の驚いたような声でハッと我に返り、怒号が飛んできたほうに視線を向ける。
そこには予想通りの人物、香椎が鬼の形相で仁王立ちしていた。
あー……もう教室着いてたのか。正直まだ和凜といたかったが、これ以上わがままは言えないな。
頭ではそう分かっていても、俺は咄嗟に和凜の腕を掴んで自分のほうに引き寄せた。
「き、絆那さんっ⁉」
「放課後、迎えに行くから待っていてくれ。」
こそっと耳打ちして、さっと和凜の頭を撫でる。
いきなりのそれに和凜はリンゴのように頬を染めていて、ぽかんとしていた。
そんな姿も可愛いなと愛おしく思っていると、今度は香椎が和凜の腕を引っ張る。
「ちょっと天狼、あんた和凜に何もしてないでしょうね⁉」
「……惚れた相手にすぐ手を出すほど、俺は腐っていない。」
「は⁉ 惚れた相手って――」
……キーンコーンカーンコーン
信じられないと声を張り上げる香椎をなだめるように、休憩終わりのチャイムが鳴り響く。
和凜は香椎に掴まれながらあたふたしていて、香椎に声をかけていた。
「美月ちゃん、授業始まるから……も、戻ろっか?」
その様子を背に俺も自分の教室に戻ろうと、踵を返す。
瞬間、和凜のひときわ大きな声が追いかけてきた。
「絆那さんっ、送ってくれてありがとうございます! 午後の授業、頑張ってください……!」
「……あぁ、和凜も頑張ってな。」
そんな一言を返すのが、精一杯だった。
何ださっきのは……可愛すぎるだろ。やはり和凜を一人になんてさせられない。
自分でも気持ち悪いほどの使命感が生まれてきているのは、それほど和凜に溺れているからだろう。
俺は、紛れもなく和凜に惚れている。やっと、そう確信が持てた。
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