独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん

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不良さんとドキドキ

どこまでも愛おしくて side絆那

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 この幸福が、どこまでも続けばいい。和凜を抱きしめていると、つくづくそう願ってしまう。

 やはり和凜は天使だ、とにかく可愛いが過ぎる。

 俺の腕の中であたふたと困っている姿さえも可愛くて、もっと抱きしめたくなった。

 ……というかどうして、和凜はこんなにも優しいんだろうか。

『私はきっと、絆那さんが思っているほど気にしてないです! それに強引でも、全部ひっくるめて絆那さんだって思うので大丈夫ですよ!』

 普通、こんな短期間で心を許すものなのか……? いや、ほぼ和凜に一目惚れのようなものをした俺が言えることじゃないが……。

 しかも弁当まで作ってくれて、和凜には頭が上がらない。

 そして何より、愛おしすぎる。

「……ありがとう和凜。」

「~~っ、今度から抱きしめるなら言ってからにしてください!」

「言えば、いつでも抱きしめていいってことか?」

「え、あ……いや、そういうこと、になるんでしょうか……?」

 自分が言ったことに自信をなくしていく和凜に、いじわるなことを言ったなと少し反省する。

 和凜はそういう意味で言ったんじゃないんだろうが……和凜本人からこう言ってもらえるのは、嬉しいな。

「絆那さん! 休憩終わっちゃうので、早くお昼食べちゃいましょう!」

「ふっ……あぁ、頂く。」

 頬を赤く染めながら自分の弁当を開く和凜に倣い、俺も手元の弁当の包みを解く。

 強引に話題を切り替えるのも可愛いな……本当、和凜には可愛いしか出てこない。

 早速卵焼きを食べている和凜に微笑みを零しながら、予想よりも重量のある弁当の蓋を開いた。

 ……すごいな。これを全部、和凜が作ったのか。

 黒の弁当箱いっぱいに敷き詰められていたのは、彩どりが綺麗にまとまっているおかずたち。

 卵焼きにたこのウインナーにブロッコリーに……これは、コロッケか?

 箸を少し入れただけでもサクサクさが分かるそれを口に持っていくと、思わず声を漏らしてしまった。

「……美味い。カニクリームコロッケか、これ。」

「あ、はい! 昨日の夕食の残りものなんですけど、上手にできたので食べてもらいたくて……美味しいって言ってもらえてよかったですっ。」

 率直な俺の言葉に、和凜は嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。

 ……本当に勘弁してくれ。心臓壊す気か。

 そう言いたくなってしまうほど愛らしい和凜を見ていると、やはり葛藤が生まれてしまう。

 俺は、和凜とは違っていつも危険と隣り合わせの世界で生きている。

 いつでもどこまで顔も知らない奴らに喧嘩を吹っ掛けられ、怪我なんて日常茶飯事の毎日。

 それに和凜は、俺のことを知らないだろう。

 だがそれでいい。和凜にはバレたくない。

 ――俺が、ただの不良じゃないってことを。

 和凜と出会ってからそういった不安の種は真っ先に潰してはいるが、何があるか分かったものじゃない。

 和凜は、俺の隣で笑ってくれるだけでいい。

 ……それだけで俺は、幸せになれるから。

「和凜は何でもできてすごいな。」

 だからこそ、心配でもある。

 優しくて気遣いができて……それを否定する気はない。

 けれどそれ故にお人好しな和凜が、危険な奴らとも関わりを持たないかが心配だ。

 俺以外の奴にも、こうして無邪気に笑うんだろうか。何も知らなければ、純粋に関わるのだろうか。

 ……嫉妬なんて、醜いだけなのに。

 想像するだけで反吐が出そうになり、嫉妬で狂ってしまいそうだ。

 俺が和凜を束縛しないとは言い切れない。むしろ、そうしてしまう可能性のほうが高いまである。

 和凜を傷つけるようなことだけは、絶対にしたくない。

 だからこんな感情は、抑えなければいけないのに。

「……絆那さん、もしかして他にも何か悩んでることがあるんですか? 私でよければ話してください。」

 同じようなことばかりを考えてため息を吐きそうになった瞬間、和凜の不安そうな声音が鼓膜を揺らした。

 そこでやっと我に返り和凜を見ると、心臓が痛いほど締め付けられる感覚に陥った。

「どうして和凜が、そんな悲しそうな顔をするんだ。」

「そ、そんな顔してませんよ……! 私より絆那さんのほうが――」

「悪いな、情けないところを見せて。」

 和凜は優しい。人の痛みを自分の痛みにするほど、優しい奴だ。

 心が綺麗すぎるから、気にしないでくれと伝えても気にするんだろうな。

 そういうところも好きだから……俺は、気を付けなければならなかった。

「悲しい顔、していたか?」

「……はい。私、絆那さんにそんな顔してほしくないです。なので、どんなことでもいいので話したいことがあれば私に話してください……!」

「気にしないでくれ、と言ったら?」

「余計に気にしちゃいます。だからです!」

 弁当箱を傍に置き、両手で俺の左手を包み込む和凜。

 ……可哀想なほどに、可愛い奴だな。

 俺が言えたことじゃないが、男に簡単に心を許すなよ。

 じゃないと和凜はすぐ、取って食われてしまいそうだ。

「ありがとな、和凜のおかげで心が軽くなった。」

「それならいいんですけど……本当に、何かあったらちゃんと言ってくださいね!」

「あぁ、分かった。」

 恋っていうものは、恐ろしいものだ。ここまで人を変えてしまうなんて。

 だが、それが和凜でよかった。

 まだ心配そうに眉根を下げている和凜の頭を弱く撫でながら、緩みきった頬を隠そうとする。

「――咲城和凜か、使えそうな奴だな。それで今度こそ、絆那よりも上に……」

 迫りくるスナイパーに、気付かないまま。
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