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忍び寄る影
発覚した原因 side絆那
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その日以来、自分から和凜に関わることはしなくなった。
本音を言えばすぐにでも和凜に会いたい。腕の中に閉じ込めてしまいたい。
けれどあれが和凜の本音なら……俺は大人しく手を引く。
和凜の意志なのか、それとも誰かに言わされているのか。
はっきりさせたいのに、それが怖いとも思ってしまう。
……もし本当に、和凜が俺を嫌っていたら。
「天狼! 今日こそ仲間の仇を取ってやるよ!」
「……るせぇ。」
「あ? 何ていっ……――グハッ!」
「うるさい、って言ったんだよ。」
最近、俺を狙ってくる奴が格段に増えてきた。
和凜以外の言葉を聞くのも鬱陶しい。俺に関わってくるな。
和凜に会えないストレスだけでどうにかなりそうなのに、火に油を注ぐな。
『絆那さんっ!』
和凜が恋しい。
今すぐ会いたい。離れて行かないよう、強く抱きしめてしまいたい。
しばらくとは、一体いつまでだ。俺はいつまで待てばいいんだ。
早く、その“しばらく”が過ぎてくれ……っ。
「和凜……。」
……落ち着け、ストレスに身を任せるな。今の俺を見れば、和凜は悲しむ。
俺は日に日に抑えられない悲しみを、どこにぶつければいいのかさえも分からなくなってしまった。
お願いだからもう一度、俺に笑いかけてくれ……和凜。
和凜と会えなくなってから、丸1週間。
この一週間は驚くほど遅く、ひどくつまらなかった。
食欲もなくなり、気力も失せて、もう何もかもがどうでもよくなる。
……和凜のことばかりを、どうしても考えてしまっていた。
それと同時に、この一週間で俺がどれだけ和凜に溺れてるか痛いほど分かった。
どれだけ自分が盲目だったか、も。
今日も今日とて突っかかって来た奴らを返り討ちにして、屋上へと向かう。
やはりそこには誰かがいるはずもなく、いつもと変わり映えない風景が広がっていた。
強いて言えば、今は放課後で少し厚い雲がかかっているくらいの違いがある。
もうすぐ雨でも降るのだろうか。それとも、俺の心を表しているのか。
……なんて、俺はいつからロマンチストのような考えを持つようになってしまったんだろうか。
「あーっ! 絆那やっと見つけた……っ!!」
「何だ、水翔か。」
「『何だ』ってひどいなぁ……って、お前やつれたねー。それほど和凜ちゃんにご執心だったわけか。」
「冷やかしに来たんだったら帰れ。」
乱雑に開けられた扉から、焦った水翔の声がかかる。
同時に呆れのような言葉も聞こえたが、あえて無視して空を見つめ続けた。
普段屋上に来ない水翔がここまで来るのには、何か理由があるはずだ。
それを分かっているから疑問を率直に出すと、水翔はあっと思い出したように俺に詰め寄った。
「いやいや、絆那をからかいに来たんじゃなくって……分かったんだよ! 和凜ちゃんのこと!」
「は……?」
和凜のこと、だと……?
水翔には、Fuzzyの周辺捜査を頼んだはず。それで和凜の名が出てくるのはおかしい。
……まさか。
「Fuzzyが、和凜に何かしたのか……?」
「さっすが俺らのリーダー。そうだよ、調査してたらFuzzyのリーダーが和凜ちゃんに接触したって情報が出てきたんだ。」
嘘だろ……あんな危険な奴と和凜が、接触したなんて……っ。
頭から血の気が引いていく。遅すぎる後悔と焦りが、体を侵食していく。
そんな中でも水翔は冷静に、俺の隣にやってきた。
「これは、美月にも協力してもらってやっと出てきた情報。だからまだ手探りなんだけど、どうであれお前は早く和凜ちゃんのところに行ったほうがいい。」
「分かってる……っ。和凜がどこにいるのか分かってるのか⁉」
「一応は。情報によると和凜ちゃんは、Fuzzyのリーダーと一緒に街外れの廃倉庫に向かったみたい。けどFuzzyの拠点は多くて、はっきりとした位置がまだ割り出せてない。みんなに声はかけてるから、絆那は先にそっちに向かって。……これ、和凜ちゃんたちがいそうな場所の位置情報だから。」
スマホに送られてきた地図を開きながら、俺は溢れ出す自分への怒りを鎮める。
今は自己嫌悪に陥っている場合じゃない。一刻も早く向かわないと、和凜の身が危ない。
「……ありがとう。」
「いいから早く行きな、絆那。この仕事分の請求は後でね。」
「あぁ。」
水翔に背中を押されるように、早急に学校を出る。
まさか、時雨が和凜に関わっていただなんて……っ。
このことを早く知っていれば。もっと早く分かっていれば。
『しばらく、私に関わらないでください。』
あれはきっと、時雨の指示だったんだろう。和凜が自分から言うとは正直考えにくい。
……早く、行かないと。
もらった位置情報を頼りに、それらしい場所へと足を急がせる。
頼むから無事でいてくれ、和凜……っ!
本音を言えばすぐにでも和凜に会いたい。腕の中に閉じ込めてしまいたい。
けれどあれが和凜の本音なら……俺は大人しく手を引く。
和凜の意志なのか、それとも誰かに言わされているのか。
はっきりさせたいのに、それが怖いとも思ってしまう。
……もし本当に、和凜が俺を嫌っていたら。
「天狼! 今日こそ仲間の仇を取ってやるよ!」
「……るせぇ。」
「あ? 何ていっ……――グハッ!」
「うるさい、って言ったんだよ。」
最近、俺を狙ってくる奴が格段に増えてきた。
和凜以外の言葉を聞くのも鬱陶しい。俺に関わってくるな。
和凜に会えないストレスだけでどうにかなりそうなのに、火に油を注ぐな。
『絆那さんっ!』
和凜が恋しい。
今すぐ会いたい。離れて行かないよう、強く抱きしめてしまいたい。
しばらくとは、一体いつまでだ。俺はいつまで待てばいいんだ。
早く、その“しばらく”が過ぎてくれ……っ。
「和凜……。」
……落ち着け、ストレスに身を任せるな。今の俺を見れば、和凜は悲しむ。
俺は日に日に抑えられない悲しみを、どこにぶつければいいのかさえも分からなくなってしまった。
お願いだからもう一度、俺に笑いかけてくれ……和凜。
和凜と会えなくなってから、丸1週間。
この一週間は驚くほど遅く、ひどくつまらなかった。
食欲もなくなり、気力も失せて、もう何もかもがどうでもよくなる。
……和凜のことばかりを、どうしても考えてしまっていた。
それと同時に、この一週間で俺がどれだけ和凜に溺れてるか痛いほど分かった。
どれだけ自分が盲目だったか、も。
今日も今日とて突っかかって来た奴らを返り討ちにして、屋上へと向かう。
やはりそこには誰かがいるはずもなく、いつもと変わり映えない風景が広がっていた。
強いて言えば、今は放課後で少し厚い雲がかかっているくらいの違いがある。
もうすぐ雨でも降るのだろうか。それとも、俺の心を表しているのか。
……なんて、俺はいつからロマンチストのような考えを持つようになってしまったんだろうか。
「あーっ! 絆那やっと見つけた……っ!!」
「何だ、水翔か。」
「『何だ』ってひどいなぁ……って、お前やつれたねー。それほど和凜ちゃんにご執心だったわけか。」
「冷やかしに来たんだったら帰れ。」
乱雑に開けられた扉から、焦った水翔の声がかかる。
同時に呆れのような言葉も聞こえたが、あえて無視して空を見つめ続けた。
普段屋上に来ない水翔がここまで来るのには、何か理由があるはずだ。
それを分かっているから疑問を率直に出すと、水翔はあっと思い出したように俺に詰め寄った。
「いやいや、絆那をからかいに来たんじゃなくって……分かったんだよ! 和凜ちゃんのこと!」
「は……?」
和凜のこと、だと……?
水翔には、Fuzzyの周辺捜査を頼んだはず。それで和凜の名が出てくるのはおかしい。
……まさか。
「Fuzzyが、和凜に何かしたのか……?」
「さっすが俺らのリーダー。そうだよ、調査してたらFuzzyのリーダーが和凜ちゃんに接触したって情報が出てきたんだ。」
嘘だろ……あんな危険な奴と和凜が、接触したなんて……っ。
頭から血の気が引いていく。遅すぎる後悔と焦りが、体を侵食していく。
そんな中でも水翔は冷静に、俺の隣にやってきた。
「これは、美月にも協力してもらってやっと出てきた情報。だからまだ手探りなんだけど、どうであれお前は早く和凜ちゃんのところに行ったほうがいい。」
「分かってる……っ。和凜がどこにいるのか分かってるのか⁉」
「一応は。情報によると和凜ちゃんは、Fuzzyのリーダーと一緒に街外れの廃倉庫に向かったみたい。けどFuzzyの拠点は多くて、はっきりとした位置がまだ割り出せてない。みんなに声はかけてるから、絆那は先にそっちに向かって。……これ、和凜ちゃんたちがいそうな場所の位置情報だから。」
スマホに送られてきた地図を開きながら、俺は溢れ出す自分への怒りを鎮める。
今は自己嫌悪に陥っている場合じゃない。一刻も早く向かわないと、和凜の身が危ない。
「……ありがとう。」
「いいから早く行きな、絆那。この仕事分の請求は後でね。」
「あぁ。」
水翔に背中を押されるように、早急に学校を出る。
まさか、時雨が和凜に関わっていただなんて……っ。
このことを早く知っていれば。もっと早く分かっていれば。
『しばらく、私に関わらないでください。』
あれはきっと、時雨の指示だったんだろう。和凜が自分から言うとは正直考えにくい。
……早く、行かないと。
もらった位置情報を頼りに、それらしい場所へと足を急がせる。
頼むから無事でいてくれ、和凜……っ!
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