独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん

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最強な不良くんの溺愛

隠しごと

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 絆那さんと会わなくなってから、今日でもう4日目。

 やっぱりというか、美月ちゃんは私と絆那さんが一緒にいないことと、お昼や放課後に絆那さんが来ないことを怪しんでいた。

 それでも私があることないこと言って、今日まで美月ちゃんを納得させてきた。

 美月ちゃんには申し訳ないな……多分、謝っても許してもらえないと思う。

 許してもらおうなんて甘い考え、してるわけじゃないけど……。

 こんな、恩を仇で返すようなこと……とても最低だけど、私にこうするしかできなかったんだ。

 今日も絆那さんとは帰らないから、放課後になってすぐ教室を出ようとする。

「和凜、ちょっといい?」

「み、美月ちゃん……どうしたの?」

 けれど背後から鋭い声がやってきて、私は思わず足を止めた。

 立っていたのは何かを考え込んでいるような美月ちゃんで、いつになく難しく眉間にしわを寄せている。

 何だろう……何か用事、かな。

 後ろめたいことがあるからか、少し距離を取るように尋ねる。

 すると美月ちゃんは、私を刺すような視線で見てから一歩近付いてきた。

「あのさ、ずっと黙ってたけど……和凜、何かあたしに隠してない?」

「っ! か、隠してないよ?」

「嘘ね。和凜は嘘吐く時、いつも手を合わせてる。……何で嘘吐いたの?」

 ……もう、隠しごとは通じないかな。

 ここまできたら正直に伝えたほうがいい。それは自分がよく分かっている。

 それに……これ以上美月ちゃんを騙すのは、苦しい。

「うん。隠してるのは本当だけど……言えない。」

 でも、ごめんね美月ちゃん。

 美月ちゃんは「あたしを頼って!」って言ってくれるけど、これはやっぱり言えない。

 こんなことに、美月ちゃんを巻き込みたくない……っ。

「……それって、天狼にも言ってないこと?」

「そう、だね。これだけは言えないの……ごめん、ね。」

 今言ったら、美月ちゃんも危険な目に遭うかもしれない。

 そうしたら絆那さんも朝霞さんも……下手したら、そうなってしまうかもしれないし。

 これは私自身の問題で、自分で片付けなきゃ。

「絶対に言えない?」

「言えない……。」

「和凜がそこまで言うなんて……よっぽどの事なんだね。」

「……ごめんね、美月ちゃん。」

 こういうことに巻き込まれるのは、私だけで十分だから。

「ね、和凜。」

「ど、どうしたの……?」

 不意に名前を呼ばれ、ビクッと大きく肩を震わせる。

 もしかして、怒ってる……?

 『言えない』って言っちゃったから、さすがの美月ちゃんも……。

 だけど、何を言われたって仕方がない。

 そんな覚悟をして、美月ちゃんの言葉を待つ。

「あたし、信じてるからね。」

「えっ……?」

 でも、私の元に届いた言葉は思ってもみないもので。

 意味が分からなくて目を見開いていると、すぐに美月ちゃんが笑った。

「あたしは、和凜のこと信じてるって言ったの! 言葉通りの意味!」

 にかっと白い歯を見せてはにかむ美月ちゃんは、私をさっきよりも真剣な瞳で射抜いて。

「和凜が何を隠してても、あたしは和凜がしようとしてることを信じてる。」

「っ……。」

 じわっと一瞬、視界が滲む。

 けど、私が泣くのはおかしいから下唇を噛んで我慢する。

 美月ちゃんは、本当にどこまで優しいんだろう……。

「あり、がとう……っ。」

 美月ちゃんは――最高の友達だ。

 つい涙声になりながらも、必死にお礼を零す。

 その瞬間、美月ちゃんは腕を伸ばして私の頭を雑に撫で回した。

「ま、事が終わったらちゃんと話してよね? 和凜がすることなら間違ってないと思うけど、変なことに巻き込まれないか心配だから。」

「も、もちろんっ!」

 一段落着いたら、ちゃんと言うつもりではある。

 ごめんと、ありがとうを伝えるためにも。

「あ、そうだ。これ、和凜にあげる。」

「わ……可愛いっ。これどうしたの?」

「前に雑貨屋さんで見つけたの、和凜好きそうだなって思って。気に入った?」

「うん……! すっごく!」

 思い出したようにポンッと手を打った美月ちゃんに手渡されたのは、可愛い黒猫のキーホルダー。

「もらっていいの? こんなに可愛いの……」

「和凜のために買ったんだから、むしろもらってくれなきゃ困っちゃう。」

 「ね?」と言わんばかりの圧に押され、うっと言葉に詰まる。

 私は美月ちゃんに隠しごとをしてるのに、こんな可愛いものもらっちゃっていいのかな……。

 申し訳なさや後ろめたさでいっぱいになりそうだけど、美月ちゃんがこれでもかと受け取ってほしいオーラを出している気がしたから。

「ありがとうっ……何から何まで申し訳ないよ。」

「和凜はそんなこと思わなくてもいいの。あたしがしたいからしてるだけだし……分かった?」

「う、うん……!」

 私に気を遣わせないような優しい言葉をさらっと言える美月ちゃんは、やっぱり憧れの的だ。

 美月ちゃんがいるから、こんな状況でも楽になれる。

 私……美月ちゃんがいなくなったら生きているんだろうか、あはは。

 お世話を焼かれているみたいで、美月ちゃんがどうしてもお姉さんに見えてしまう。

「わ、私そろそろ帰るねっ! キーホルダー、ありがとう!」

「気を付けて帰るのよ。」

「はーい!」

 ……本当に本当に、感謝してもしきれない。

 美月ちゃんは優しいのに、私は隠しごとをして。

 いつも迷惑かけてるのに、面倒だって思わないでくれて……ありがとう。

「……ごめんね和凜。でも和凜も隠しごとしてるから、ちょっとくらいいいよね。全部終わったら外すから、許してね。」

 私が走り去った教室で、美月ちゃんはぽつりと零す。

 困ったように眉根を下げる美月ちゃんの手元には、私の動向を指し示す画面が広がっていた。
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