独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん

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最強な不良くんの溺愛

告げられる事実

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 リン……と、キーホルダーの鈴の音が聞こえる。

 ついに来てしまった、7日目。早いようで遅く、遅いようで早かった一週間。

 ……今日、もしかすると会長さんの思惑が分かるんだ。

 そう思うと緊張や不安や、少しの恐怖に苛まれそうになる。

『その時はさっきも言った通り、絆那に手を上げるだけだ。安心しろ、お前には何もしない。』

 簡単に言ってのける会長さんの考えることは、分からないけど。

『卑怯で結構。俺はそれほどまでに、叶えたいことがあるんだからな。』

 私はちゃんと、知らなきゃいけない。

 どうしてそこまでして、会長さんが私に頼みごとをしてきたのか。どうして、絆那さんにこだわっているのか。

 ……会長さんは、何をしたいのか。

「じゃあね、美月ちゃん!」

「うん、また明日ね。」

 放課後、早口で美月ちゃんにそう言い飛び出すように教室を出る。

 ……とは言っても、これからどうすればいいんだろうか。

 そもそも、会長さんはどこにいるんだろう……?

 生徒会長だから生徒会室に行けばいいと思うけど、大した用じゃないのに行ってもいいのかな。

 うーんと葛藤しながら、静かな廊下を歩く。

「――咲城。」

 そしてどうしようかと、迷った時だった。

「会長……!」

「ちゃんとやってくれたみたいだな。」

 ふっと、嘲笑うような会長さんの声が響く。

 だから私はバッと振り返り、言いたいことを大きな声で言葉にした。

「そうですっ、私はちゃんとしました! なので、どうしてこんなことを頼んできたのかちゃんと教えてください!」

 「私には知る権利があるはずです!」と付け加え、会長さんを睨む。

 会長さんは私に、意味深に口角を上げてみせる。

 ……そうしたと思った、瞬間。

「ふっ……さすが絆那が見初めた女だな。度胸もあって行動に移す勇気もある。そこは誉めてやろう。」

「そ、それは今どうでもいいんじゃないですかっ! それよりも理由を――」

「あぁ、教えてやるさ。そのために今から、ある場所に着いてきてもらいたい。」

 ある場所……? ここじゃ話せないほどの内容、ってこと?

 怪しさ満載で、絶対に着いていっちゃダメだと思うのに首を縦に振る。

 ここで話すのも人の迷惑になりそうだし、絆那さんたちにバレてもいけない。

 それこそ、一週間我慢してきたのが水の泡になってしまう。

「わかり、ました。」

 絶対、会長さんの思惑を知ってみせる。

 私は再び決意して、会長の後をついていった。



「入れ。」

 ここは……どこかの倉庫?

 工業とかでよく使う倉庫の一角に案内され、その中心にあるソファに座らされる。

 ……何だか、お部屋みたい。

 一部だけど生活ができそうな空間で、ここでも住んでいけそうだ。

 ここは一体、何なんだろう……。

 考えながら呑気に部屋をぐるっと見回していると、目の前のソファに会長さんが腰を下ろす。

 会長さんって、こんな不思議な人だったかな。会長さんと関わること自体ないから分からなかったけど、そう思ってしまう。

 ……けどどこか、絆那さんの面影を感じた。

 ほんの少しの仕草や話し方だけだけど……何となく、絆那さんと同じような雰囲気を感じられる。

 この感覚は、どうして?

「会長さん、教えてください。どうして私に、あんな頼みごとをしてきたんですか。」

 話をすり替えられないように真剣な声音で言うと、会長さんは薄ら笑いを浮かべる。

 愉快そうで楽しんでそうな、感情が読み取りにくい表情で。

「まぁ、頼みはやってくれたことだから……教えてやるか。」

「お願いします! じゃないと、私が絆那さんを突き放した意味がないです!」

「そうだな。俺の頼みを聞いてまでも、好きな奴を守りたいんだもんな。」

「……っ、そ、そうですよっ! だから早く教えてくださいっ!」

 この際、会長がいじってくるのは気にしないほうがいい。

 大事なのは、どうしてここまでして絆那さんを突き放せと言ったのかだ。

 それを知らないと、意味がない。

 じっと強く、会長を見つめる。逸らすことを許さないくらい、じっと。

「ふっ……ははっ。流石だ咲城、やはりお前は最適だった。」

「な、何がですか……!」

 “最適”。その言葉が何を表しているのか私には分からないけど……何か良くないことなのは、分かってしまった。

「何が、なんて……突き放すことに最適だった、と言ってるんだよ。」

「……ぇ。」

「お前は俺を睨み意見するまで、絆那に執心だってことだ。だからこそ、お前に頼んで最適だと言ったんだ。」

 言葉を紡ぐ会長さんの瞳は、感情が読めない。

 いろんな感情が混じっているようにも、感情がないようにも見えるから。

 そして私から一瞬、視線を逸らしたかと思うと。

「絆那もお前に執心だ。つまり今、絆那には好きな奴からの裏切りを味わって絶望してるだろうな。」

「っ!」

 ……わから、ない。

「だから私に、あんな頼みを……!?」

「そうだと言っている。」

「なっ、何でそんな事を……!」

 無意識に語気が強くなってしまい、ソファから立ち上がる。

 だけどそんなの気にする余裕なんてなくて、なりふり構わず言葉を浴びせる。

 今は、会長の思惑を……!

「あなたは何を考えているんですか……!」

「知りたいか?」

「もちろんですっ! 私は会長さんの言う通りにしたんですから、会長さんもちゃんと言うべきです!」

 私だけなんて不平等。フェアじゃない。

 すると会長は私の言いように驚いたのか、ほんの一瞬だけ動きを止めて。

「分かった。教えてやるから一旦座れ。」

 少し呆れたように、そう言った。

 正直、会長の言いなりになるのは少し嫌だけど……これで、知れる。

 私は会長に言われた通り、大人しくソファに座り直して見据えた。

 会長も私を感情が読めない視線で見つめていたけど、どうやら言う気になったらしくゆっくり口を開いた。

 ぎゅっと、手に力がこもる。

「奪いたかったんだ。あいつから、グループのNo.1を。」

「ぐ、グループ……?」

「何だ、不良グループの存在を知らないのか?」

「へっ⁉」

 な、何それっ⁉ 初めて聞いたんだけどっ……!

「不良、グループなんて……」

「あいつは言っていないのか? なら、これは知っておいたほうがいいだろうな。」

 悩んだ素振りを見せた会長さんは、私の様子を不思議そうに感じているよう。

 だからより、私はあたふたするしかなかった。

 不良グループってよくニュースとかで聞くけど……どうしてその言葉が、今出てくるんだろう。

 訳が分からなくて何度も瞬きをしていると、見かねた会長が神妙な面持ちでそのことについて私にこう伝えてきた。

「グループって言っても、最近危険な行動はしていない。だが危険に会うのは確かだ。今お前は、その状況下にいると知っといたほうが良い。」

「私が……?」

 私は不良グループとは関わりないし、過去関わったこともない。

 ますます謎が深まり、はてなマークが大量に発生する。

 それと同じタイミングで会長が呆れたようなため息を一つ、深めに吐いた。

「はぁ……そうだ。危険を知らないと、いずれより危険なことに巻き込まれる。……絆那は言ってないのかよ。」

「何で、絆那さんの名前が……?」

 そこで、出てくるの……?

 このタイミングで出てくるとは思ってなくて、まさかと言葉を繋ぐ。

 ……もし、かして。

「絆那は……今最強と言われている不良グループ、Azureアズールのリーダーだ。教えられてなかったのかよ。」

 私の予測は、見事当たってしまった。
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