独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん

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最強な不良くんの溺愛

会長さんの事情

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 何となく予測はついていたけど、本当に絆那さんが関わりがあっただなんて。

 絆那さんはただの不良じゃなく、グループのリーダーだったなんて。

 で、でもそれが今回の話とどう関わってくるんだろうっ……?

 そう腑に落ちないところが出てきて、私は再びはてなマークを浮かべる。

 それが会長さんに伝わったのか、間を置かずに口にした。

「で、俺はFuzzyってグループのリーダー。だからだよ、お前に頼みごとをしたのは。」

 ……なんとなく、その予想はできていた。

 絆那さんが不良グループのリーダーという流れなら、会長さんも何かしらの形でグループに関わっていると気付ける。

 けど、それなら絆那さんどうして私に教えてくれなかったんだろう。

 絆那さんが隠していたからと言ってどうってわけじゃないけど……やっぱり信用されてないのかな、なんて。

「それで! 何で私に頼みごとを?」

 さっきまでの話をゆっくり理解しながら、もう一度尋ねる。

 私の問いかけに会長さんは面倒そうにひとつ息を吐いて、足を組みながら再び答えてくれた。

「さっきも言っただろう? 絆那のグループは最強と謳われている。だからあいつから……いや、あいつのその座を奪ってFuzzyが最強になりたかったんだ。」

「? ……それでどうして、私に頼み事をしてくる流れになってるんですか?」

 これ、私が頼まれた理由って……?

 私の理解力がないのか、はたまた会長さんが言葉足らずなのか、私に頼み事をしてきた理由を尋ねたのに。

 会長さんの言っているような理由もあると思うけど、それで何故私……?

 そう思わずにはいられなくて、きょとんとしてしまう。

 すると会長も気付いたのか、切り替えるようにコホンと咳払いをして口を開き直した。

「今のは言葉が悪かった。さっき言ったのはただの最強になりたい理由だ。……咲城に頼んだ理由はしっかりある。」

「な、ないと困るんですが……。」

 よ、よかった……ちゃんと理由あったんだ。

 小さく困惑の言葉を呟くと、直後、被せるように会長が言葉を続けた。

「それでお前に頼んだ理由は……これで、絆那の精神を破壊できると思ったからだ。最愛の奴に冷たくされれば、独占欲が強いあいつはすぐ壊れるからな。」

「そ、んなの……ひどいです! いくら地位が欲しいからってそんなこと――」

「俺だって分かってるさ。だがこれが一番手っ取り早く確実なんだ。精神を破壊すれば地位は奪いやすい。」

「それでも……! そんな卑怯な真似はダメです!」

 私、なんてことに手を貸してしまったんだろう……っ。

 そんなのもう、絆那さんに顔向けできない。

 冷たくしてしまった、突き放してしまった時から思っていた。これで私は完全に、絆那さんに会う顔がなくなってしまったと。

 だからそれは、覚悟の上……だけど。

「そんなことしちゃいけないです! 卑怯な手で手に入れたものは、すぐに奪い返されてしまいますし、こんな卑怯なことより正々堂々としたほうが――」

「黙れ……っ! お前に俺の、何が分かるっていうんだよ!」

「会長、さん……。」

 私の言葉が癪に障ったのか、会長さんは機敏な動きで私の腕を掴む。

 そして瞬きの合間にソファに縫い付け、動きを封じられる。

「俺は今まで散々やってきた。絆那よりも上になれるよう、身を削って何でも頑張ってきた。知ったような口なんて利かないでくれ……!」

 ……確かに、そうだ。私は会長さんのこと、何も知らない。

 ぐぅの音も出てこず、何も言えないまま視線を下げる。

 これ以上何を言ったとしても、会長さんは聞いてくれそうにない。

 私に会長さんの考えは全く分からないし、多分伝わりもしない。

 けど、このままになるよりは……!

「それでも会長、これは間違ってます。きっと親御さんも悲しんでますよ。」

「どうだか。……まぁこの際だから教えといてやる、絆那は俺の従兄なんだ。だから昔から、地味に比べられたりもした。俺は中学の頃からグレてたから両親も諦めてるし、あいつだけは俺と一緒に居てくれたが。」

「じゃあ、その人に悩みを言ってみればいいんじゃないんでしょうかっ? 一人で抱えるよりは楽になると思いますよ!」

 言葉を遮られないように、思ったことをそのまま口に出す。

 ほっと胸を撫で下ろしながら、会長さんの顔を見ようと視線を上げる。

 その時私は目を疑ってしまった。ううん、これは会長さんに失礼かもしれないけど……。

「会長にとってその人は、大事な人だったり……しますか?」

「……だったら何だよ。」

「いえ、別に何も言いませんっ。」

「なんだそれ。あいつ……俺の幼馴染も、これがバレたら咲城と同じことを言うだろうな。」

「じゃあ尚更しちゃダメじゃないですか!」

「……そう、だな。」

 だって会長さんは……これ以上なく、優しい顔をしていたから。

 ふふっと、笑みが無意識に零れる。

 会長さんはもっと怖い人かと思っていた。実際、脅してくるような怖い人だけど……。

 でも今の会長さんは全然怖くない。むしろ優しい人かのようにも見える。

 こんなにすんなり納得してくれると思ってなかったら拍子抜けしたけど、本当はとっても素直でいい人なんだよね……?

 それくらい、その幼馴染さんを大事にしてるってことなんだろうな。

「咲城。」

「はい?」

 不意に、名前を呼ばれる。

 も、もしかしてまた何か言われる……?

 そう思って反射的に目を瞑ると、瞬間思ってもなかった言葉が飛んできた。

「……悪かったな、あんなこと頼んで。」

「ふぇっ?」

「お前に言われて分かったんだ。確かにこれは、悪手だったなって。」

「会長さん……!」

 私には、過去会長さんに何があったのか知る由もない。

 それでも卑怯なことをしていい理由にはならないし、悪いことに手を染める会長さんを見たくない。

 さっきまでの不敵な表情から一転、穏やかに目を細める会長さんが絆那さんに重なる。

 やっぱり、従兄なんだなぁ……。全然違うはずなのにちょっと似ている。

 ……絆那さんに会いたい、な。

 謝っても許されないようなことをした私に、絆那さんに呑気に会う権利なんてない。

 そう考え始めると、思い出したように心臓に傷が付いていく。

「……絆那、さん。」

「咲城? ……って、どうして泣いてるんだ。」

「な、泣いてません! でも今回私、絆那さんにひどいことしちゃったから……」

「あー……それも悪かった。絆那には俺からとりあえず説明を――」

 ――ガシャンッ!!

 会長さんが困ったように頭をかきあげ、フォローしてくれようとした瞬間のことだった。

「和凜……っ!」

 聞き慣れすぎた、大好きな声が廃倉庫内に響き渡ったのは。

 ……その声の主は、やっぱり。

「絆那さんっ……!」

 今すぐ会いたくて仕方がなかった、絆那さんだった。
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