独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん

文字の大きさ
28 / 30
最強な不良くんの溺愛

愛される恋人 side絆那

しおりを挟む
「おめでと絆那、ついに和凜ちゃんと付き合えたんだね。ほんとおめでとうだよー。でもちょっと早くない? 和凜ちゃんと絆那が出会ってから1か月経ったくらいだよ、今。」

 休憩の合間、水翔にそう言われる。

 どうしてこうなったのかは、こいつから質問攻めに遭ったから。

 昨日のFuzzyとのことを聞かれ、はぐらかすわけにもいかず流れで言うしかなかった。

 こいつには世話になってるし、言わなきゃとは分かっていたが……やはり、そう言われるか。

「それは俺だって分かってる。まだ完全に和凜の信頼を得られているわけじゃないだろうし、これからもっと信頼してもらうように努力する。」

「それならいいけど、まさか孤高の絆那がこの学校のマドンナを好きになるとは思ってなかったなー。……だけど、これから和凜ちゃんも危険な目に遭っちゃうかもしれないよね。」

「……まぁ、な。」

 勝手につけられた“最強の一匹狼”という異名は、やはり面倒を引きつけてくるようで。

 命知らずが俺に無駄に挑んでくるから、和凜が危険な目に遭うのは予想できる。

 ……だが分かってても、手放したくはない。

「そうならないよう、もっと俺も強くならなきゃいけない。手を出す奴が現れないようにしなきゃいけない。」

「いや、これ以上強くなったら絆那がグループ入っている意味なくなるって。今でもないようなもんなのに、それ以上強くなったらヤバいからやめとけ。……気持ちは分からなくはないけど。」

「じゃあいいだろ。和凜を守るためにはどちらにせよ、もっと強くならないとダメなんだ。」

「……重症だね、絆那。」

「勝手に言っとけ。どうせお前にも好きな奴ができたら分かるようになる。」

「はーい、そう思っときますよーっと。」

 ……ったく、他人事だと思って。

 俺を眺めながら気持ち悪いほどにやける水翔に、ひとつ大きなため息を吐き出す。

 はぁ……こんな話してたら、和凜に会いたくなってきた。

 まだ離れてから数時間しか経ってないのに、いつ何時でも一緒にいたくて仕方ない。

 ……昼までは、もう少しか。

「絆那ー? めっちゃ眉間に皺寄ってるよー? そこまで和凜ちゃんに会いたいの?」

「……分かり切ってる事聞くんじゃねぇ。」

 からかうのが好きな水翔は、そう言ってけらけら笑っている。

 それに反応するのが鬱陶しくなって、俺は頬杖をついた。

 あと、もう少しで和凜に会える。

 会えない時間は好まないが、それまでに気持ちが積もると思えばいいだろう。

 ……心の片隅でそう思いながら、早く昼にならないかとずっと考えていた。



「いや~、まさか付き合ったなんてね。やるじゃない天狼っ!」

「何でお前がいんだよ。」

「いいじゃない。あたしは和凜の保護者的な立場なんだから……我が子の恋路は大事でしょ?」

「み、美月ちゃんったら……。」

 ようやく来た、待ちに待っていた昼休憩。

 最近はずっと和凜と居られなかったから、この瞬間だけでも嬉しすぎる。

 ……だが少しばかり、不満があった。

「別に長居するつもりはないわよ。天狼に言いたいことがあるの、あたしは。」

「え? そうだったの?」

「そうなのよ。……あたしはね、言わなきゃならないのよ和凜。」

 香椎がいることに。

 和凜が連れてきたのなら追い返すつもりはなかったが、香椎の独断で来たのなら追い返してやりたい。

 しかし和凜が目の前にいる手前、強引な手は使えない。

 どうしたものか……と、一人頭を悩ませる。

 そんな俺の思考を遮るように、香椎がドヤッとした口調でこう言ってきた。

「あっら、てっきり強引に追い返すかと思ったけどしないのね。天狼って案外、慈悲深かったりするのかしら。」

「なわけないだろ。……和凜がいるからに決まってる。」

「でしょうね、あんたは和凜第一だろうし。」

 ……水翔もそうだったが、分かっていることをわざわざ尋ねてくるな。一体何がしたいんだかと呆れてしまう。

 というか香椎は、いつまで居座る気なんだろうか。

 早く和凜と二人きりになりたいから、言いたいことがあるのならさっさと言ってくれ。

 するとその気持ちが伝わったのか、ようやく香椎が本題に入った。

「天狼こわ……さっさと言えばいいんでしょ。分かった、もう簡潔に済ませるわね。」

 俺ってそんなに分かりやすいんだろうか、とつくづく思ってしまう。

 さっきの香椎の言葉も、俺が思っていたことまんま言ったからそう思っても仕方ないが。

 和凜は俺の隣で、何が起こってるのか分かっていない様子できょとんとしている。

 そんな姿も何より可愛い。

 ……早く抱きしめたい。

 途端、俺の気持ちをまたもや読んだのか、香椎がため息を吐きながら目を伏せた。

「和凜を悲しませたら、どうなるか分かってるわよね? あたしの妹分全員連れてきて、ボッコボコにしてあげるから!」

「……そんなこと、ならないと思うが。」

 俺は和凜だけを愛していて、それはこれからも揺るがない。

 はっきりそう言うも、香椎は心配なんだろう。若干渋っているような表情で、言葉を続けた。

「それは分かってるけど、万が一があったらいけないからね。あんたなら和凜を幸せにしてくれると思うけど、人生何があるか分かったもんじゃないから。」

 ……本当に和凜は、いろんな人に愛されてるな。

 香椎の言葉には、和凜への愛が物凄く感じられる。それは俺じゃなくても、誰が聞いてもそう思うだろうと感じるほどに。

 香椎の気持ちは、痛いほど分かる。

 ……だからこそ。

「俺だって、無責任にそう言っているわけじゃない。」

 責任があるから、そう言っているんだ。

 香椎が心配する気持ちももちろん分かる……が。

「お前が心配する隙もないくらい、俺は和凜を愛している。誰よりも、この世の何よりもだ。」

「……っ。」

 ぐいっと和凜を引き寄せ、見せつけるように包み込む。

 和凜は予想外だと言うように驚きながらも、俺に身を任せてくれた。

 ……可愛すぎるな。

 そんな様子を見た香椎は一瞬目を見開いたが、直後安心したように背を向けて。

「それならいいの。悪いわね、せっかくの時間を邪魔して。」

 片手を上げた香椎は、穏やかな視線に変わっている。

 和凜はやはり意味が分かっていないようだが、香椎の次の言葉がとても嬉しかったようですぐに笑顔を咲かせた。

「和凜、幸せになりなさいよ。もし天狼に何かされたらすぐあたしに言って、ボコってあげるから。……それじゃ、また後でね。」

「美月ちゃん……ありがとうっ。」

 頬を綻ばせ、香椎に手を振る和凜。

 その後にぱたんと扉が閉まり、静寂が広がる。

 ……だが、そこまでは長くなくて。

「絆那さん……ぎゅー、です。」

 っ……!

 ぎゅっと、心臓を鷲掴みにされた気分に陥る。

 ……まさかこうして、和凜から抱きしめてくれるなんて。

「あいつ、案外優しんだな。」

「美月ちゃんはいつでも優しいですっ! 私のことを考えてくれて、最高の親友です!」

 声色から、和凜も香椎をどれだけ想っているかが容易に分かる。

 確かな信頼関係があるからこそ、できる芸当だとも捉えられた。

 ……俺も早く、和凜にもっと頼られたい。

 今は香椎が一番近いかもしれないが、いずれはその座は俺が奪う。

「でも……」

 そういったことを考えて、俺も優しく抱きしめ返した時。

 不意にそんな言葉が聞こえ、意識を和凜に向ける。

 それと同時……だった。

「絆那さんは私にとって……大好きな、彼氏ですっ……!」

「……和凜は、ずるいな。」

 俺を翻弄して、ここまでさせるのはお前くらいだ。

 抱きしめる腕を離しながら口にすると、和凜は何故か不満げに。

「絆那さんだって……かっこよすぎて、ずるいですっ。」

 ぷくーっと頬を膨らませて、簡単にそう言うものだから。

「和凜、好きだ。」

「っ……。」

「誰よりも大好きだ。」

「き、絆那さんっ……?」

「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」

「も、もう大丈夫です……!」

 意地悪、したくなる。

「可愛すぎて言いたくなっただけだ、気にするな。」

「む、無理ですよっ!」

「そうか。……可愛い奴だな。」

「だ、だから……っ!」

 自身の髪の毛の束を握りしめ、恥ずかしそうに目を逸らす和凜。

 ……ダメだな、きちんと自制しないと。

 離れていても愛は積もるが、俺の場合は一緒にいても積もるらしい。

 いや、倍増しているのほうが正しいか。

 可愛すぎて、どうにかなる。

 何事もほどほどが一番らしいが、これはそうもいかないらしい。

「これからも、俺の隣に居てくれ。」

 ……俺は頬を緩め、再び強く離れないように和凜を抱きしめた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

こわモテ男子と激あま婚!? 〜2人を繋ぐ1on1〜

おうぎまちこ(あきたこまち)
児童書・童話
 お母さんを失くし、ひとりぼっちになってしまったワケアリ女子高生の百合(ゆり)。  とある事情で百合が一緒に住むことになったのは、学校で一番人気、百合の推しに似ているんだけど偉そうで怖いイケメン・瀬戸先輩だった。  最初は怖くて仕方がなかったけれど、「好きなものは好きでいて良い」って言って励ましてくれたり、困った時には優しいし、「俺から離れるなよ」って、いつも一緒にいてくれる先輩から段々目が離せなくなっていって……。    先輩、毎日バスケをするくせに「バスケが嫌い」だっていうのは、どうして――?    推しによく似た こわモテ不良イケメン御曹司×真面目なワケアリ貧乏女子高生との、大豪邸で繰り広げられる溺愛同居生活開幕! ※じれじれ? ※ヒーローは第2話から登場。 ※5万字前後で完結予定。 ※1日1話更新。 ※noichigoさんに転載。 ※ブザービートからはじまる恋

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

【完結】またたく星空の下

mazecco
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 君とのきずな児童書賞 受賞作】 ※こちらはweb版(改稿前)です※ ※書籍版は『初恋×星空シンバル』と改題し、web版を大幅に改稿したものです※ ◇◇◇冴えない中学一年生の女の子の、部活×恋愛の青春物語◇◇◇ 主人公、海茅は、フルート志望で吹奏楽部に入部したのに、オーディションに落ちてパーカッションになってしまった。しかもコンクールでは地味なシンバルを担当することに。 クラスには馴染めないし、中学生活が全然楽しくない。 そんな中、海茅は一人の女性と一人の男の子と出会う。 シンバルと、絵が好きな男の子に恋に落ちる、小さなキュンとキュッが詰まった物語。

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

処理中です...