独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん

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最強な不良くんの溺愛

守る約束

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 ……はぁ、ドキドキした……っ。

 お昼休憩も終わりに差し掛かり、絆那さんに教室まで送ってもらって帰ってくる。

 昨日からだけど、絆那さん凄く甘くなってるような……。

 優しいのはもちろんだけど、その中に甘さもあって……ついていくのに精一杯だ。

 けど、いっぱい大好きって言えるのは素敵な関係。

 私は何もない、ただの平凡女子。

 巻き込まれ体質だし、絆那さんの足ばっかり引っ張るダメダメな子だけど。

 ……私も私なりに、絆那さんを大事にしていきたい。

 初めてお付き合いをするから何をすればいいかなんてまだまだ分からないことだらけだけど、愛想を尽かされないように、もっと大好きになってもらうために頑張りたい。

 ぐっと両手に拳を作り、自分の席に戻る。

 そういえば、次は国語だったよねっ。そろそろお昼休憩も終わるから、準備しておかなきゃ。

 ハッと思い出し、自分のロッカーを探る。

 ……ええっと、これとこれがあればいいかな?

 何度か確認をして、一人よしっと首を縦に振る。

 その時、背後から誰かに声をかけられた。

「あの、和凜さん!」

「へ?」

 び、びっくりした……!

 急に名前を呼ばれ、振り返ってみるとそこには数人の女の子が。

 ん? ど、どうしたんだろう……?

 どうして呼ばれたのか見当がつかなくて、首を傾ける。

 ……そうした、だけだったのに。

「ウッ……! 和凜さん、めちゃかわだろ!」

「それな……! マジ心臓ヤバいっ……。」

「待てお前ら、用件を忘れるなぁっ……!」

 え、ええっと……。

「だ、大丈夫ですか……?」

「「「グハッ!!!」」」

 こ、これ本当に大丈夫、なのかな……?

 ただ尋ねただけなのに、心臓を押さえ始めた女の子たち。

 だけどその時、この人たちに見覚えがあったことを思い出した。

 あっ、もしかして!

「あんたら、和凜に寄ってたかってさぁ……何してんの? 馬鹿してるの?」

 手を打った瞬間、美月ちゃんの威勢の良い声が飛んでくる。

 美月ちゃん、ナイスタイミングだっ……!

 確かこの人たちは美月ちゃんを慕ってる子たちで、私も一度は見た事があったはず。

 ……でもそうしたら、何で私に声をかけてきたんだろう?

「いやっ、馬鹿してるわけじゃないですって美月さん!」

「そうです! あたしら、和凜さんを守りたいだけなんです!」

「……それがどうしたら、集団で心臓抑えることになるの?」

「和凜さんの可愛さにあたしら全員やられたからです!」

「あぁそう。それは分かるけど、和凜を困らせないで。」

 みんな、一体何のお話を……?

 私は理解できていないけど、みんなはできているみたいで美月ちゃんの言葉にしきりに頷いているのが見える。

 私だけが置いてけぼりにされた気分になったけど、きっと口を挟まないほうが良い。

 少し考えてそういった考えに至った私は、取り忘れていた教材を出す。

 ……うん、これでよしっ。

 両腕で教材を抱え、その直後美月ちゃんに声をかけられた。

「和凜、さっきの悪かったわね。あの子たちが勝手に話しかけてきて……何もされてない?」

「う、うん。私は大丈夫だけど、皆さんは大丈夫なのかな……? さっき、心臓の辺りを押さえてたから……。」

 みんなが一斉に心臓が痛くなっちゃうなんて、何かの病気なのかもしれない。

 一気に不安に駆られてしまい、視線を落とす。

 だけど美月ちゃんは何でもないといったように、あっさりと首を左右に振った。

「あいつらは大丈夫よ、和凜は知らなくていいわ。」

「そ、そう?」

「そう。」

 そういうもの、なのかな?

 知らなくていいと言われちゃうなんて……心配だけど、あんまり聞くのもダメだよね。
 で、でももう一つだけっ……。

「美月ちゃん、どうして舎弟さんたちは私を呼んだんだろう……。」

 そう、それが気になるんだ。

 呼んだってことは何かしら理由があるんだろうし、知っておかなきゃダメだと思う。

 教えて!という視線を向けて、美月ちゃんの返答を待つ。

「それはわたくしが説明しますよ!」

 ……けど、突然美月ちゃんの背後からさっきの女の子の一人が顔を覗かせた。

「お、教えてくれるんですか!」

「もちろんですよ! というかわたくしたち、それ言いに来たんですから!」

「……余計なこと、言わないでしょうね?」

「何で疑ってるんですか! これは和凜さんに知ってもらいたい事なので、言ったほうが良いと思いますよ!」

「まぁ……あんたがそう思うんなら、いいか。それじゃ任せたよ。」

「おけまるです!」

 元気よく両手で丸を作って、にかっと笑った彼女。

 ノリが軽そうな人で、関わりやすそうな人だなぁ……。

 そうしてぽけーっと思っていると、彼女が私にさっきのことを教えてくれた。

「和凜さんは、Azureのリーダー天狼さんとお付き合いされてるじゃないですか?」

「は、はい……。」

 というか、どうしてそれを知っているんだろう……。

 私ってそんなに分かりやすい? いや、絆那さんが有名だからなのかもしれないけど。

 またもや疑問のループに入りかけたけど、直前でハッとして彼女に向き直った。

「つまり、危険な目にも遭いやすいってことなんですよ。だからわたくしたちに、お二人のことを守らせてください!」

「つまり……?」

「お二人の邪魔はしないようにするので、学校内ではボディーガードっぽいものをさせてください! 学校外はお二人のプライベート的な問題もあると思うので、無礼者の始末のみになってしまいますが……。」

 ぼ、ボディーガード?

「……ってことだから和凜、いいかな? これでもめちゃくちゃ考えて決めたことみたいだから。」

 隣で美月ちゃんが、優しく微笑んで補足してくれる。

 確かに私は不良グループのことは何も分からないし、巻き込まれ体質だからそうしてもらったほうが良いかもしれない。

 ……けど、絶対に迷惑かけちゃう。

 だから断ったほうが……でも、副総長さんの厚意を無駄にするのは……。

「和凜、こういう時は甘えなさい。あたしだって、何もないよりは護衛があったほうが良いと思うし。」

 ……美月、ちゃん。

 腕を組んで私と彼女を交互に見つめる美月ちゃんに、息が詰まりそうになる。
 
 やっぱり、そうなんだよね……。

 正直守られるばっかりは、嫌だけど。

「いいん、ですか?」

「あったりまえです! 任せてください!」

 私の確認に、彼女は手を腰に当てて自信たっぷりな様子で答えてくれた。

 ……優しいんだなぁ、皆さん。

「それじゃあお言葉に甘えて……よろしくお願いしますっ!」

「はい! 総力をあげてお守りします!」

 す、凄い気迫だ……あはは。

 でも守られてばっかりだなぁ、私……。

 ふと思ってしまい、ぎゅっと制服の袖を握り締める。

 私も、守られてばっかりは嫌だっ!

「あ、あの……!」

「ん? どうしたの、和凜?」

「私、も……」

「え?」

 弱いけど、何かしたいっ!

 私だって、無力なわけじゃないからっ……。

「私も、美月ちゃんや皆さんの役に立ちたいから……私にできる事があれば、言ってほしいです!」

 できることなんて限られているけど、自分ができることはできる限りしたい。

 あまり自分からこんなことを言ったことはなかったから、ちょっぴり緊張してしまう。

 ど、どんな反応されるかな……?

 もし嫌とか、拒否されたらさすがに落ち込んじゃうかもしれない。

「和凜さんめちゃかわじゃないですか~! いいんですか!? 和凜さんにお願いとかしちゃって!?」

「は、はいっ。守られるばっかりじゃ申し訳ないので、私も何か役に立ちたいんです!」

「そうですねぇ……それじゃ今度勉強教えてください! 和凜さん、頭良いから教えてもらいたいです!」

 ……! 良かった、そう言ってもらえて。

「私でよければ、是非!」

「「「あたしたちも教えてください、和凜さん!!!」」」

「ふふっ、もちろんです! 今度みんなで勉強会しましょう!」

「「「ありがとうございます!!!」」」

「あんたらさ……和凜、良いの? こんなお願いしちゃってさ。」

 思ったより賛同してくれる人が多くて、私も美月ちゃんもびっくりする。

 だけど逆に、私にはこれくらいしかできないから。

「うんっ! みんなの役に立てたら、私も嬉しいからっ。」

「ほんとごめんね。こいつらの体力強化して、守ることに尽力してもらうから。」

「ほ、ほどほどにしてねっ?」

 美月ちゃんのスパルタ具合は、私でも知っている。

 だからあんまり、みんなに無理をさせてほしくない。

 ……それでも、こんなにみんな優しくてすごく嬉しい。心がぽかぽかする。

「和凜さん、今日この時から守っていくのでよろしくお願いします!」

「こ、こちらこそお願いしますっ!」

「……マジ天使ですよね、美月さん。」

「うん、それはすごく分かる。」

 ん? 二人は何の話してるんだろう?

 やっぱりみんな、こそこそお話するの好きなのかな……?

「……ふふっ。」

「何笑ってるの?」

「みんな仲良いなって思って。みんなが笑顔だと、私も笑っちゃうのっ。」

 思ったことをそのまま言うと、瞬間がばっと美月ちゃんに抱き着かれる。

「あ~も~! マジ可愛い! 天狼のじゃなくてあたしの彼女になってほしい~!」

 あ、あはは……美月ちゃんがおかしなこと言ってる……。私なんかより、美月ちゃんにはもっと良い人いるのになぁ。

 でもそう思っちゃうと、絆那さんのことも考えちゃうな。私よりも絆那さんにはもっと、釣り合う人がいるって……。

 ……ってダメダメ、マイナス思考になっちゃダメ!

 今よりもっと可愛くなって、絆那さんの隣になってても恥じないような子になればいいだけだもん!

 マイナス思考をプラス思考に変えてから、よしっと大きく意気込む。

「……ほんと一途なんだから、可愛いわね。」

「それなですよ! あんなに想われて、天狼さん幸せ者ですね~。」

 そんな私を、美月ちゃんと皆さんが穏やかに見守っていた。
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