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不良さんとの出会い
不穏な注意喚起
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やっと学校着いた……。
朝から普段なら聞くはずのない喧嘩の声を思い出して、校門をくぐるや否や「はぁ……。」と大きめのため息を吐いてしまう。
「おっはよう和凜ーっ!」
「わぁっ⁉」
その時、花壇の水やりをしている校長先生に挨拶をしてから昇降口に入ろうとした私の背中に、突然誰かが抱き着いてきた。
「……って、やっぱり美月ちゃん! いきなり抱き着いてくるのは心臓に悪いからやめてねって、この前言ったばかりだよ……!」
「あれ、そうだったかしら? まぁいいじゃないのっ、和凜が可愛いのが悪いー。」
そう言いながら、靴を履き替える為に一旦離れてくれる抱き着いてきた人。
いつもつやつやでサラサラのロングヘアを靡かせ、猫目で大人びた印象の持ち主の彼女は私の大親友である香椎美月ちゃん。
美月ちゃんと出会ったのは去年で、クラスが一緒で席がお隣さんだったから仲良くなったんだ。
『和凜って綺麗な名前ね。』
……初めてそう呼んでくれた時のこと、今でも覚えている。
今でもだけど、あの時から美月ちゃんは私よりも何歩も先を歩いてる感じがする。
たまに追いつけなかったり分からないこともあるけど、美月ちゃんはその度に立ち止まって待っててくれるんだ。
だからずっと、この先も……美月ちゃんと仲良しでいたい。
「美月さん! あっ、和凜さんもいらっしゃるじゃないですか! おはようございます!」
「ユミおはよう。相変わらず今日も元気でよろしい!」
「美月せんぱーい! おはようございまーす!」
「ヤエカ今日早くない? なんかあったの?」
「はいっ! 昨日の練習試合で先輩に負けたのが悔しかったので、朝から2km走ってきたんです!」
美月ちゃんと仲良くなった時のことを思い出して頬を綻ばせていると、今日もパワフルな声と共に二人の女の子がやってきた。
この二人は美月ちゃんのお友達で、一個下のユミちゃんとヤエカちゃん。
そして……美月ちゃんも所属している空手クラブに通っている子たち。
と言うのも、実はこの地域はちょっとだけ治安が悪め。血気盛んな人が多いらしく、その対策で空手や柔道みたいな格闘技をやっている人も多い。
その中でも美月ちゃんは全国に名を馳せるレベルで強くて、いつも後輩の子や同じクラブの人に慕われている。
そういうところも尊敬で、美月ちゃんに一生着いていく!って公言している人をこれまでたくさん見てきた。
「ユミちゃん、ヤエカちゃんおはよう。今日もお互い、無理せず頑張ろうねっ。」
それはもちろん私もで、いわば同志である二人に緩く笑いかけた。
「うっ、やっぱり和凜さん今日も可愛すぎです……! キュン死させるつもりですか!」
「2km走ってきた体に沁みる~~っ! 和凜先輩もおはようございます!」
「……本当に相変わらずの破壊力ね、この無自覚タラシちゃんめ。」
でも挨拶をした瞬間、ユミちゃんヤエカちゃんが何故か目を細めて心臓の辺りを押さえた。
わ、私何かしちゃったかな……⁉
あまりにも突然のことに間抜けな声が出そうになって、美月ちゃんに助けを求めようと視線を動かす。
だけど美月ちゃんはやれやれと苦笑してから、優しく私の頭をポンポンと撫でた。
「もういつもの事だし、和凜は気にしないでいいからね。」
「そ、それでいいのっ?」
「いいのいいの。ほら、そろそろ予鈴鳴るから二人も教室戻りなよ。あたしたちももう上がるからね。」
そう言いながら戸惑う私の腕を引いて、二年生の教室がある方向へ歩いていく。
けどユミちゃんが何かを思い出したように追いかけてきた足音に、美月ちゃんは音を鳴らして立ち止まった。
「そういえば美月さん! 昨日美月さん、道場に来られてなかったので知らないと思うんですけど……最近この辺りがまた荒れてきてるそうなので、一人で行動しないようにと言われまして……。」
「また? この前もそんな事言われた気がするけど、実際確かに今朝も派手に言い合いしてる輩居たし……分かった、ありがと。」
「まぁ美月さんなら返り討ちにできそうですけどね。だからちゃんと、和凜さんのこと守ってくださいよ!」
「言われなくてもそのつもり。……って事だから、和凜も一応周りには気を付けてね。できるだけ一緒にいられたらいいけど、いつもそうできるわけじゃないしね。」
申し訳なさそうに眉の端を下げる美月ちゃんに、強めに首を縦に振る。
「分かったっ。ユミちゃんもありがとう、しばらくは寄り道しないで明るい内に帰るようにするよ!」
「本当に気を付けてくださいね? 和凜さん可愛いし優しいので、変な人に目を付けられそうでちょっと心配です。」
教えてくれたユミちゃんにもお礼を伝えると、ユミちゃんは少し納得してないように腕を組んだ。
変な人に……って流石にないと思うけど、気を付けておくことに越したことはないよね。
なんて両手に拳を作っていた時にふと、さっきの喧嘩もどきを思い出した。
『おい天狼ッ!! 今日こそ先週の落とし前つけてもらうぞ!! ちょこまか逃げやがって!』
『別に逃げてねーよ。お前らがいつまで経ってもかかってこないのが悪い。』
『天狼貴様……ッ!!』
……やっぱり、好奇心に勝って良かった。
私は喧嘩を目の当たりにしたことはないけど、美月ちゃんたちに心配をかけちゃうだろうから一生目の当たりにしたくない。
声だけでもあんなに迫力あって怖かったから、殴り合いを見たら腰抜かしちゃいそうだし……あはは。
……そう心の中で苦笑いを零している私の隣で、美月ちゃんがぽつりと呟いた気がした。
「また、天狼が喧嘩買ってなきゃいいけど。」
朝から普段なら聞くはずのない喧嘩の声を思い出して、校門をくぐるや否や「はぁ……。」と大きめのため息を吐いてしまう。
「おっはよう和凜ーっ!」
「わぁっ⁉」
その時、花壇の水やりをしている校長先生に挨拶をしてから昇降口に入ろうとした私の背中に、突然誰かが抱き着いてきた。
「……って、やっぱり美月ちゃん! いきなり抱き着いてくるのは心臓に悪いからやめてねって、この前言ったばかりだよ……!」
「あれ、そうだったかしら? まぁいいじゃないのっ、和凜が可愛いのが悪いー。」
そう言いながら、靴を履き替える為に一旦離れてくれる抱き着いてきた人。
いつもつやつやでサラサラのロングヘアを靡かせ、猫目で大人びた印象の持ち主の彼女は私の大親友である香椎美月ちゃん。
美月ちゃんと出会ったのは去年で、クラスが一緒で席がお隣さんだったから仲良くなったんだ。
『和凜って綺麗な名前ね。』
……初めてそう呼んでくれた時のこと、今でも覚えている。
今でもだけど、あの時から美月ちゃんは私よりも何歩も先を歩いてる感じがする。
たまに追いつけなかったり分からないこともあるけど、美月ちゃんはその度に立ち止まって待っててくれるんだ。
だからずっと、この先も……美月ちゃんと仲良しでいたい。
「美月さん! あっ、和凜さんもいらっしゃるじゃないですか! おはようございます!」
「ユミおはよう。相変わらず今日も元気でよろしい!」
「美月せんぱーい! おはようございまーす!」
「ヤエカ今日早くない? なんかあったの?」
「はいっ! 昨日の練習試合で先輩に負けたのが悔しかったので、朝から2km走ってきたんです!」
美月ちゃんと仲良くなった時のことを思い出して頬を綻ばせていると、今日もパワフルな声と共に二人の女の子がやってきた。
この二人は美月ちゃんのお友達で、一個下のユミちゃんとヤエカちゃん。
そして……美月ちゃんも所属している空手クラブに通っている子たち。
と言うのも、実はこの地域はちょっとだけ治安が悪め。血気盛んな人が多いらしく、その対策で空手や柔道みたいな格闘技をやっている人も多い。
その中でも美月ちゃんは全国に名を馳せるレベルで強くて、いつも後輩の子や同じクラブの人に慕われている。
そういうところも尊敬で、美月ちゃんに一生着いていく!って公言している人をこれまでたくさん見てきた。
「ユミちゃん、ヤエカちゃんおはよう。今日もお互い、無理せず頑張ろうねっ。」
それはもちろん私もで、いわば同志である二人に緩く笑いかけた。
「うっ、やっぱり和凜さん今日も可愛すぎです……! キュン死させるつもりですか!」
「2km走ってきた体に沁みる~~っ! 和凜先輩もおはようございます!」
「……本当に相変わらずの破壊力ね、この無自覚タラシちゃんめ。」
でも挨拶をした瞬間、ユミちゃんヤエカちゃんが何故か目を細めて心臓の辺りを押さえた。
わ、私何かしちゃったかな……⁉
あまりにも突然のことに間抜けな声が出そうになって、美月ちゃんに助けを求めようと視線を動かす。
だけど美月ちゃんはやれやれと苦笑してから、優しく私の頭をポンポンと撫でた。
「もういつもの事だし、和凜は気にしないでいいからね。」
「そ、それでいいのっ?」
「いいのいいの。ほら、そろそろ予鈴鳴るから二人も教室戻りなよ。あたしたちももう上がるからね。」
そう言いながら戸惑う私の腕を引いて、二年生の教室がある方向へ歩いていく。
けどユミちゃんが何かを思い出したように追いかけてきた足音に、美月ちゃんは音を鳴らして立ち止まった。
「そういえば美月さん! 昨日美月さん、道場に来られてなかったので知らないと思うんですけど……最近この辺りがまた荒れてきてるそうなので、一人で行動しないようにと言われまして……。」
「また? この前もそんな事言われた気がするけど、実際確かに今朝も派手に言い合いしてる輩居たし……分かった、ありがと。」
「まぁ美月さんなら返り討ちにできそうですけどね。だからちゃんと、和凜さんのこと守ってくださいよ!」
「言われなくてもそのつもり。……って事だから、和凜も一応周りには気を付けてね。できるだけ一緒にいられたらいいけど、いつもそうできるわけじゃないしね。」
申し訳なさそうに眉の端を下げる美月ちゃんに、強めに首を縦に振る。
「分かったっ。ユミちゃんもありがとう、しばらくは寄り道しないで明るい内に帰るようにするよ!」
「本当に気を付けてくださいね? 和凜さん可愛いし優しいので、変な人に目を付けられそうでちょっと心配です。」
教えてくれたユミちゃんにもお礼を伝えると、ユミちゃんは少し納得してないように腕を組んだ。
変な人に……って流石にないと思うけど、気を付けておくことに越したことはないよね。
なんて両手に拳を作っていた時にふと、さっきの喧嘩もどきを思い出した。
『おい天狼ッ!! 今日こそ先週の落とし前つけてもらうぞ!! ちょこまか逃げやがって!』
『別に逃げてねーよ。お前らがいつまで経ってもかかってこないのが悪い。』
『天狼貴様……ッ!!』
……やっぱり、好奇心に勝って良かった。
私は喧嘩を目の当たりにしたことはないけど、美月ちゃんたちに心配をかけちゃうだろうから一生目の当たりにしたくない。
声だけでもあんなに迫力あって怖かったから、殴り合いを見たら腰抜かしちゃいそうだし……あはは。
……そう心の中で苦笑いを零している私の隣で、美月ちゃんがぽつりと呟いた気がした。
「また、天狼が喧嘩買ってなきゃいいけど。」
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