ずっと隣に

をよよ

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Ω先輩の章

薬が飲めない

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部屋に戻った僕は、実は結構うきうきしていた。

「やったー!、よくわからないけど僕は今日学校に行けないらしい。授業が聞けないのはちょっと良くないけど、今度陽向くんに聞けばいいし、今日も自習すればなんとかなる! でもそれは後で。先ずは、二度寝しよーっと!」

4月から平日は毎日早起きで、ほぼ3年引きこもりだった僕には本当はちょっとキツかった。1日だけだけど、平日にゆっくり寝ることが出来てとても嬉しい。すぐに制服を脱いでパジャマに着替える。脱いだ制服は後で起きたら畳もう。一仁のカーディガンだけ、シワにならないようにハンガーにかけておく。そしてベッドに横になればもう寝る準備おっけー。もうこのまますぐ寝れるというときに、さっきまでのことを思い出した。

「あ、忘れてた。薬飲まないと。」

具合は全然悪くないけど、一仁に言われたから起き上がって薬と水を用意した。パン食べてからって言われたけど、歯磨きは面倒で、すぐ寝たいから薬だけ飲むことにした。パンは起きたら食べる。
シートから白い錠剤を1つ出して口に入れる。そのあと水も飲んで流し込む。……最悪だ、水だけ飲んで薬はまだ舌の上に乗ったままだ。もう一度水を口に含む。今度はちゃんと飲めるように、慎重に。……また水だけ飲んじゃった。

「うぇ~、にがぁ~」

ずっと口の中にいる薬が少しずつ溶けて、薬の味が口の中に広がった。薬はとっても苦かった。苦味を消すために、また水を飲んだけど、また薬は飲み込めなかった。何度か繰り返したけど、結局薬が喉を通ることはなく、溶けて無くなった。おかげで口の中がずっと苦い。
薬って言ったら、ドラマやニュースでよく見る錠剤が有名だけど、僕はこの錠剤の薬を飲むのが初めてなことを思い出した。小さい頃は、薬って言ったらいちご味の粉薬だったし、成長して、錠剤を飲むような歳になったら、僕はずっと家にいて病気とは無縁な生活をしてたから。こんなに小さいの、誰でも飲めると思ってたけど上手い下手があったんだ。そして僕は下手な方。僕が薬を飲むのが下手なせいで無くなってしまった薬について、僕は知識もないからどうすればいいか分からなくなってしまった。

「溶けちゃった。これって飲めたって言えるのかな。どこに効く薬か分からないけどちゃんとお腹まで届けないとダメなのかな。」

薬の苦さとか、喉につっかえる感じとか、どう頑張っても飲めないこととか色々考えたけど、結局飲めてないし、一仁と約束したから、僕はもう一度頑張ってみることにした。薬は病気を治すものだから、苦いだけでいっぱい飲んで体に悪いことなんてないだろうし。
でも2粒目も失敗に終わった。口の中が苦くなっただけだった。薬が溶け始めるのは速いけど、全て無くなるまでは結構時間がかかって、この2粒で部屋に帰ってきてからかなりの時間が経っていた。僕はちょっとでも寝たいから、次の3粒目で最後に決めた。飲めても、飲めなくても。しかし、シートから3粒目を出した時、僕の体に変化があった。

「なんか、頭、痛くなってきた。僕、本当に病気だったんだ。」

さっきまで元気だったのに、急に体調が悪くなってきた。頭がぎゅーってされてる感じ。目の前が少し霞んで来た。お腹のあたりも変になってきて気持ち悪い。

「はぁ、はぁ、なんか、吐きそう、かも、」

手足もあんまり力が入らなくてフラフラだけど、頑張ってトイレまで歩いた。トイレのドアを開けたところで、僕は力が入らなくて壁にもたれて座った。頭が痛い、お腹も気持ち悪い、息するので精一杯。自然と涙が出てくる。くすり、のめなかったってれんらく、しないと、

「僕、しぬ、かも、、はぁ、かずひと、」

僕はそこで意識を失った。




















唯がいなくなった後、二人になった一仁と光の会話

「ねぇ、僕の分のパンはないの? 僕もお腹すいてるんだけど。」

「自分で何かしら持ってるでしょ?」

「うん、でもいつも唯だけにあげて、僕に気使ったりしてもいいんじゃない?、僕かなり唯のサポートしてると思うんだけど。」

「僕が唯にごはんをあげるのは、唯が好きなのはもちろんだけど、僕のαの本能を満たすためだから。」

「へぇー。そのついででいいから、僕の分も用意してよ。もちろん自分で食べるから、持ってくるだけさぁ。」

「……Ωの君が、αの僕が用意したものを? ……えっと、僕のΩになりたいなら噛んであげてもいいけど、君の発情期の処理はしないよ?」

「…………はぁ!?、な、何言ってんの!、なりたい訳ないじゃん! もういい、いらないから! このド変態おたんこナスー!」

そう言って光は走って教室に行く。








薬は用量用法を守って使いましょう!!

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