婚約解消したら後悔しました

せいめ

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落ち込む妻

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「…私が侯爵になったから、今更擦り寄ってきたのか?この悪女が!」

 私はリリーナに向かって、感情を露わにして怒鳴りつけていた。
 リリーナはそんな私に一瞬ビクっとしたようだが、厚かましい性格は変わっていないようだ。

「違いますわ。私はあの時、大切なルイス様を平民にするなんてできないと思いまして、身を引いたのです。」

 聞いていて虫唾が走るようなことをよく話せるものだ…。
 あの頃も口だけはよく回る女だった。
 
「あの時の私は毒に侵されて、正常な判断が出来ず、大切なものを沢山失った。本当に愛する人もな…。
 何度後悔して苦しんだことか…。
 お前という人間を、何度殺してやりたいと思ったことか…。分かるか?」

 憎悪の視線を向けると、焦り出すリリーナ。
 私がこの女に、このような怒り狂う姿を見せたのは初めてだから驚いたのだろう。

「で、でも。ルイス様の奥さんは子供がまだいませんよね?私ならこの侯爵家の跡継ぎを産めますわ。」

「ふざけるな!気持ち悪い!私には妻だけだ。」

「ひっ!」

「次にこの邸に来たら侯爵家の乗っ取りを企む者として、警備隊に突き出してやる。…それとも、暗殺されたいか?
 今すぐに出て行け!!」

「……っ!」

 恐怖で動けなくなったリリーナを騎士達が引きずり出した。

 全て終わったつもりでいたが、あの女!
 
 そうだ!オリビアにあの女は愛妾ではないと伝えなければならない。

 私はすぐにオリビアの部屋を訪ねた。オリビアは、普通に迎えてくれたが、何となく落ち込んでいるのが分かった。

「オリビア、不快な思いをさせてすまない。
 あの女は、学生時代の愚かな私を騙した悪女だ。愛妾ではないし、死んで欲しいくらい憎い女だ。」

「そうでしたか…。」

「オリビア、私の妻はお前だけだ。愛妾なんて必要ないし、これから先もずっと愛妾を持つつもりはない。
 お前だけを大切にしたい。分かってくれ。」

「…はい。」

「あの悪女が私のいない時に訪ねて来たら、警備隊に突き出していい。邸の中に入れなくていいからな。」

「…はい。分かりました。」

 私は、今にも泣きそうなオリビアを優しく抱きしめる。


 オリビアは何も言わなかったが、私とリリーナの会話を聞いていたようだと、後で家令が教えてくれた。あんな風に怒り狂う声を聞かせてしまって、怖がらせてしまったか…。


 オリビアは結婚して1年以上経つのに、妊娠ができないことを悩んでいたようだった。
 そのタイミングで、あの悪女が訪ねて来たのだから、余計に傷ついてしまったのだろう。


 オリビアを守らなければ…。
 


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