【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

輝石玲

文字の大きさ
38 / 161
崩れていく、何もかも

38話 僕の誕生日

しおりを挟む
いつも通りバランス重視のご馳走を食べ、沢山のプレゼントと言葉を貰い、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまった
気付けば空は赤く染まり、日は沈んでいた
これで終わりなのかと少し寂しく感じてしまう
あれほど嫌っていた誕生日なのに
席を離れ、アズとグドと共に部屋へ向かった


「姉上、少し寄り道をしても?」
「いいですよ」


何故かアズの寄り道に付き添う事になった
向かった先は庭園
外に出ると既に星がたくさん見えていた
こんな時間に外に出るのはいつぶりだろうか


「ほんと、今日は晴れてよかった」


朝に言った言葉を繰り返すグド
このタイミングでその言葉を言った理由は、すぐに分かった
庭園の東屋
騎士団長から剣をもらった場所でもあるそこは、柔らかな光を放つ甘い香りのキャンドルが掛かっていた
そして、テーブルの上には3人分のティーセットと少し小さめのホールケーキ
ケーキには蝋燭が立てられている


「姉上…いえ、カメリア。改めてお祝いしましょうか」
「この東屋、防音魔法が掛けられてるからアイリスのフリをしなくていいんだよ。ってことで、おめでと!カメリア!」


嗚呼、この2人はなんでここまでしてくれるのだろうか
名前も、姿も、何もかもが本当のカメリアで誕生日を祝ってくれている
これは夢なのだろうか


「夢じゃないよ。これは現実。カメリアはこんなにも大切にされてるんだ。例えお前が自分自身を大切に出来なくても、愛せなくても、おいらたちがその分までちゃんと大切にするからな!」


グドはずるい
僕の心が読めるから、僕の欲しい言葉も1番痛い言葉も分かる


「カメリア、貴方の誕生を祝わせてください。私は貴方に出会えて本当に嬉しいのですから」


良いのだろうか
僕がここまで思われても
僕はどんどん欲張りになっていく


「ありがとう。アズ様、グド。僕も2人の事が大切で、大好き」


大きな幸せを噛み締めて、3人でケーキを囲って座った

それにしても、この世界に『バースデーケーキ』は無いはずだ
ケーキはあれど、蝋燭を刺しチョコプレートにメッセージを書くことは無い
どころかケーキに刺す蝋燭も無い筈だ
まさか……


「アズ様、このケーキって……」
「グドが教えてくれたんですよ。異国ではケーキに細い蝋燭を刺し、誕生日を迎える人が火を吹き消すと」


だろうなとは思った
では無くの行事だけど
僕は火吹き消し、3等分に切ったケーキをみんなで食べた
懐かしさのあるこの感覚を、この世界で僕のそばに居てくれる大切な人達と共に過ごした

もうすぐ誕生日のアズは、誕生日当日に遠出するらしい
あまり祝えない事が凄く残念だけどプレゼントはアズが喜んでくれそうなものをあげたい
部屋に戻ってから僕は寝る暇も惜しんで考え始めた
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる

ざっしゅ
BL
気づけば、男の婚約者がいる悪役として転生してしまったソウタ。 この小説は、主人公である皇太子ルースが、悪役たちの陰謀によって記憶を失い、最終的に復讐を遂げるという残酷な物語だった。ソウタは、自分の命を守るため、原作の悪役としての行動を改め、記憶を失ったルースを友人として大切にする。 ソウタの献身的な行動は周囲に「ルースへの深い愛」だと噂され、ルース自身もその噂に満更でもない様子を見せ始める。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

悪役令息の兄って需要ありますか?

焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。 その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。 これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。

王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。 アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。 そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!! え? 僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!? ※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。  色んな国の言葉をMIXさせています。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

【完結】双子の兄が主人公で、困る

  *  ゆるゆ
BL
『きらきら男は僕のモノ』公言する、ぴんくの髪の主人公な兄のせいで、見た目はそっくりだが質実剛健、ちいさなことからコツコツとな双子の弟が、兄のとばっちりで断罪されかけたり、 悪役令息からいじわるされたり 、逆ハーレムになりかけたりとか、ほんとに困る──! 伴侶(予定)いるので。……って思ってたのに……! 本編、両親にごあいさつ編、完結しました! おまけのお話を、時々更新しています。 本編以外はぜんぶ、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

処理中です...