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それから受験を迎えてしまえばあっという間に過ぎてしまった。
志望校も決まって目的もはっきりとして自分の中でそこを目指していけばいいって思えばもう迷いなんてなくて。先生からは僕たちの成績なら問題ないだろうと言われて安心もした。それに聞いてみれば空も志望校が同じで、それも嬉しかった。サッカーの強豪校らしい。まぁ空は副部長だし凄く頑張ってきてたから推薦枠も余裕で取れそうだって言われていた。
もちろん受験が近づいて本番は緊張した。でも絶対また三人で過ごしたい気持ちが僕に力をくれた。
卒業式を終え、合格発表を迎得た朝。どうか受かっていますようにと祈りながら、僕と清太は父さんの車で高校へ向かった。空は推薦入試で受かっているからこれで僕らも受かっていれば…。
受験票を握りしめてドキドキしながら掲示板の前へ立つ。ゆっくりと自分の番号を見逃さないように見ていく。415番はあるだろうか。
心臓がバクバクしてぎゅっと締め付けられる。受験票を握りしめている右手で胸の辺りを押さえる。
410、412、413、414、…415。
あった!受かっていた!
清太はどうだっただろうか。
自分の番号を確認した僕は右に立っていた清太を見る。じっと見つめているとゆっくりと僕の方へと顔が向いた。
「あった?」
その言葉に僕は深く頷く。
「俺も」
瞬間、「やった!」と言い合いながら僕らは抱き合う。
これでまたみんなで一緒にいられるんだ!
清太とまたずっと過ごせるんだ。頑張ってよかった…。
それからは怒涛のように過ぎていってあっという間に入学式を迎えた。これからは今までと違って電車に乗って毎日ここへ来るんだ。緊張もあったけどこの三人でいられると思うと全然平気だったりもする。
清太とはクラスが違ってしまったのは少し残念だったけど、空とは同じクラスだったのは心強い。
とは言っても空はまた姉さんと登校し始めて、僕らは二人の時間を過ごす時間が増えてくれたのは少し嬉しい。
「清太は部活、どうするの?」
入学して一週間。電車を降りて家までの帰り道を歩きながら問いかけた。
「部活かぁ」
「悩んでるの?」
夕陽に照らされた横顔を覗き込む。
「本当はやらないつもりだったんだ」
「そうなの?」
こくりと小さく頷いた。
「バイト、しようかなって」
「そうだったんだ」
「うん。少しでも負担、減らしたいって思って」
「そっか…」
おばさんは清太を一人で育てているしそう思うのは当たり前か。
「まぁ、それだけじゃないけど」
ぽん、と頭に手を乗せられる。清太の顔を見ると僕の大好きな笑顔が包んでくれた。
「なに?」
「ひみつ」
悪戯に笑う清太。僕はこの顔がすごく大好きだ。いつもこの顔を見るとドキドキが止まらなくなる。
僕は右手でどきどきと鳴り止まない胸の辺りに手を当てる。
「だけど、文芸部入ろうかな」
「え?本当?」
清太は「うん」と頷いた。
「やっぱり、何かを書くのが好きだからさ」
「うん、そうしようよ。僕、清太の書いた話好きだからもっと読みたい」
「ありがとな」
わしゃわしゃと頭をされて僕はされるがまま。清太に頭なでられるのはすごく心地いい。
結局体験入部を経て、清太が文芸部、空がサッカー部、僕はヒーロー研究会に入った。
研究会というからそこまで人数がいないのかと思ったけど、3年生は4人、2年生は3人いて、そこに僕たち1年は4人も入った。
緊張もしたけど、こんなに僕と同じ趣味の人がいると思うとそれよりも嬉しかった。今までこんな話できる友達なんていたことがなかったから、わくわくした。
同級生たちとはすぐに仲良くなれたし、先輩たちもすごく優しくて入部して一週間もすればすっかり仲良くなれた。
とりわけ仲良くなったのは同じクラスの冴島さん。
黒くて背中の中ほどまである綺麗な髪を一つに縛って、細いフレームのメガネをかけた目からはちょっと怪しい雰囲気を漂わせている。
「久城くんってちょっとネムルっぽいよね」
「え?そう?」
部室になってる多目的室の床に座っている僕の隣にしゃがみ込んで、メガネの間からその瞳を覗かせながら言う。
「そうそう。ネムルはさ変身こそしないけど、アサヒの親友で理解者で優しさの塊って感じですごく久城くんって感じする!」
「オヒサマン、好きなんだね」
「もちろん大好きだよ!何てったって私がヒーロー好きになるきっかけだからね」
そう言って冴島さんは太陽みたいに笑った。
「僕と同じだ」
「そうなの?」
膝を抱えて僕の顔を覗き込んだ。
「なんか、ちょっと嬉しいかも…」
今度はさっきと違ってはにかんで笑う。
「僕もこんなふうに話できるの嬉しい」
「……うん、そうだね」
微笑む冴島さんに僕も自然と笑みが溢れた。
「楽しそうでよかった」
帰り道、電車の中でひたすらに僕ばかりが話していたけど清太は微笑みながら聞いてくれた。僕ばかり話しているのはいつものことだけど。
「清太は?」
「俺もあんまり顔合わせてないけど仲良くやれそうだよ」
僕らは土日含めて週5日だけど、文芸部は活動が平日に週2回らしい。
「まだ3回しかしてないんだっけ?」
「うん。まだほとんど顔合わせして活動内容説明って感じだったけど」
「また、書いたら僕にも見せてくれる?」
「いいのが書けたらな」
「えー!見せてよー」
「いいのが書けたらな」
こうしてふざけて笑い合う時間が幸せ。まだこれから始まったばかりの高校生活も、清太といられるならこんなに嬉しいことない。不安もあるけど清太がいてくれるから僕は笑っていられる。
こんな時間がずっとずっと続け。
志望校も決まって目的もはっきりとして自分の中でそこを目指していけばいいって思えばもう迷いなんてなくて。先生からは僕たちの成績なら問題ないだろうと言われて安心もした。それに聞いてみれば空も志望校が同じで、それも嬉しかった。サッカーの強豪校らしい。まぁ空は副部長だし凄く頑張ってきてたから推薦枠も余裕で取れそうだって言われていた。
もちろん受験が近づいて本番は緊張した。でも絶対また三人で過ごしたい気持ちが僕に力をくれた。
卒業式を終え、合格発表を迎得た朝。どうか受かっていますようにと祈りながら、僕と清太は父さんの車で高校へ向かった。空は推薦入試で受かっているからこれで僕らも受かっていれば…。
受験票を握りしめてドキドキしながら掲示板の前へ立つ。ゆっくりと自分の番号を見逃さないように見ていく。415番はあるだろうか。
心臓がバクバクしてぎゅっと締め付けられる。受験票を握りしめている右手で胸の辺りを押さえる。
410、412、413、414、…415。
あった!受かっていた!
清太はどうだっただろうか。
自分の番号を確認した僕は右に立っていた清太を見る。じっと見つめているとゆっくりと僕の方へと顔が向いた。
「あった?」
その言葉に僕は深く頷く。
「俺も」
瞬間、「やった!」と言い合いながら僕らは抱き合う。
これでまたみんなで一緒にいられるんだ!
清太とまたずっと過ごせるんだ。頑張ってよかった…。
それからは怒涛のように過ぎていってあっという間に入学式を迎えた。これからは今までと違って電車に乗って毎日ここへ来るんだ。緊張もあったけどこの三人でいられると思うと全然平気だったりもする。
清太とはクラスが違ってしまったのは少し残念だったけど、空とは同じクラスだったのは心強い。
とは言っても空はまた姉さんと登校し始めて、僕らは二人の時間を過ごす時間が増えてくれたのは少し嬉しい。
「清太は部活、どうするの?」
入学して一週間。電車を降りて家までの帰り道を歩きながら問いかけた。
「部活かぁ」
「悩んでるの?」
夕陽に照らされた横顔を覗き込む。
「本当はやらないつもりだったんだ」
「そうなの?」
こくりと小さく頷いた。
「バイト、しようかなって」
「そうだったんだ」
「うん。少しでも負担、減らしたいって思って」
「そっか…」
おばさんは清太を一人で育てているしそう思うのは当たり前か。
「まぁ、それだけじゃないけど」
ぽん、と頭に手を乗せられる。清太の顔を見ると僕の大好きな笑顔が包んでくれた。
「なに?」
「ひみつ」
悪戯に笑う清太。僕はこの顔がすごく大好きだ。いつもこの顔を見るとドキドキが止まらなくなる。
僕は右手でどきどきと鳴り止まない胸の辺りに手を当てる。
「だけど、文芸部入ろうかな」
「え?本当?」
清太は「うん」と頷いた。
「やっぱり、何かを書くのが好きだからさ」
「うん、そうしようよ。僕、清太の書いた話好きだからもっと読みたい」
「ありがとな」
わしゃわしゃと頭をされて僕はされるがまま。清太に頭なでられるのはすごく心地いい。
結局体験入部を経て、清太が文芸部、空がサッカー部、僕はヒーロー研究会に入った。
研究会というからそこまで人数がいないのかと思ったけど、3年生は4人、2年生は3人いて、そこに僕たち1年は4人も入った。
緊張もしたけど、こんなに僕と同じ趣味の人がいると思うとそれよりも嬉しかった。今までこんな話できる友達なんていたことがなかったから、わくわくした。
同級生たちとはすぐに仲良くなれたし、先輩たちもすごく優しくて入部して一週間もすればすっかり仲良くなれた。
とりわけ仲良くなったのは同じクラスの冴島さん。
黒くて背中の中ほどまである綺麗な髪を一つに縛って、細いフレームのメガネをかけた目からはちょっと怪しい雰囲気を漂わせている。
「久城くんってちょっとネムルっぽいよね」
「え?そう?」
部室になってる多目的室の床に座っている僕の隣にしゃがみ込んで、メガネの間からその瞳を覗かせながら言う。
「そうそう。ネムルはさ変身こそしないけど、アサヒの親友で理解者で優しさの塊って感じですごく久城くんって感じする!」
「オヒサマン、好きなんだね」
「もちろん大好きだよ!何てったって私がヒーロー好きになるきっかけだからね」
そう言って冴島さんは太陽みたいに笑った。
「僕と同じだ」
「そうなの?」
膝を抱えて僕の顔を覗き込んだ。
「なんか、ちょっと嬉しいかも…」
今度はさっきと違ってはにかんで笑う。
「僕もこんなふうに話できるの嬉しい」
「……うん、そうだね」
微笑む冴島さんに僕も自然と笑みが溢れた。
「楽しそうでよかった」
帰り道、電車の中でひたすらに僕ばかりが話していたけど清太は微笑みながら聞いてくれた。僕ばかり話しているのはいつものことだけど。
「清太は?」
「俺もあんまり顔合わせてないけど仲良くやれそうだよ」
僕らは土日含めて週5日だけど、文芸部は活動が平日に週2回らしい。
「まだ3回しかしてないんだっけ?」
「うん。まだほとんど顔合わせして活動内容説明って感じだったけど」
「また、書いたら僕にも見せてくれる?」
「いいのが書けたらな」
「えー!見せてよー」
「いいのが書けたらな」
こうしてふざけて笑い合う時間が幸せ。まだこれから始まったばかりの高校生活も、清太といられるならこんなに嬉しいことない。不安もあるけど清太がいてくれるから僕は笑っていられる。
こんな時間がずっとずっと続け。
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