ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

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朔の夜は終わりを告げる 2

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(サスケ視点)


 己が愚行も、格別の温情さえも理解出来ない、度し難い愚者を苛立ちを持って眺める。


 そして、気づいた。
 知らず眇めた瞳に、胸に燻る感情に。

 自分は“ 怒って ”いるのだと、今更に。

 格別の温情と幸運を与えられたのは俺も同じ。

 とある任務に失敗して手傷を負った俺はハンゾー様に救われた。偶々見つけた俺をハンゾー様が助けた理由は「子供だったから」。

 何を言っているのかと思った。
 同じ世界の人間なことも、俺よりずっとこの世界に深く身を置いている存在なことも一目でわかったから。

「傷ついた女子供を放置するのは主義じゃない」らしい。

 尤も、カイザー様たちの敵なら相手が女子供だろうと容赦はないのだろうけど。

 そしてそのままカイザー様の許で雇って頂くことになった。
 新しい生活は今までと何もかもが違った。

 名を与えられ、温もりを、優しさを、“感情”を与えられて、
 “道具”でしかなかった俺を“人間”として扱ってくれる人達。

 尊敬すべき師に、身命を捧げられる主、守るべき姫君や若に、背を預けれる仲間。
 闇に生まれ、闇にしか生きられなかった俺の世界に差し込んだ柔らかな光。

 これが、 “ 感情 ” 。

 “道具”には似つかわしくないを噛みしめるようにぎゅっと胸元を握りしめた。



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