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ロマンの結晶といっても過言でない 3
しおりを挟むそんな完全網羅済な船内を俺はアイリーンに案内していた。
幸いなことに俺も、周囲も船酔いは大丈夫な派だったんだけど、アイリーンは気分がすぐれないって部屋で過ごしがちだったから。
「素敵!まるで蒼い宝箱ね」
海風に靡く髪を抑えながら、瞳を細めて眩い海面を見渡す。
ウェーブのかかった豊かな髪は大きめのバレッタで留められ、服装もゆったりとしたワンピースドレスにショールというラフな姿。
かくいう俺も、白シャツに首元が少し広く開いた感じのお洒落ベスト。それから細身のパンツに編み上げブーツという恰好だ。
ベストとパンツはお察しの通り漆黒ですよ。
髪はポニテ気味に一つに括ってる。
潮風の影響を受けて傷みやすいからかリフがやたら手厚く手入れしてくれてるお蔭で、相変わらずのツヤッツヤ。
別に女じゃないし傷みとか気にしないんだけどね……。
両手を広げて青空を仰ぎながら「ん~~」と潮の香りを胸いっぱいに吸い込む彼女は今日は顔色もいい。艶めいた板張りの床を鳴らしながら、通路が狭くなってる部位にさしかかったので手を差し出す。
波が高いのか少し揺れる。
重ねられた手を握り、歩き始めた矢先、一際大きな波に船が揺れた。
「……っと」
足に力を籠め、アイリーンを抱え込む。
揺れた拍子に俺の肩が軽く壁に激突したが、後ろから抱え込むように抱きしめたアイリーンはなんとか無事なようだ。
「吃驚した。大丈夫かい?」
「……え、ええ。ありがとう、カイザー様」
覗きこんだアイリーンは白い顔で礼を告げた。
『良かった』
ほっと、心からの安堵が籠ったその声に、俺はピキリと固まった。
腕の中のアイリーン。
大袈裟にも見える深い安堵。
そして……細い腕が庇うように添えられた……。
「カイザー様?」
動かない俺をアイリーンが不思議そうに見上げた。
「アイリーン……君、まさか……」
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