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あの時の自分の精神状態が謎すぎる 2
しおりを挟む綺麗な布地や装飾品だの、駱駝を象った硝子の香水瓶だのランプだのあれやこれやと買い込んで、食事や観光もはたし、ほくほくしながら宮殿に戻ったのが夕方。
楽しい気分が抜けないままに、アイリーンに誘われて彼女の客室で歓談をしていた。
はしゃぎ疲れたのかマオは途中でうとうとしだし、リフが部屋へ連れ帰そうとしたけれどみんなと居たかったのかいやいやして、結局ガーネストの膝の上で寝てしまった。
すやすや寝てたマオだったけど、途中で様子が可笑しくなり……小さな呻き声を上げて身を捩る姿に怖い夢でも見てるのかと揺り起こそうと肩に手を掛けたその時だった。
パチリと、音がしそうな程はっきりと、唐突に瞼が開いた。
その途端に誰もが一瞬、動きを止めたのはきっと本能だったんだと思う。
誰もが言葉を失った空間で、物言わぬまま、マオはガーネストの膝から退いた。
普通に膝から降りたのではない、マオは棒立ちのまま宙に浮いていた。
まるで放電しているようにバチバチと薄い光が点滅し、一際大きなそれが目の前で爆ぜた途端、部屋が揺れた。
ローテブルの上の茶器が割れ、破裂音と短い悲鳴が鳴り響く。
ドアが開かれ、護衛の騎士が部屋へ踏み込み、いつの間にかハンゾーたちも部屋に居た。
全ての者の視線の先に居るのは、真紅の髪を持つ魔人。
一切の表情を削ぎ落した表情は俺らのよく知るマオとはまるで別人。
なにより違うのは、その瞳だ。
虚空を見つめるような金を帯びた緑がかった金緑色の瞳の妖しい輝き。
同じ色彩の筈なのに、妖しく煌めくそれは深淵のように深く昏い。
本能が警鐘を鳴らす。
それはきっと、生物としての正しい危機感だ。
そうして思った。
大馬鹿だと。
俺の頭はお花畑で、激ニブの鈍感だ。不感症だ。
だって、俺は見た事がある。
過去にも一度、マオの瞳がこの妖しい煌めきを宿したのを。
あれは、そう。
マオが自分のことを『魔王』だと名乗った時。あの時と同じだ。
気付いてしまえば、あの時の自分の呑気極まりない反応に愕然とした。
嘘だろ?
俺の危険察知能力どうなってんの?
よく「君の名前はマオっていうのかー」なんて平気で高い高いとかしてたな俺!
自分こわっ!と意識が逸れまくった所為で逆に冷静になれた。
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