断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。

みちこ

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 4人の遺体を前に私は茫然とした。

 何が起きてるの?

 お父様とお母様とお祖父様とお祖母様は、4人で領地に行く途中で土砂崩れに巻き込まれてしまった。

 いつもなら別々の馬車に乗って移動するのに、今回は馬車が1台壊れていて4人で行動する必要があった。

 いつも通り別々に乗ってたら、誰かは生き残って居たかもしれない。

 もしかしたら全員が生きていた可能性だってある。

 嘘だと言ってほしい。

 これが夢だったら良いのに………

「お父様、お母様、お祖父様、お祖母様!!嘘だと言って!!嫌よ!!私達を置いて行かないで~~~」

 4人の遺体は火葬されようとしている。

「待って!!お父様達は死んでない!!亡くなってるなんて何かの間違いよ!!皆を焼かないで!!イヤァァァァ~~~」

 私は4人の遺体に縋り付くように連れて行かれるのを阻む。

「エレーナ!!落ち着きなさい。辛いだろうけど、ローラとルークを送り出してあげよう。火葬をしないとローラ達は生まれ変わることができない。それにエレーナがそんなに泣いてたら、ローラとルークは心配で、ここから離れられない」

 国王でもある伯父様が私を引き止めるように抱きしめる

 私を抱きしめる伯父様の腕は震えている。

 お母様は伯父様がとても可愛がっていた妹だから、伯父様だって辛いですわよね。

 それにお父様は伯父様が信頼出来る数少ない貴重な友人だった。

 辛いのは私だけではないわ。

 でも寂しい………

 何でお父様とお母様が死なないといけなかったの?

 お二人だけではなく、お祖父様とお祖母様まで亡くなってしまった。

 寂しさで打ち拉がれてると、下からドレスが引っ張られて視線を下げると。

 弟のラッセルが不安そうに私を見上げていた。

「姉上?大丈夫ですか?」

 そうだ……、

 私には守らないといけない存在がいる。

 私は18歳だから自分一人でも生きていこうとすればどうにかなるけど、まだ11歳のラッセルには私が必要ですわ。

 お父様とお母様の代わりに守らないといけない。

 ラッセルが成人して、家を継げる様になるまでステファン公爵家を守らないといけないわよね。

「大丈夫よ。私が貴方を守ってあげるから、伯父様どうすれば良いのか教えてください」

「本当に良いのか?お前には辛いと思うぞ。今まで以上に努力しないといけないし、諦めないといけないことも沢山ある。ラッセルが大人になるまで、代わりのものを派遣することだって出来る」

 伯父様の提案に乗るのが1番楽なのかもしれない、だけどステファン家を家族じゃない人に任せるのは嫌

 家を継ぐってなったら、私は大好きなあの人と別れないといけないけど、私とあの人は結ばれない運命だったんだわ。

 婚約者が居るのに恋人を作った罰かな?

 婚約者は生理的に受け付けない相手だった。

 婚約者にも恋人が居るから、私も別に恋人を作っても構わないと思ったのよね。

 でも神様はそんな私を許さなかったのかもしれない。

 だから私から家族を奪ったのかもしれないわね。

「伯父様の提案は有り難いですけど、ステファン家は私が継ぎますわ。ラッセルが大きくなるまで私が仮の当主になります」

 伯父様の提案通りに進めても、周りの貴族から反対されるだけのはず、それを無視して進めても困った時に助けてくれる人はいなくなるだけ。

 伯父様の評判まで落としてしまう。

 それだけは絶対に駄目だわ。

「そしたらエレーナはアランと別れなくてはいけなくなるぞ。お前が嫌ってるロベルトと結婚しないといけなくなる」

「知ってたんですね」

 ロベルトにはバレてもいいと思ってたけど、他の人達にはあまり知られないようにしていた。

 私は自業自得だから良いけど、私に巻き込まれたせいで、アランの評価が悪くなるのは耐えられない。

 私に対しては同情してくれる人が多いはず、だって私が浮気する前よりもずっと前から、ロベルトは沢山の女性と浮気をして、私には心ない言葉を吐くのを沢山の人が見てきた。

 あんな相手なら他の男性を好きになってもおかしくないって、もしかしたら思ってくれるかもしれない。

「大人を甘く見てはダメだよ。エレーナ達は上手く隠してるつもりだったみたいだけど、エレーナを1番愛していた君の両親は気が付いていた」

「お父様とお母様が?」

「私に相談してきたんだよ。エレーナとロベルトの婚約を破棄できないかってね。私に妻である王妃とサレルノ家を説得してほしいって、1か月前に相談してきたんだ」

「そうだったんですね」

「エレーナが跡取りではなくなってたから、エレーナとロベルトの婚約を解消出来そうだったけど、もしもお前が当主になるってなったら、ロベルトの母親は婚約解消を認めないかもしれない」

 息子を当主にする為なら、絶対に私との結婚を諦めないでしょうね。

 実際は当主は私で、ロベルトは当主の伴侶ってだけですけどね。

 私はもしもロベルトと結婚したとしても、家の経営にロベルトを関わらせるつもりはない。

 それよりもお父様達がそんなお願いをしてたなんて、全く知らなかったわ。

 私とロベルトの婚約は私とロベルトが5歳の時だった。

 一応は政略結婚だけど、お互いの家にそこまでメリットがある話ではなかった。

 ロベルトはサレルノ侯爵家の次男で、ロベルトの母親が家を継げないロベルトの為に、爵位が高くて跡取りの息子の居ない家と婚約させたいって考えて、当時はまだ弟が居なかった我が家が選ばれた。

 私が生まれて5年も子供が出来なかったから、もう子供は生まれないと思われたんでしょうね。

 王族は子供が出来づらいみたいですから、元王女だったお母様には子供が出来ない可能性が高かったですしね。

 ロベルトの母親は王妃になった姉を頼り、私とロベルトの婚約を成立させてしまった。

 伯父様が隣国との会談のために、不在にしてる間に進めてしまったから、止められる人は居なかったのよね。

 1度婚約してしまったら、どちらかに何か問題がないと婚約解消は難しい。

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